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- 2015/08/28 掲載
築地市場の仲卸業者がなぜ料理教室を開くのか? 縮小市場での生き残り戦略
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農業と漁業の相違点から考える、小規模従事者の生き残りの道とは?
久松氏は、現在7名のスタッフと、年間50品目以上の旬の有機野菜を栽培し、契約消費者と都内の飲食店に直接販売している。ITを活用して消費者との関係を強め、ソーシャル時代の新しい有機農業を展開する異色の存在だ。
前編で語られたように、値段が安くボリュームのある領域は、築地市場でも一番先に商社や大手スーパーなどに奪われていった。これは農業も同じだが、ハイエンド領域はどうだろうか?
島津氏はこれに同意しつつ「農業との決定的な違いは魚が天然資源であり、漁獲量が読めないこと。1カ月も漁ができないこともある。そのとき入荷されたものを納品するしかない。そこで重要になるのが目利きの腕である。たとえば一般的に需要が高い初物のサンマが入荷しても、クオリティ的に納得しなければ、自分はお客さんにお薦めしない。そんなときはサンマの代わりに、北海道で取れたサンマの味がするイワシを寿司屋に提案することもある。これが我々の仕事なので、決して大手小売り業のように大きな商いはできない」と、相違点について説明した。
大きな商いができない点は農業も同じだ。「一次産品は出来が環境に左右される。その”振れ”や”揺らぎ”こそが価値とも言えるが、農産品の場合は“旬”をなくし、振れない方向に舵を切った。季節性をなくし、年中トマトを棚に置けるようにした。商社はボリュームゾーンを狙うため、夏と冬のトマトの味は気にしない。そこで産地形成が行われ、夏トマトは涼しい地方、冬トマトは暖かい地方で安定供給を確保しようと考えた。しかし、将来的に植物工場のように完全に工業化される時代になれば、小農家は、資本を持つ企業に勝てない。これは漁業の場合と同じアナロジーだ」(久松氏)
【次ページ】島津商店がチャレンジするB2Cビジネス
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