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- 2015/08/27 掲載
漁獲高減少、築地市場移転――仲卸業者の苦境を乗り越える術はあるか?
仲卸業者はどんな仕事をしているのか?
毎日のように日本の食卓に並ぶ海の幸。これらがどのように流通しているのか理解している人は少ないのではないだろうか。鮮魚流通は、まず全国の漁業者が水揚げした鮮魚を、産地市場で受けることから始まる。そこで最初のセリが行われ、地方仲卸や売買参加者が買い受けた魚が、中央卸市場に送られる。
送られた先の中央卸市場でもさらにセリが行われ、中央の仲卸人と売買参加者が買い受けるという構図だ。そして彼らが小売業や飲食業などに卸し、最終的に消費者の口に入る。これが市場を介した魚の流通プロセスである。
このプロセスのなかで、仲卸業者はどのような仕事をしているのか。仲卸の主な仕事は、「値決め」「分化」「金融」の3つだ。
分化とは、卸売業者が箱単位で買った魚を飲食店などに小分けして売ること。金融は文字通りだが仲卸の決済は、そのサイクルが短い。島津氏は「今日購入したものは、基本的に4営業日内に支払わなければならないルールがある。社会の一般的な決済とかけ離れている。繁忙期には処理が大変だ」と説明する。
「仲卸人というと、セリをすると思っている方が多いが、じつは間違っている。セリを行うのは流通の上流にいる卸売業者7社だ。彼らが魚のセリを開催している。そして東京都から許認可を受け、そのセリに参加しているのが我々のような仲卸業者だ」(島津氏)
仲卸業者が苦境に立たされている理由とは?
築地中央卸売市場は、全国に9つ存在する中央卸市場のなかでもっとも取扱高が大きい。にもかかわらず、仲卸の平均取扱高は、全国の中央市場では築地中央卸売市場が最も低いのだという。
築地中央卸売市場の日商は16億円、取引量は1676トンにも上り、世界最大の取扱高を誇る。その内訳は、量ベースで鮮魚30%、活魚3%、貝類6%、冷凍(マグロも含む)20%強、淡水魚0.3%、加工品33%など。特に築地はマグロの取り扱いが多く、その金額も大きい。
「築地中央卸売市場の仲卸の平均年商は約4億円。かつて1635軒ほどあった仲卸も急激に減り、いまは622軒しかない。一方、福岡中央卸売市場は仲卸は35軒だが、平均年商は30億円以上もあると聞いている。一口に仲卸といっても売り上げにかなり幅があるのが実情だ」(島津氏)
日本の漁獲高は1980年代のバブル時代をピークに、いまは半減している。かつて日本は遠洋漁業で儲けていたが、近年は排他的経済水域の問題から、それができなくなってきたことが大きな要因だ。
また現在、仲卸業者を含め、水産業界でも高齢化も進み、後継者の問題も深刻化している。
さらに、バブルが始まった頃から大手小売りチェーンの開店時間に間に合うよう納品時間を早めるために、セリ対象品目が絞られるようになった。これにより、セリにかけられる魚の品目が全体の約20%に減った。セリによって値段を決定できる魚の品目が減ったことは、仲卸人にとって命取りなのだ。
「ある程度は利ザヤで稼げたが、価格決定権半ば放棄したことは、仲卸減少の一因だ。築地はマグロ屋が多いが、冷凍ものは品質の差が見えにくいので、大手業者しか勝ち残れないのではないか。次は冷凍マグロを扱う小さな業者が廃業に追い込まれるかもしれない」(島津氏)
【次ページ】天然魚を扱う武器は、長年培ってきたプロの目利き
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