• 会員限定
  • 2015/07/27 掲載

アドラー心理学は、なぜ「劣等感が力になる」と説くのか

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
勝つことが常に求められるビジネスの世界ですが、残念ながら負けてしまうこともあります。逆境に立たされたとき、いかに前向きに発想を切り替えて手を打つか、というのも大切なビジネス人としての能力でしょう。そこで参考になるのが、『嫌われる勇気』で名高い心理学者アルフレッド・アドラーです。そのアドラー心理学のキーワードの一つに「劣等感」があります。アドラーは劣等感というネガティブなものを、ポジティブに活かすことができると主張しているのです。
photo

競争に勝ったほうは嫌われるもの

 アドラーは「他人からどう思われるかは気にするな」と言っています。かといって「他人の存在を無視しろ」とは言っていません。優越性の追求が大事だと言っているのですから、他人という存在を意識したうえで相手に対して優越性を持とうとする、つまり勝ちたいという意欲を持つことが大事だと言っているのです。

 この優越性を追求するとき、つまり競争に勝とうとするときに知っておかなくてはならないのは、勝ったら往々にして嫌われるということです。引退した朝青龍は、勝ったときに負けた相手に優しくないという理由で嫌われましたが、たとえ負けた相手に優しくしても、負けたほうは嬉しいとは思わないはずです。

 負けた人の心理について、もしもフロイトやメラニー・クラインに聞くことができれば、「負けたほうは勝った者に対して嫉妬する」と言うかもしれません。コフートなら「負けたほうは自己愛が傷つく」と言うかもしれません。アドラーなら「負けたほうは劣等感を抱く」と言うでしょう。結局、負けたほうは嫉妬したり自己愛が傷ついたり劣等感を抱くなどするのです。つまり、勝つということは負けたほうに不快感を与えるわけですから、勝ったほうは嫌われやすいのです。

アルフレッド・アドラー:1870-1937。共同体の中の個人という視座を開き、フロイトやユングと並び称される心理学者。
ジークムント・フロイト:1856-1939。精神分析を創始するなど、多方面に多大な功績を残した精神医学者。
メラニー・クライン:1882-1960。児童精神分析の分野で著名な精神分析家。
ハインツ・コフート:1913-1981。「自己心理学」を確立したことで知られる精神分析家。

 そういうことを考えると、人に嫌われたくないと思っていては、勝つことができないということになります。学歴競争でも、「受験に落ちた人は不快感を持つだろうな」などと気にしていたら、手に入れたい学歴を得ることもできません。競争という点では、やはり他人の目を気にする必要はないのです。

現代は劣等感を持っている人が多い

 いまの時代は劣等感を持つ人が多いと私は考えています。その理由は、昔に比べて負けている側のハンディキャップが大きくなりすぎているからです。

 振り返ると、昭和20年代、30年代はみんなが貧しかったわけですが、当時は公立高校に行って受験競争で負けたとしても、誰も最初から負けるに決まっていると思って競争していたわけではありませんでした。

 ところがいまは、中学・高校の段階で勝ち組と負け組にほぼ分かれてしまい、負け組に入った子どもは「どうせ勝てないや」と思って、そこで劣等感を抱くわけです。

photo
(クリックでAmazonへ)
 また、私の世代は親の学歴が中卒や高卒が普通で、旧制中学を出ているだけでもまだましなほうでした。小学卒という人もたくさんいましたが、それは恥ずかしいことでも何でもなく、当たり前の時代だったのです。そのころは、「親は学歴がないが、子どもに勉強させればできるようになるはずだ」という素朴な概念があったので、野口英世のように貧困の家庭に生まれながらも学問を身に付けて偉人になるというストーリーがウケたのです。

 ところがいまは、「オレは躍起になって受験勉強をしたのに、この程度の大学にしか行けなかった。どうせオレの学歴が低いから子どもに勉強させたってダメだよな」と考えている親が多いのです。

 そういう考えを抱かせる大きな理由としては、戦争が終わって70年も経っていて、たとえば祖父も父も子どもも東大出という家が生まれてきていることが挙げられます。しかも、高学歴であることから収入の多い職種に就く確率が高く、そのために代々金持ちというケースも少なくありません。

【次ページ】 劣等感こそが力になる
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます