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なぜマイグレーション、なぜクラウド?
政策提言者、SIer、ユーザー企業の本音
今回は、MMSフォーラムで初めての試みとなるパネルディスカッションが行われた。登壇したのは、経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課 課長補佐の柳田 大介氏、JP情報センターの岩澤 仁氏、NTTデータ 基盤システム事業本部 グローバルソフトウェア開発事業部 シニアスペシャリスト 星野 亨氏の3氏。モデレータは、東京システムハウスの清水 真氏だ。
日ごろ顧客から「成功事例ではなくむしろ失敗事例を聞かせてほしい」と請われるという清水氏は、これについて星野氏に質問した。
NTTデータは大企業を対象にCOBOLクラウドを展開しているが、「正直なところをいえば、品質、コスト、納期をすべて目標どおり達成する“完全勝利”はなかなかない」と星野氏は明かす。これはメインフレームとオープンシステムでシステムパラダイムが異なり、まったく同じものを再現するのが困難であることにも起因するという。岩澤氏も「信用して任せると後で驚くことになる。平均2、30%は機能が足りない」と吐露する。
それでもマイグレーションを選ぶのはなぜか。岩澤氏は「業務そのものは変わらないからだ。ゼロスクラッチで開発すると必ず要件が漏れる。資産の再利用でベースを押さえ、最新技術を取り入れるというのが最適だ」と理由を語る。また星野氏は「多くの顧客がTCO削減を第一に掲げる。ただ、移行コストや品質担保の取り組み全体を考えるとどうか。そのあたりの判断は最初の段階で行っておかないと後々違和感の種になる」と助言した。
opensource COBOLの機能を拡張、成果物を公開へ
続いて、クラウドがテーマとして挙げられた。柳田氏はここで、経済産業省の「中小企業等省エネルギー型クラウド利用実証支援事業」について詳しく解説した。
この事業は、日本全体で省エネ化を図ろうというのがねらい。運用効率が高く、物理的にもセキュリティ的にも堅牢度の高いクラウドへ企業情報システムを移行していこうというもので、大きく、企業のクラウド移行支援、クラウド基盤ソフトウェア導入支援、省エネ型データセンター構築支援の3事業がある。東京システムハウスは、このうちクラウド基盤構築支援事業の中で補助事業者として採択された。
柳田氏は「opensource COBOLを機能拡張して、クラウド対応、レガシープラットフォーム互換対応させること、またこの成果物をOSSとして公開するというのは、意欲的な取り組みだ」と同社への期待を語った。
早期にクラウド導入を主導した岩澤氏は「中堅中小企業が多い当社の顧客は、クラウド導入でTCO削減を図れたほか、IT資産の減価償却が不要になり経営が安定していると聞く。スケールアウトでシステム増強できることで、処理速度向上するメリットも享受している」と、顧客の利益を実感している様子だ。
市場全体を見渡すと、パブリッククラウドとプライベートクラウドの間を埋める仕組みがなかったり、企業の間で理解度に差があったりと、クラウド浸透の道は途上だ。しかし、もはや必然のテクノロジーであることはパネリスト全員が一致している。モデレータの清水氏は「基幹系システムにクラウドが適用される日はもうそこまで来ている、変わらず努力を続けていく」と語ってディスカッションを締めくくった。
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