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- 2014/09/09 掲載
化粧品ノエビアの「クラウドファースト」への転換、167台のサーバをAWSやIIJ GIOに
メインフレームから移行したサーバ167台が抱えていた3つの課題
同社は、約25年間、メインフレームを使っていた。しかし、2004年以降、徐々にオープン化し、2009年にはほぼすべてのシステムを167台のサーバに移行することに成功した。ところが、サーバ保守期間を5年で契約していたため、2010年あたりから、保守の切れたサーバへの対応を迫られることになった。
当時、同社には大きな課題が3つあった。1つめはインフラの保守・管理が煩雑だったこと。「保守期間は5年だったが、167台のサーバは導入時期もバラバラであり、OS、フレームワーク、ミドルウェアの更新も同時に必要となり、検証作業が大変だった」(滝川氏)。
2つ目はピーク時対策が不十分だったこと。メインフレームのときは、それなりのノウハウが蓄積されていたが、サーバに移行してからは、データベースのノウハウ・ナレッジも十分ではなかったため、「仕方なく、通常の利用にはオーバースペックにせざるをえなかった」という。
3つ目はBCP対策ができていなかったこと。神戸本社の4階にマシンルームを作り、情報システム部の人間が常駐していたが、「電源確保も含めて不十分な状態だった」。
こうした課題を解決するため、同社は新たなITインフラの検討を開始。コンサルタントも入れて、必要なITインフラのRFP(提案依頼書)作成に取りかかった。
「持たざる経営」という大方針のもと、マルチクラウド環境を選択
RFPを作成した同社は、それを複数のベンダーに投げて、返ってきた提案を検討した。ベンダーから示された提案は、3つのパターンに分かれていた。1つ目は仮想でサーバを集約し、オンプレミス環境を構築したのちにクラウドへ移行するパターン。そして、2つ目がプライベートクラウド、3つ目がパブリッククラウドだった。最終的には、パブリッククラウドを選択することになったが、「コンサルタントの推奨は仮想化してオンプレミスで構築し、その後にクラウドに移行するパターンだった」という。
ただ、経営層から『持たざる経営』という方針が示されていたこと、段階的な移行では時間もコストもかかること、さらにBCPの観点も考慮して、「すべてをクラウドにすることを決断した」(滝川氏)。
その際、3つの移行方針が示された。第一はすべてをクラウドに移行すること。これは、会社から示された「持たざる経営」という方針に沿ったものだ。第二は、一般的なサービスに切り出せるものはSaaSを優先的に利用すること。第三は、SaaSに切り出せないシステムはIaaSで対応するということだった。
こうして、メールのスパムチェックやウイルスチェックを行うメールセキュリティシステム、携帯端末向けにコンテンツを自動変化するサービス、メルマガ配信を行うメールマーケティングシステムがSaaSへと移行された。さらに、会計・人事・給与システムについてもSaaSの検討が行われた。
ノエビアでは、会計・人事・給与システムとして、ワークスアプリケーションズのERPパッケージであるCOMPANYを使っていた。そこで、COMPANYのクラウド版を求めたが、当時はまだ開発中で、クラウド移行の最終段階でようやく間に合ったという。それが、COMPANY on Cloud Managed Service(CCMS)だった。そして、「CCMSのインフラとして利用されていたのがAWSだった」(滝川氏)。
最終的に、ノエビアホールディングスでは、CCMSおよびBIツールのSAP Business ObjectsのインフラとしてAWSを利用し、その他の基幹系・業務系・ECサイト等の公開用にIIJ GIO、情報系のLotus Notes用にSCSKと、複数のクラウドを利用するマルチクラウド環境を選択することになった。
【次ページ】なぜ「クラウドファースト」へと考え方を転換したのか
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