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  • 2014/07/07 掲載

HTML5によるハイブリッドアプリ開発の「Apache Cordova」とは?IBMやSAPがなぜ注目?

企業向けモバイルアプリ開発の問題が決着か

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「モバイルファースト」というキーワードは2012年頃にブームとなりましたが、2年の時を経て、ようやく実用的な姿、具体的な形となりはじめています。中でも、企業向けモバイルの適用には、HTML5を活用した「ハイブリットアプリ開発」を中核とすべきという考え方が、オラクル、マイクロソフト、SAP、IBMなどの大手ソフトウェアベンダーから支持されています。HTML5はこれからモバイルでどのように価値を発揮していくのでしょうか?その全貌を掴んでみましょう。

エンタープライズモバイルの世界に突如あらわれた「Apache Cordova」とは


2016年までに企業向けのモバイルアプリの過半数が、HTML5を活用したハイブリッドアプリになる。

 これは、2013年に米調査会社ガートナーが「Gartner Says by 2016, More Than 50 Percent of Mobile Apps Deployed Will be Hybrid」として公開した将来予測の引用です。欧米よりも遅れていると言われている日本の企業向けスマートデバイス/タブレット活用ですが、ここ数年で取り巻く状況が大きく変わっています。

 モバイルへのアプリケーションの提供手段としては「ネイティブアプリ」「Webアプリ」「ハイブリッドアプリ」の3つが挙げられます。複数のデバイス/OS向けのアプリを作る場合、ネイティブアプリだと、iPhoneやAndroidなどOSの種類によって異なる言語を使って開発を行わなくてはいけないため、開発コストの高さが問題となります。

 一方でWebアプリは、ブラウザのポテンシャルに縛られるため、ネイティブアプリらしい能動的な振る舞いや、セキュリティの厳しいデバイスの制御が容易に扱えないという問題があります。こうした問題を互いに補い、いいとこ取りをしたのが「ハイブリッドアプリ」です。

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ネイティブアプリ、Webアプリ、ハイブリッドアプリの違い

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 ハイブリッドアプリは、見かけ上はLINEやFacebook専用アプリのようなネイティブアプリとして機能します。しかしその開発には、ブラウザを通じて利用するようなWebアプリの開発技術「HTML5」を活用します。

 ハイブリッドアプリでは、従来はブラウザに読み込ませるためにあったHTML5のソースコードを、「パッケージング」と呼ばれる処理を施すことで、ネイティブアプリとして動作させます。各OSの独自仕様に引っ張られがちなネイティブアプリの開発用言語を、HTML5という共通の言語で統一できるため、一つのソースコードから複数のOS/デバイス向けのネイティブアプリを作成することができます。

 この仕組みは、これまで投資してきたWeb系システムの資産を流用できたり、2種類以上のデバイス向けのアプリ開発を効率化できるなど、さまざまなコスト効果が期待できることから、企業活用での魅力が高いようです。そしてその実現手段として、「Apache Cordova」と呼ばれるオープンソースソフトウェア(以下、OSS)の活用が広がりつつあります。

各製品ベンダーのApache Cordovaに対する取り組み
ベンダー名Apache Cordovaに対する取り組み
アドビ2010年からHTML5向け開発ツールを拡充。2011年にはNitobi社のPhoneGapを買収しApacheへ寄贈、「Apache Cordova(以下、Cordova)」として、オープンソースコミュニティ主体の開発が開始される。アドビ自身も、CSS3の強化のため、Webの標準化に関わりを持つようになる。2014年4月には、企業向けの導入を想定した「Adobe PhoneGap Enterprise」を発表した。
マイクロソフトVisual Studioは2010年頃からHTML5対応が行われ、「NuGet」の公開など、WebのOSS製品を活用するためのツールの拡充を行っている。そして2014年上旬、Visual Studio 2013のアップデートで、Cordovaのサポートツール「Multi-Device Hybrid Apps」を公開した。これまでマイクロソフトが培ってきたWeb開発ツールの技術を、iOSやAndroidなどのモバイルアプリ開発にも活かせるようになった。
SAP2010年にSybaseを買収し、同社のモバイルソリューションのノウハウを吸収。その後、2012年にはSycloを買収し、CordovaをベースとしたBYODソリューションとして「SAP Mobile Platform」を5月22日に発表。SAPには珍しく、ベンダー独自機能を排する方針としている。UIコンポーネントをOSS化したり、jQueryベースの開発に対応するなど、オープン化を全面的に押し出し、モバイルとオープンWebの融合を目指す。
オラクル2008年頃からWindows MobileやBlackBerryをターゲットとしたモバイル・フレームワーク「Oracle ADF Mobile」を発表した。2012年から世代交代し、ハイブリッドアプリへ参入している。オラクルはJavaを推しているため、ハイブリッドアプリもJava(組み込みJVM)という印象を持たれがちだが、Cordovaに対応しHTML5によるハイブリットアプリ開発も可能としている。
IBM2012年の上旬にイスラエルの企業を買収し、Cordovaに対応したエンタープライズ・アプリケーション・プラットフォームとして「IBM Worklight」を発表した。W3Cにも議席で参加しHTML5の標準側からのアプローチにも強みをみせるなど、モバイルとWebの融合に対して積極的な姿勢をみせている。

 一方で、HTML5の仕様策定に大きな影響力を持つグーグルも、モバイル中心時代の到来を強く意識しています。彼らが開発を進めているブラウザ「Chrome」も、2014年の上旬から、「モバイルがデスクトップを上回りつつある」という認識を持ち、モバイル環境の改善に向けた取り組みを進めています。

 モバイルでは現在、ネイティブアプリが主導権を握っていますが、グーグルではこうした領域にもWeb技術の活用が進められるようHTML5の改善を行っています。そんな彼らも、IBMと同様かそれ以上の貢献を、Cordovaに対して行っています。Webの技術が、あらゆるネイティブの技術を置き換える時代を予感させます。

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(参考 : グーグル 及川卓也「Chrome For HTML5NIGHT」より)


 この短期間に、これだけ多くの製品ベンダーから支持されるOSS製品というも珍しいでしょう。Cordovaは今や、企業向けモバイルの世界のほぼすべてを覆い尽くす、デファクトスタンダードとしての地位を獲得しています。モバイルファーストの時代に向かう昨今、必ず知っておくべき重要なキーワードと言えるでしょう。

【次ページ】ハイブリッドアプリはエンタープライズITにとって、本当に魔法の杖となりえるのか?
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