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- 2009/07/21 掲載
HTML5とは何か、動き出した次世代規格はWebの世界に何をもたらすのか
Internet Explorer、FireFox、Safari、Google Chromeの動向
HTML5に至る長い苦難の道のり
2009年1月22日。World Wide Web Consortium(W3C)は、「HTML5」の草案を公開し、2010年9月に正式なW3C勧告としてリリースすることを発表した。このニュースを聞いて、「確か、W3Cは次世代HTML規格としてXMLをベースとするのではなかったのか?」と思われた方や、「そう言えば、そもそも最近W3Cという名前を耳にしていないな」と思われた方も多かっただろう。そこでまずは歴史的な経緯から振り返ってみよう。歴史に興味がない、HTML5が何かを知りたいという方は次のページにお進みいただきたい。そもそも、W3Cは、Webの父とも呼ばれる、ティム・バーナース・リー氏が1994年に、米マサチューセッツ工科大学(MIT)に設立したコンソーシアムだ。ティム氏は、スイス・ジュネーブの欧州原子核研究機構(CERN)においてHTMLとWebサーバを発明し、世界で最初の「Webサーバ」を構築した人物である。また、ティム氏はWebに関連した特許を一切取得せず、使用料も徴収しなかったことでも知られている。
W3CはWebの仕様や指針、標準技術を策定・開発することで、Webの可能性を最大限に導くことを目的にしていた。HTMLの仕様策定の場はW3Cであり、HTML1.0から始まった仕様は、1999年12月に策定されたHTML 4.01を最後として、一端、仕様策定に終止符が打たれているかのように見える。
この背景にあるのが、XML技術が広く普及しなかったという問題だ。ティム・バーナーナース・リー氏は、HTMLからXMLへの移行を考えていた。この次世代の仕様を「XHTML」として策定し、W3Cの正式勧告として2000年1月にリリースした。
しかし、残念なことにXHTMLは思ったように普及しなかった。その理由は色々と考えられるが、当初、XHTMLを解釈できるWebブラウザが限られていたり、Webブラウザによって解釈が異なっていたこと、さらには、XHTMLはHTMLよりも記述方法が厳格であり、扱いが難しく、Web開発の現場において、移行して得られるメリットが見えにくい、などの点が指摘できるだろう。
いずれにせよ、現在、利用されているほとんどのHTMLはバージョン4であり、実に10年もの長い間、仕様としての進化は止まったままとなっている。とは言え、この10年でWeb技術そのものは格段の進歩を遂げ、Webクライアントの高機能化(リッチクライアント化)は大きな命題となっている。
たとえば、リッチクライアント技術の代名詞のように語られる「Ajax」の技術である「XMLHttpRequest(XHR)」は、マイクロソフトが自社の「Outlook Web Access」のWebインターフェースに活用するためにActiveXオブジェクトとして99年に実装したのが始まりであったが、MozillaやNetscape、Opera、アップルでも採用され、事実上の標準として広まった経緯がある。具体的な知名度が上がったのはGoogleサービスが全面的にこの技術を採用したことに端を発する。
また、2004年には、W3Cの方針や方向性に異を唱えるMozilla、Operaなどのベンダーが「Web Hypertext Application Technology Working Group (WHAT WG)」を結成し、Opera、Mozilla、Apple、Googleなどのメンバーを中心に積極的な活動を展開する。
これにより、Webの仕様は、デファクトスタンダード、あるいはWHATAGが策定した規格などが優位となり、WHAT AGが推進する「HTML5」の仕様策定が進む中、W3Cが正式勧告する仕様の実装が進まない、という状況が続いていた。また、マイクロソフトはWHAT AGに参加せず、足並みが揃わない状況でもあった。
さまざまな規格乱立、デファクトスタンダードによる仕様は、これからのWeb技術全体の進歩に少なからず影響を与える。やはり、統一した仕様の策定が必要であった。そこで、2007年頃からは、W3CとWHAT AGとの歩み寄りにより、それまでWHAT AGが進めていたHTML5の仕様をW3Cで正式に策定することとなったのである。
2008年1月に発表されたHTML5の草案のリリースは、公式にW3Cの場でHTML5が策定されることを示すもので、マイクロソフトやIBMなどを含め、広く公式の場で次世代HTML規格の策定に向けて動き出したことを示している。
これまでにW3Cで策定、利用されてきたHTMLの主な仕様 | ||
規格名 | 勧告日 | 内容など |
HTML1.0 | 1993年6月 | 最も初期のHTML仕様(ドラフト) |
HTML 2.0 | 1995年11月 | HTMLワーキンググループによってRFC 1866として仕様が発表された |
HTML 3.0 | なし | 策定作業が進められたが途中で破棄された |
HTML 3.2 | 1997年1月 | W3C勧告として仕様が発表され、長らく利用された規格 |
HTML 4.0 | 1997年12月 | W3C勧告としてHTML 4.0の仕様が発表され、98年に仕様改訂が行われた |
HTML 4.01 | 1999年12月 | W3C勧告として公表、以降HTMLのスタンダードとして使われている |
XHTML 1.0 | 2000年1月 | HTML 4.01をXMLにて再定義したもの |
XHTML 1.1 | 2001年5月 | XHTML 1.0の機能向上版 |
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