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- 2019/10/28 掲載
失敗談から学ぶ「なぜそのとき最高のプロダクトは生まれなかったのか」
ピースオブケイク 深津貴之氏ら登壇
問いを立てる段階からクライアントと一緒に探る
SIX CEO 野添剛士氏(以下、野添氏):自社プロダクトをつくる場合とも共通して大事にしているのは、「問いの角度」ですね。新たにどういう角度の進化を世の中にもたらしていくのか、「その問いって“角度”立ってるの?」という言い方を弊社ではいつもしています。
THE GUILD/ピースオブケイク 深津貴之氏(以下、深津氏):僕はプロダクトを「サービスが提供するエコシステム全体」と定義しています。そしてエコシステムというレイヤーで考えるなら、「モノを納品すれば終わり」という“納品物の呪い”を乗り越える必要があると思っています。
作るのがモノであれば納品して終わりで全然いいんです。でも、もっとライフサイクルの長いものを前提とするのであれば、納品で終わりではなく、もっと長い期間、企業と伴走しなければなりません。
及川氏:契約上、「納品して終わり」となっているのが足かせになることもあります。伴走型にするためには、受託側・発注側が何をどう変えていけばよいのでしょうか。
深津氏:プロダクトを生むための“問い”を立てる企画段階から、受託であってもチームとして一緒に探していく必要があると思います。
Takram 渡邉康太郎氏(以下、渡邉氏):そういった動きはTakramのデザインコンサルティングでも多々あります。問いを探すところからパートナーとして伴走するには、我々の側では上流から下流までできるメンバーがそろっていることが必要です。一方でクライアント側には胆力が求められます。成果物の要件が固まっていないプロジェクトを外部と一緒にやり、かつそれを社内できちんと通せる胆力です。
同じメソッドを使えば成功するとは限らない
及川氏:これまでの失敗を踏まえて工夫していることは何かありますか。渡邉氏:デザインや経営の世界だと、「デザイン思考」「アイデア発想法」といったメソッドの話がよく出てきますね。Takramも自分たちのメソッドを開発するのが好きで、ある時うまくいったプロジェクトのメソッドを、ほかの人に完コピ(完全コピー)してプロジェクトを進行してもらったことがあります。でも結果、そのプロジェクトは失敗してしまいました。
持ち主しか使いこなせないメソッドを、突然ほかの人に渡しても自在にコントロールができない。メソッドやツールは万能ではないんです。侍の刀を他の人に渡しても、すぐ使いこなせない。自分が使いこなせるように研ぎ直す必要があります。むしろそのメソッドがどういう目的意識生まれたか、最初のニーズや問題意識にこそ向き合う必要があると気づきました。
及川氏:それはありますね。システム開発でも色々なフレームワークがありますが、型から入るのは大事でも、その中身の方をいかにコピーして育むかが大事だと感じます。
深津氏:武器を使う人の違いという点で、これまで見たことのないものを新しく制作するプロジェクトに、生産や整備のプロを連れてきて大失敗する大企業をよく見かけます。創造する人と生産・整備する人は職能が全然違います
及川氏:日本のものづくりと言うと、どうしても多くの人が工場的なものを思い浮かべてしまい、創造的な部分が抜けている気がします。
深津氏:歴史を振り返ると、機械化や大規模生産が起きたとき、原型を作る人1人と製造者100人に分離してしまい、気づけばその原型を作る人がいなくなってしまった。職能の違いを理解せずに原型を作る仕事を生産側の人に振ってしまうと、出来上がった原型がどこかのコピー品ということも出てきます。
現代でたとえると、Web制作において既存のフレームワークばかりを使ってきた人が増えてくると、今後10年くらいで新しいフレームワークをつくれる経験値を持つ人がいなくなってくると思います。
【次ページ】負けることを勝負の中に織り込み、最後に勝つ
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