• 2013/12/13 掲載

上流工程対応人材の育成 -コンサルティング会社の人材育成方法に関する調査結果(2/2)

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コンサルタント育成方法は一般企業に適用できる

 前述のコンサルティング会社の人材育成方法を一般企業に適用する場合、いくつかの課題を解決する必要があります。これらの課題は、すでにいくつかの一般企業で解決されています。その一部を紹介します。

1)必要な文化風土を確立する
 コンサルティング会社の事例から、まず文化風土の確立が必要であることが理解できます。ここで文化風土とは、組織内で共有された行動規範、思考行動方法という意味です。作り上げ浸透させるべき文化風土として、以下があると考えられます。

(1)ユーザーの期待を超える高い達成水準
(2)ユーザーの成功、自社ビジネスの成功のために、全身全霊を傾ける行動規範
(3)目指す人材ビジョンの共有、プロとして自覚を持った実践
(4)必要なことは自立的に学ぶ、互いに教えあう行動規範

 今回の調査で得た人材育成の方法は、難しい問題の矢面に立たせて答えを出すしかない状況の中で、自分の力を最大限発揮させるというものです。ただし、ただ任せて自由にさせるだけで、最大限の力の発揮は成されません。ユーザーのために全身全霊を傾け、高い達成水準を必ず満たす。そのためにコンサルタントとは何か明快な定義を持ち、また自立的に学び相互に教え合うことが必要です。

 このような文化風土の確立は、どのように進めればよいのでしょうか。

 先行企業の中には、システム部門長が部門の付加価値を高めるため、ミッションを再構築し、マネージャーやリーダーを集めた2~3時間の隔週の会議を何年も続け、百回以上開催し、基本的な考え方を何度も繰り返し部員に伝え、文化風土そのものを改革した事例があります。

 新たな文化風土を確立するには、まず、目指すべき文化風土(人材ビジョン、行動規範など)と、その背景(達成すべきシステム部門のミッションやビジョンなど)を明確化し、その上で部門長が、これらをしつこく言い続け、指導し続けることが重要であると認識できます。組織の文化風土を変える場合、それはやはり組織のトップにかかっているわけです。

 なお、しつこく言い続ける以外に、文化風土を定着させる事例として、何を実現できる人間になるべきか明確化すると共に、そうなるための努力に報いる方法があります。コンサルティング会社B社の「プロフェショナル認定制度」はその1つです。本制度では、何ができれば認定されるかが明確化され、認定された社員の評価が高まるようになっています。

 また、目指すべき文化風土を明確化した後に、これを達成した人材を思い切って厚遇する、責任あるポジションに引き上げるなどのシンボリックな人事で、部員に部門長のメッセージを示すという成功事例もあります。

 なお、目指すべき人材ビジョンやシステム部門のミッションなどの設定では、その必然性である社内外の環境や、組織長の思いを明確に示し、部員全員の気持ちをそこへ方向付けることが重要になることは言うまでもありません。

 そして、文化風土が定着しているか、指導が浸透しているかフォローすることが必要です。アセスメントなどの手法もありますが、まずは言い続け、指導し続ける中で、部下への浸透度合いを部門長が自ら直接把握することが重要だと考えられます。

2)育成対象者に難問を与え、矢面に立たせる
 育成対象者の仕事へのアサインメントを現場に任せると、「難問を与え矢面に立たせる」ことができない可能性があります。「現場の論理」に流され、これまで担当してきた(難易度の高くない)仕事に塩漬けになったり、上長や先輩が失敗を恐れ、矢面には立たせないようにすることが考えられます。このような現場の論理に陥ることなく、いかにして育成対象者に難問を与え矢面に立たせるかが課題となります。

 先行企業の中には、ある階層以上の全社員の評価を幹部全員で実施し、今後どのようなキャリアを積ませるか、そのためにどのような仕事にアサインするかを決めています。つまりアサインメントを現場に任さず、幹部が決定することで、社員一人ひとりにとって最適なアサインメント、キャリア形成を実現しています。

 コンサルティング会社には、管理職のみならず一般社員であっても、後輩にストレッチした仕事を与える文化風土が確立されています。

 たとえばA社コンサルタントは、「チャレンジが必要なロールを、それが出来る可能性がある人材にやらせるストレッチは、多くのコンサルタントが意識して実行している」と述べています。前述1)で示した文化風土確立方法を用いて、このような挑戦的なアサインメントの文化風土を確立し、本課題を解決する方法もあると考えられます。

 これら以外に、以下のポイントがあります。

3)本当に困らなければ助けない指導を徹底する
4)先読みし続ける遂行方法を徹底させる
5)フレームワークに代表される知見を日々拡充する
6)その他

(1)システム子会社の場合、育成に関わる費用を確保
(2)一部の社員に難問をアサインする場合、同年代の他の社員のモチベーションへ対処する

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