- 2013/12/13 掲載
上流工程対応人材の育成 -コンサルティング会社の人材育成方法に関する調査結果
本調査では、コンサルティング会社の有能なコンサルタントにデップスインタビューを実施し、彼らの能力や実績と共に、彼らが、何時ごろどのような経験、指導、自立的学習によって現在の能力を手に入れたかを確認しました。対象とした有能コンサルタントは、30歳代。これは、一般企業において、上流工程に対応させたいシステム人材の年代です。
また、一般企業(連結売上6000億円~2兆円以上)の上流工程に対応させたいシステム人材(主に30代)と、すでに上流工程に対応できているシステム人材(主に40代)についても、能力や仕事の実態を調査し、有能コンサルタントとの間で比較を行いました。そして、コンサルティング会社の人材育成方法を一般企業に適用する場合の課題と、課題解決の参考となる一般企業のシステム人材育成事例を調査しました。
これらの調査でわかったことは、以下です。
一般企業30代のシステム人材の付加価値は、もっと高められる
今回調査したコンサルタントは、30代半ばで、海外現地法人のERP導入のIT戦略策定から実現。グローバル経営管理の基本構想の策定。システム子会社の運用保守業務の可視化、業務統合による生産性向上とオフショア活用などによるコスト削減などの仕事を、顧客のCIOやシステム部長、ビジネス側の部長や経営幹部を相手に推進しています。一方、今回調査した一般企業の30代のシステム人材は、1システムの企画やプロジェクト・マネージメント、システム要件明確化などの業務を、現場のマネージャークラスを相手に進めている例が多く見られました。一般企業では、上記コンサルタントが対応している仕事は、40代の社員が対応しています。コンサルタントも、一般企業のシステム人材も、入社してすぐは、開発やシステムのエンハンスからキャリアをスタートします。ところが、30代になると、コンサルタント達は、一般企業の40代の仕事をしている。つまり、一般企業とコンサルティング会社の間で、30代になるまでに、対応できる付加価値(対象組織や業務の範囲、効果の大きさ)で10年間の差が付いたことになります。
見方を変えると、人材育成方法を改革すれば、一般企業でも、まだまだ人材の生み出す付加価値を高められるとも考えられます。
有能コンサルタントの育成方法は、コンサルティング会社を超えてほぼ同じで
本調査では、コンサルタントの能力や実績と共に、彼らが、いつごろどのような経験、指導、自立的学習によって現在の能力を手に入れたかを確認しました。調査の結果、会社、個人を越えて、ほぼ同様な育成方法が浮かび上がってきました。→まず前提として…
(1)何よりも顧客メリットを優先する、顧客のために全身全霊を傾ける文化がある
(2)顧客の期待を超える、顧客を驚愕させる等の、高い達成水準が共有されている
(3)コンサルタントは、コンサルティングの定義や目指す人材ビジョンを明快に認識しており、プロとしての自覚を持って、これの実現を心がけている
→その上で…
(4)顧客に難問解決をコミットし、育成対象者にこの難問を与え、矢面に立たせる
(5)先輩・上長は、育成対象者に可能な限り任せ、本当に困らなければ助けない
→すると、育成対象者は…
(6)まず、必要なことは自立的に学ぶようになる(何冊も本を読む、周りに聞く)
(7)そして進め方を徹底的に詰め、その後も常に先読みしリスクの芽を摘み続ける
(難問であるだけに失敗もするが、そんな場合矢面に立っているので、顧客から厳しく問われる。そこで、誰よりも先まで見通すようになる)
(8)「わからない」はありえない。顧客のために死んでも答えを出すべく頑張る
→ただし…
(9)コンサルタント同士で互いに教えあう文化があり
(10)標準方法論、過去のプロジェクト実績、それを実施した先輩が揃っている
(11)任せてはいるが、独り立ちするまでは先輩・上長が常に同行しており、本当に困ったときには指導する。この指導は、困っている時であるから心にしみこむ
(12)顧客経営幹部というレベルの高い相手と共に難問を解いているということが、誇りであり、高いモチベーションの源泉となる
(13)また、難問であるから、顧客の意向を超える達成水準を実現するから、成功して顧客に感謝される。するとこれが自分の喜びとなり、次も頑張る源泉になる
たとえば「高い達成水準」についてC社コンサルタントは、「コンサルタントの成果は、顧客を驚愕させるレベルで無ければならない。このような高い水準は、すべてのマネージャーが認識している。その水準の成果が出せるまでは、徹底的に考える。…顧客を驚愕させる水準の成果を出すには、毎回自分の経験値を超えなければならない。これは、常に自分に課している」と語っています。
「何よりも顧客メリットを優先する、顧客のために全身全霊を傾ける文化」については、B社コンサルタントが「(自分が対応する)挑戦的な課題は、自分が顧客に協力して解決しないと、顧客は効果を得られない。だから何とか対応しようとする。顧客と一緒に課題を解決しようとすれば、顧客との間に良い関係ができる。この良い関係は、協力して課題を解決するために重要だが、それ以外に、自分自身が、この顧客のために絶対この課題を解決するぞ、という気持ちにする」と語っています。
「難問を与え、矢面に立たせる」については、A社コンサルタントが「プロジェクト体制の中で自身の責任の下で自チームのメンバーのロールを決めることができる。当然、参画しているメンバーの状況、プロジェクト、タスクのスケジュール、難易度等に依存して判断はしているが、現時点で確実に遂行できるロールではなく、多少チャレンジが必要なロールを与えることで、自然と業務をこなしながら成長する環境を作れるよう意識している。会社としてもストレッチを促す文化がある」と、またB社コンサルタントは「当社は、風土として、先輩が若手に、挑戦的な場を与える。自分の場合、若いうちに与えられたサブリーダーの役割や、現在やっている基本構想のリーダーなどがそれだ。当社では、場を与えて任せっぱなしではなく、段取りを一緒に組んだり、まず一緒に行ってやって見せたり、先輩は後輩を熱心に育てる。これも風土になっている」と語っています。
「難問を任せ本当に困らなければ助けない」について、C社コンサルタントが「…上司が難易度の高い仕事を任せ、火が噴くまで助けないという育成方法でコンサルタントを育てていた。(現在は、もっと丁寧に指導している)現在は、サービス設計、ERP、ITグランドデザインなどそれぞれの領域ごとに、標準的なコンサルティング方法が整備されている。ただし、標準的な方法は底上げにはつながるが、エッジが立った人材の育成には不十分。やはり、修羅場をくぐらせることが必要」と語っています。
「必要なことを自立的に学ぶ」について、D社コンサルタントが「新分野に入る場合は、迫られて短期間で立ち上がるために、専門書を読みあさり、ネットで顧客や競争相手の財務諸表や中期計画を確認し、社内の類似プロジェクトをチェックし、有識者に会って話を聞く。1週間から1ヶ月で、顧客と対等に話せる知識はつけなければならない」と語っています。
そして、コンサルタントが目指す人材ビジョンについては、C社コンサルタントが「顧客からヘッドハントされる人材でなければならない。つまり、まず能力で顧客が是非欲しいと思える水準でなければならないが、それだけではなく、是非仲間にしたいという信頼を同時に勝ち取れる人材である」、D社コンサルタントは「難易度の高い命題を解決して、顧客経営層を納得させることができる人材」と語っています。
【次ページ】コンサルティング会社の人材育成方法を一般企業に適用する場合のポイント
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