クラウド、ビッグデータの果実を掴むマイグレーション
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今後10年間でメインフレーム市場は収束し安定化へ向かう
次に、東京システムハウスの清水 真氏が登壇し、「マイグレーションの今までとこれから~マイグレーションの現在・過去・そして未来~」をテーマに、同社の取り組みについて説明した。
清水氏は「マイグレーションを進めるなら、できるだけ早いほうがよい」とし、その根拠について順を追って説明した。まずマイグレーション市場の移り変わりに関して、JEITAのデータを基に検証した。メインフレームの需要は年々減少傾向にある。2002年には出荷実績は1305台だったが、2012年には10年前の約3割になり394台まで減った。そのうえで同社では、稼動台数も2002年の約8000台から、2013年現在で2500台ぐらいになっていると推測しているとのこと。
「10年前は、小型・中型・大型のメインフレームの比率が正三角形の形をしていましたが、現在は比率が変わって崩れてきています。手を付けやすい中型機が特に減ってきました。これらはマイグレーションされ、オープン化が促進されてきたからです。結果として大型と小型の両極端のメインフレームが残り、レガシープラットフォームの問題で悩まれているようです」(清水氏)。
一方、メインフレームのほかにもオフコンもまだ残っている。同社によれば、2013年には9000台ぐらい稼動しており、このうち半分が海外製だという。残りの半分は国産だが、現在ではオフコンを販売している国内企業は3社しかない。オフコンのほうがメインフレームよりも数が多いため、マイグレーションの引き合いも多いそうだ。
では、今後のレガシープラットフォームの傾向はどうなっていくのか。清水氏は「脱レガシー化が進むでしょう。その背景として、システムの費用対効果が低い、メーカーサポートが不安、レガシー系技術者の不足といった理由が挙げられます」と述べた。
「恐らく10年後には大型メインフレームだけになっていくと思います。500台ぐらいは稼動し、その後は安定マーケットになるはずです。オフコン系も海外メーカーが主体となり、3000台ぐらいで落ち着くと予測しています。いずれにしても10年後にはメインフレームやオフコンからのレガシーマイグレーションのニーズは収束していくでしょう」(清水氏)。
マイグレーション・ニーズの変化に伴う東京システムハウスの施策
これまでもマイグレーションのニーズは変化してきた。マイグレーションを実施する理由は、2000年には順に「コスト削減」「データ連携」「技術者不足」「事業継続」「システム最適化」だった。それが2010年になると「コスト削減」「技術者不足」「事業継続」「システム最適化」「データ連携」へと変わっている。清水氏は「傾向をみるとコスト削減は依然として1位ですが、ほかの要素では技術者不足が顕著です。事業継続は震災以降の不安の高まりから上がりました。残念ながら、いずれもネガティブなニーズの優先度が高まっているようです」と指摘した。
東京システムハウスでは、マイグレーション・ニーズの変化に対し、従来のマイグレーションサービスに磨きをかけて進化させることで、顧客の要求に応えようとしている。「技術者不足に対する課題については、この11月からマイグレーション技術者を増員し、お客様と供に移行から運用までをトータルにサポートする予定です。事業継続の問題については、2010年からスタートしたクラウド化サービス“MMS+Cloud”を強化しました。マイグレーションの自動化と、オープンソース対応のプラットフォームによって、クラウド利用の価値を高めます」(清水氏)。
このような組み合わせによって、マイグレーションではクラウドに移行し、移行後のシステムを同社の技術者が保守・管理することで、技術者不足と事業継続という2つの問題を解決していく方向だ。
「システムの最適化に関しても、我々の純粋なマイグレーションサービスをより強化していきます。具体的にはIBMのメインフレームを対象にした棚卸サービスをスタートします。これは、資産を機械的に検証して可視化するものです。そのほかにも照合テストを行なうための支援ソリューションや、既存サービスを向上させる取り組みも行なっています。一方、データ連携の問題に関しては、基調講演に登壇したトレジャーデータ様と手を組んで、COBOL技術者向けの新たなビッグデータソリューションを推進中です」(清水氏)。
東京システムハウスでは、単に基幹システムを延命するだけでなく、その価値を高めるためのアプローチをしていく方針だ。清水氏は「まずはマイグレーションを必ず成功させます。これまでの長い経験の中で、技術的な原因によってプロジェクトが中止になることは一度もありませんでした。それは今後もお約束いたします。またクラウド化によってインフラを最適化させていただきます。ビッグデータの活用についても単なる移行に留まらず、大量データを迅速に活用できる新たな手法をサポートします。オープン化しても実現できなかったことを、我々の付加価値として提供したいと考えています」と述べ、「マイグレーションをやるなら、できるだけ早いほうがよい」という点をもう一度アピールした。
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