クラウド、ビッグデータの果実を掴むマイグレーション
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東京システムハウスは、先ごろ開催されたプライベートセミナー「MMSフォーラム2013」の中で、これからのキーワードとなる「クラウド」と「ビッグデータ」にフォーカスし、より基幹システムの価値を高められるマイグレーション・ソリューションを提供していく方針を明らかにした。ここでは、MMSフォーラム2013に登壇したトレジャーデータのビッグデータに関する基調講演と、単なるデータ移行に留まらない東京システムハウスの取り組みについて紹介する。
クラウド、ビッグデータなど新しい動きに対応するためのマイグレーション
MMSフォーラム2013の開催にあたり、まず主催者である東京システムハウスの林知之氏が登壇した。
同社は1995年からマイグレーションサービスをスタートした。当時はオフコンもメインフレームも最大のテーマはコスト削減だった。2000年問題も控えており、マイグレーションビジネスに加速がついた。その後はオープン・ツー・オープンや、小規模から大規模まで対象としたメインフレームのマイグレーションが進んだ。
林氏は「この数年はクラウドへのマイグレーションも増えました。最近ではビッグデータ向けの機能を享受するためにオープン系へ移行し、インターネットにシームレスにつなげられる環境でシステムを運用することが第一の目的になってきました。皆様の環境構築にお役に立てるように、本セミナーをご活用いただきたい」と挨拶を行なった。
クラウド型サービスでビッグデータ活用を加速させるトレジャーデータ
基調講演には、トレジャーデータの堀内健后氏が招聘され、「今すぐ始められるビッグデータ」をテーマに、自社のサービスなどについて解説がなされた。同社は、日本人技術者がシリコンバレーで設立した大変ユニークなベンチャーとして注目を浴びており、Yahoo!の創業者も出資している企業だ。
堀内氏は「いまインターネットの世界ではビッグデータが大きく注目されていますが、すでに以前から基幹システムに大量データがあり、それがビッグデータだったと考えている企業も多いようです。いわゆるバズワード的なものではなく、実際に企業で扱われている重要なデータです」と指摘する。
このように企業内で眠っている“お宝”のビッグデータを、いかに活用していけばよいのだろうか? データ分析に価値があることが分かっていても、従来のようなデータウェアハウス(DWH)やBIツールは非常に高価だ。投資対効果を明らかにしても、一般的な企業では数千万円から数億円という高価な投資をさせてもらえないという悩みがあった。
「そこで我々は、利用した分だけの費用を支払う形のクラウド型サービスを提供しています。仮説を検証するためにデータを集計して統計・解析すると、膨大な作業が必要になります。大規模データの分散処理を支えるHadoopを導入することで、迅速に集計処理を行なう環境も整えました。そして基幹システムやインターネット上のデータをリーズナブルに蓄積し、分析できるようになりました。我々のサービスならば月額単位で数十万円からご利用いただけます」(堀内氏)。
同社のクラウド型サービスでは、ビッグデータをスキーマレスで蓄積できる仕組みがある。最初はスモールスタートから始め、そのまま構成を変更せず拡張していけるのだ。また「ETL」(Extract/Transform/Load)と類似的ツールも用意し、大量データを迅速かつ簡単に蓄積できる。9月現在で計90社が利用しており、蓄積データの総計は1兆件にも上るそうだ。このような環境を構築すれば、バッチ処理が早く回り、ECを展開する際にキャンペーンを打つタイミングも素早くなり、経営サイクルの短縮化にもつながる。
堀内氏は自社の事例も交えて、ビッグデータの活用例を示した。たとえば同社の顧客であるクックパッドは、料理のレシピを提供しており、約2000万人ものユーザーを抱えている業界屈指のWebサイトだ。「ユーザーが食材を検索すると、検索ログなどがサーバにどんどん溜まり、データベースも膨らんで構成管理も大変な状況でした。我々のサービスをご導入いただき、ビッグデータを蓄積・活用できる環境を約2週間で整えられました」。
最近のFA機器には多くのセンサーが付いており、莫大なデータを品質管理に役立てられるようになった。堀内氏は「製造業だけでなく、物流のデータや自動車のテレマティクスデータ、POSデータなどもビッグデータとして活用できます。我々のサービスを使えば、時系列で吐き出されるセンサーデータを、いくらでも溜め込めるのです」と強調した。
建築業界でもビッグデータが活用されている。コマツの建機でサポートされる“KOMTRAX”の情報も代表的なビッグデータといえる。これらを利用すれば、どんな機械が、いつ、どこで稼動しているのかという点を把握でき、さらにメンテナンスの時期も分かる。ビッグデータを抽出し、ビジネスに活用しようという動きは今後も広がっていくだろう。日本企業がビジネスシーンで勝ち抜いていくためには、このようなビッグデータ活用の環境を整えられる選択肢が多いほうがよい。
堀内氏は「分析基盤だけ用意しても、基幹システムからデータを取り出せなければ意味がありません。また業務知識や実務経験をベースに仮説を立てる能力や、統計知識やデータ処理のプログラミング能力も求められます。皆様の知恵をお借りしながら、このような問題を一緒になって解決できる環境を提供していきたいと思います」と述べた。
【次ページ】今後10年間でメインフレーム市場は収束し安定化へ向かう
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