• 2025/04/04 掲載

焦点:関税の次は金融か、トランプ氏の次の一手に戦々恐々の同盟国

ロイター

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Francesco Canepa John O'Donnell

[フランクフルト 4日 ロイター] - 1月の就任以降、矢継ぎ早に関税措置を出してきたトランプ米大統領。米国の同盟国も容赦しない措置に、すでに世界は十分振り回されているが、トランプ氏は自身の政策実現のためにさらなる難題を貿易相手国・地域に突きつけると専門家は予想する。

金融の中心地があり基軸通貨を発行する国の統治者として、トランプ氏にはクレジットカード、外国銀行へのドル供給など、切り札はまだある。こうした非伝統的な「武器」の使用は、米国自身が多大なコストを負い裏目に出る可能性もあるが、究極のシナリオも排除すべきでないという。

特に警戒しなければいけないのは、関税が米貿易赤字の縮小につながらない場合だ。労働力不足のためあり得ると多くのエコノミストが考えている。「トランプ氏がいら立ちを募らせ、論理的根拠がなくても突飛なアイデアを実行しようとすることは十分考えられる」とカリフォルニア大学バークレー校のバリー・アイケングリーン教授(経済学・政治学)と話す。

<マールアラーゴ合意>

トランプ米政権の「公然の秘密」の計画は、ドルを弱くして貿易の不均衡を是正することだ。その方法の一つが、外国の中央銀行を巻き込んでドルの価値の再評価をすることだ。

米経済諮問委員会(CEO)委員長に指名されたスティーブン・ミラン氏による昨年11月の論文によると、これはトランプ氏のフロリダ州の私邸と1985年のプラザ合意にちなんで名付けられた「マールアラーゴ合意」の一環で起こる可能性がある。ミラン氏は論文で、米国が関税賦課と安全保障支援などをテコに諸外国に自国通貨の対ドル相場押し上げを促すという考えを示した。

しかし経済学者は、現在の経済的・政治的状況は40年前とは大きく異なるため、欧州や中国が応じる可能性は低いとみる。

ピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー、モーリス・オブストフェルド氏も「ありそうにないシナリオ」と述べた。すでに関税は発動されているため新たな交渉カードにはならず、安全保障についても、ウクライナ問題を巡る対応で分かるように国際的な枠組みから米国は後退していると指摘。ユーロ圏、日本、英国の中央銀行は、金利を引き上げて不況のリスクを取らされる「取引」に応じる可能性は低いとも述べた。

TSロンバードのチーフエコノミスト、フレイヤ・ビーミッシュ氏は、中国当局にとって人民元の押し上げはリフレの取り組みに反すると指摘した。

円買い介入を実施してきた日本も、最近ようやく終了宣言した25年にわたるデフレの記憶が円高への意欲を弱める可能性がある。

<ドルの後ろ盾>

要求が通らない場合、トランプ政権は、ドルの基軸通貨としての地位を利用するなどして、より攻撃的な戦術を試みる可能性がある。

オブストフェルド氏や中央銀行関係者が挙げるのが「ドル資金の融通」だ。危機時にドル流動性を供与する、米連邦準備理事会(FRB)と外国中央銀行の通貨スワップ協定の打ち切りを交渉カードに使う可能性があるという。非常時にドルの融通を受けられないとなれば、米国外のドル調達メカニズムが機能不全を起こし、英国や欧州、日本の銀行が大打撃を受ける。

通貨スワップ協定を所管するFRBを掌握したいとトランプ氏は示唆していないが、最近の規制当局での幹部人事などの例があり不安視されている。

コンサルティング会社シン・アイス・マクロエコノミクスの創業者スピロス・アンドレオポウロス氏は「より大きな交渉の中で、これが核の脅威のように機能する可能性はもはやゼロではない」と述べ、そのような動きは長期的には、信頼できる国際通貨としてのドルの地位を下げるとの見方を示した。

<クレジットカード>

米国にとってもう一つの切り札は、資金決済だ。日本や中国では独自の電子決済が浸透しているが、ユーロ圏ではビザとマスターカードがカード決済の3分の2を占める。アップルやグーグルなどが提供するスマートフォンアプリによる支払いは、小売り決済の約1割に相当する。

ビザとマスターカードは、ロシアがウクライナに侵攻した直後にロシア向けサービスを停止した。欧州が同様な脅威に直面すれば混乱は必至だ。

欧州中央銀行(ECB)は、トランプ政権を念頭に欧州が「経済的圧力と威圧」リスクにさらされており、デジタルユーロがその解決策になる可能性があると指摘しているが、導入を巡る議論は進んでいない。トランプ政権の不合理な措置に、米銀の欧州業務の規制などで対抗することも可能だが、逆に欧州銀行の米国業務で報復される可能性があり、強硬な措置は取りづらいのが実情だ。

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