世代間闘争（高齢者もネットを活用）

　まずは、今回の選挙の特徴は、世代間により支持した候補者が全く違ったということだ。

韓国議員から見せてもらった資料（下写真）によると、20代及び30代は6割以上が文候補を支持している（朴候補の支持率の二倍）。一方、50代及び60以上をも見ると逆に6割以上が朴候補を支持している。特に60歳以上は7割を超えている。 一般的に韓国の大統領選挙は、地域間闘争の感が強く。ソウルなお大都市部や全羅道はリベラルな候補、慶尚道などは保守的な候補を応援する傾向があるそうだ。今回は地域間闘争とともに世代間闘争という要素が強くなったと説明を受けた。



　20代、30代の世代では文候補が圧倒していることがわかる。また、20代でも65％の投票率と、日本に比較して非常に高くなっている。全体の投票率が70.99％だった2009年の衆議院選挙で20-24歳の投票率は46.66％だった。全体の投票率が60%を割った2012年12月の選挙はおそらく10%以上投票率が落ちているのではないか。

　しかしながら、世代間闘争を制覇したのは、ジュニアでなく、シニア世代だった。50代以上の投票率は90％となっており、20～30代の65％を圧倒している。韓国の議員によると1950-53年の朝鮮戦争を知る世代は圧倒的に保守的だとのことだ。変革よりもまずは国の安定を望むと聞いた。

　そして、印象的だったのは「高齢者もネット選挙の影響が大きい」ということだ。
韓国は、ＩＴ大国で、スマホが3,000万台普及しているという。有権者4,000万人なので、中高年層にも普及しているという。韓国通信白書によると、18歳～59歳の労働者人口の9割近くがスマートフォンを使っている。実際に朴陣営は、50代以上もターゲットにネット選挙を展開したという。特に「カカオトーク」は高齢者に使われており、実際に朴候補はカカオトークで日常生活などの情報を発信している（ちなみに、若者はTwitter、FBを活用）。

　韓国中央選挙管理委員会が実施した意識調査によると、候補者選択に必要な情報収集手段として、「テレビ討論・演説」37．5％、「テレビ・新聞報道」35．5％、「インターネット、ソー一シャルネットワーク」20．4％と、インターネットの影響が大きいことが理解できる。

SNS大活躍

　今回の大統領選挙で活躍したのが、SNSだ。朴候補、文候補の両陣営ともにネット選対チームを設置している。その規模は数十人にもなると言う。

　特に注目すべきところは、SNSで情報発信するだけでなく、SNSで「選挙資金ファンド」（朴模恵氏：約束ファンド、文在寅氏：ツタファンド）に誘導し、選挙資金の寄付募集にも活用したところだ。日本では、ネット選挙というとPRだけに注目が集まりがちだが、ネットで「広く、うすく支援を得る」ことは圧力団体などの影響を小さくするためにも非常に重要な要素である。

　朴陣営は、大きく二つの戦略をとったという。一つはTwitter、FB、カカオトークなどの連係であり、様々なSNSを連携させている。また、もうひとつは、プライベートや子供時代の写真などを紹介し、感情に訴えることである。

　選挙におけるSNS活用は2011年ソウル市長選から本格的に始まっており、Twitterで情報を提供し、FBで意見交換をする。そして、カカオトークは、前述のように高齢者を含み韓国で全体的に利用されているため、影響が大きかった。特にSNS上には大統領選挙の結果予測が出ており（韓国では一週間前の選挙結果予測は禁止。日本も禁止したほうがいいかもしれない。）、この麺でもSNSが選挙に影響を与えている。

　日本ではまだ各党間の意見が集約できない「電子メールの利用」については、メールアドレスが数十万人規模で電子メールが流れたりしたが、電子メール送付はあまり効果ないという。投票前にあまりにも多くの投票依頼メールが来るため、誰もそのようなメールは読まなくなっていると聞いた。