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  • 2013/02/15 掲載

スマートシティで中心的な役割担う地域BCPと医療クラウド、その新たな可能性を探る

【連載】変わるBCP、危機管理の最新動向

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前回は、今後発展が有望視される医療クラウドとBCPの関係強化の流れにおいて、スマートシティやスマートグリッドという枠組みの中に医療クラウドが包み込まれ、これにBCPが融合されるという状況について、質疑応答形式で内容を紹介した。今回は前回の内容を受けて、今後の医療クラウドはBCP拡充・発展とどのような関係を持ちうるのか、スマートシティやスマートグリッドという枠組みのなかでどのような位置づけを与えられるのかについて解説する。地域まるごとスマート交通システムとBCPコミュニティの統合の可能性を示す「スマートシティはこだて」の事例なども紹介したい。

スマートシティの分類別によるBCP・医療クラウド活用例

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O氏:現在、2次医療圏を対象に、都道府県が策定した地域医療の再生計画を支援するための地域医療再生計画という制度が始まっています(参考:北海道の策定例)。これに地域内における電力需要最適化を行うエネルギー管理システムであるHEMS (ヘムス)やCEMS(セムス)など、スマートシティで追及するコンセプトが重なりあってきています。そして、これらの動きと地域公共系のBCPと統合し、BCPが大きく変容しようとしています。

関連記事:スマートシティとは何か、都市を効率化する3つのIT

受講者B氏:スマートシティとBCP、医療サービスとは直結していると理解してよろしいのでしょうか?その点について、もう少し構造的に説明していただけますか?

O氏:スマートシティの実証実験にはさまざまな分類方法があります。大きく分けると、既存の都市を対象とする「再開発型」と、新たな都市計画のプランに沿って展開する「新都市型」という2つに分類する方法が一般的です。

 その一方で、この分類法とは別個に「離島型」や「広域型」といった地理的なスケールの視点でパターン分けすることもあります。

 この「離島型」や「広域型」といった地理的なスケールの視点で見るときには、防災、災害予防、医療、福祉など、地域住民の暮らしに直結し、市民向けサービスの基礎的なインフラを成しています。すなわち地域BCPと医療サービスがどのように組み込まれ、位置付けるかが非常に大切なポイントとして認識されています。

 スマートシティにはさまざまな階層がありますが、防災、災害予防、医療、福祉といった階層が1つのコアとなります。このコアを構成する防災、災害予防、医療、福祉のプラットフォームは、それぞれ地域BCPと医療クラウドが中心的な役割を果たすことになるはずです。

受講者B氏:なるほど。「離島型」や「広域型」についてはおおまかに理解できました。それでは、先生が前者のパターンとして挙げている「新都市型」や「再開発型」というスマートシティの区分では、地域BCPと医療クラウドはあまり考慮されないということでしょうか?

O氏:いいえ。そういうことではありません。「新都市型」や「再開発型」の場合、地域BCPと医療クラウドについて、地理的なスケールの視点とは別の角度で捉えられるという意味でご理解ください。

 スマートシティといえば、我が国では2010年4月8日に経済産業省が横浜市、豊田市、京都府、北九州市で実施している「次世代エネルギー・社会システム実証地域」が、直近では震災で液状化した浦安市が再生に向けて取り組んでいることで知られていますね。これらのプロジェクトは、いずれも「再開発型」に分類されています。

 再開発型は、比較的先進国に多いパターンです。新都市型ほどダイナミックな効果は望めませんが、事業費は数億円から数百億円程度で収められることが多いといわれています。海外では、オランダ、アムステルダムのプロジェクトは再開発型の代表例としてよく取り上げられる事例となっています。

 アムステルダム市では再開発型の都市計画のプランに沿って「アムステルダム・スマートシティ・プログラム」を実施していますが、既にあるインフラを利用し、そこにセンサーや制御機器を追加してエネルギー効率の向上を狙っています。

 このアムステルダム・スマートシティ・プログラムでは、防災、災害予防、医療、福祉、教育、娯楽といった、市民生活と直結するサービスを極めて重視したアプローチを取っています。

 具体的には、2つのエリアの合計約1200件の一般住宅に、GPRS規格(GSM方式の携帯電話網を使ったデータ伝送技術)の無線通信機能を備えたスマートメーターを設置しています。これらセンサー、制御機器、スマートメーターで構成されたプラットフォームでは、ワイヤレスセンサーネットワークの構築を目的に策定された国際規格であるIEEE802.15.4規格(注記参照)で多数の機器を接続するための仕様を定義しています。IEEE802.15.4を採用した無線通信システムを編成することにより、センサーやアクチュエーターとの通信に最適化された機器編成が可能となります。

【注】IEEE 802.15.4とは

 スマートグリッド向けに開発されたオープンな国際標準通信規格「IEEE1888」はご存じの方も多いだろう。HEMS、BEMSなどのシステムを構築する際には、エネルギー管理に必要なさまざまな状態を監視するためのセンサーが多数設置される。同時にこれらの装備は、HEMS、BEMS間での通信やシステム連携を形成するための基礎となっている。
 これらをシステム間で通信やシステム連携を形成する際には、そのすべてを有線の配線で処理することは非現実的であり、センサーやアクチュエーターとの無線通信、関連のモジュール等を併用することになる。そうした無線通信を行う際に最適な方式の1つとして、IEEE802.15.4規格がある。
 IEEE802.15.4規格はワイヤレスセンサーネットワークの構築を目的に策定された国際規格であり、低消費電力でネットワークに多数の機器を接続するための仕様を定義している。スマートグリッド/CEMSでは、IEEE802.15.4を採用した無線通信システムを編成することにより、センサーやアクチュエーターとの通信に最適化された機器編成が可能となる。IEEE1888ならびに、この規格の開発には日本の東大グリーンICTプロジェクトが関与している。

【次ページ】完全SAVS化の実現を目指す「スマートシティはこだて」
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