- 2010/07/27 掲載
【民主党藤末氏コラム】菅総理は国家戦略室をどう使うべきか!(2/3)
国家戦略室とは?
さて、国家戦略室は、2009年衆議院選挙のマニフェストに「国家戦略局の設置」として書かれ、実際に民主党が政権を奪取し内閣官房に新設した総理の補佐組織である。これは菅総理が2009年は春にイギリスを視察し、イギリス政府のPolicy Unitからヒントを得て創ったものである。国家戦略室の役割は、「内閣の重要政策に関する基本的な方針等のうち内閣総理大臣から特に命ぜられたものに関する企画及び立案並びに総合調整を行う」とされている。
しかしながら、これまでのところ国家戦略室の活動はあまり目立っていない。現在、室員は30人程度であり、一番大きな仕事は「新経済成長戦略」だ。この新成長戦略の「基本方針」は、2009年12月末に公表されたが、なんと作業期間はわずか2週間であった。当時の荒井総理補佐官が担当し、私もいくつかメモを持ち込んだが、やはり急ごしらえの感は否めないものとなった。最終的な新成長戦略は選挙直前の6月18日に閣議決定されたが、各省庁の既存施策を寄せ集めた形になってしました。つまり、大きな枠組みを国家戦略室が示し、それを関係省庁が肉付けするという方法でなく、各省庁が作成した経済政策を取りまとめた形になっている。
国家戦略に必要な「あるべき日本の姿」
私は、まず、国家戦略の柱を決めるべきだと考える。菅総理は、「強い経済、強い財政、強い社会保障」を掲げており、この主張に沿った戦略を構築すべきである。たとえば、小泉総理は「官から民へ」というテーマを掲げて、不完全ながら道路公団民営化や郵政事業民営化に取り組んだが、これは「政権が何をしたいのか」を明確に国民に伝えるという意味が非常に大きかったと見ている。これから菅総理は大きなテーマに沿った戦略を打ち出すべきである。現在、国家戦略室は「内政」と「外政」にグループを分けて政策立案を行おうとしているが、細分化するのは「戦略」とは逆行する。戦略はさまざまな政策を俯瞰することで意味を持つのである。下図は経営戦略の位置づけを描いたものであるが、位置づけは国家戦略も同じである。国としての理念(「強い経済、強い財政、強い社会保障」)があり、それに基づき国家ビジョン(強い経済、強い財政、強い社会保障が実現された時の国のあり方)があり、その国家ビジョンの実現の道筋が「国家戦略」になるのである。
つまり国家戦略は、日本をどのような国にしたいかというビジョンがなければならないのである。そしてビジョンの実現のための道筋が国家戦略であり、国家戦略の具現化されたものが中長期計画になるべきである。そしてその計画に基づき各省庁が事業を進め、それをPDCA(プラン・ドウ・チェック・アクション)で修正していくことが求められる。
ビジョンとは、今までの延長ではダメであり、「どうあるべきか」という意思がなければならない。菅総理は「強い経済、強い財政、強い社会保障」といった考えを示しており、これをより具体化ですれば私は国家ビジョンが描けると考えている。
たとえば、強い経済については、私は、明確な目標として、平均5%の経済成長、一人当たりGDP5万ドル以上、一人当たりGDP世界5位以内、を掲げている(細かいところは数字が合わないが)。名づけるなら「555政策」である。
5%の名目経済成長が実現すれば、税収は年間で2.5兆円、消費税1%に相当する税収が上がる。つまり、5年連続して5%の経済成長が実現できれば消費税5%に相当する10兆円強の税収増を確保することができるのである。10兆円の税収があれば、民主党のマニフェストにある最低7万円/月の年金保証制度の実現(必要予算は6.4兆円。20099年時点の試算)、介護士の給与アップ(1兆円で介護士給与を2倍近くに。藤末試算)などが実現できる。
このように「強い経済、強い財政、強い社会保障」という目標の具体化を図らなければならない。誰もが聞いて具体的に理解できるビジョンにしなければならい。
さて、ビジョンが決まると戦略も決まる。戦略は「あるべき姿と現状のギャップを埋める方法」を定めたものと考えることができる。たとえば、「5%の名目成長」を実現するためには、インフレ率が2%は必要であろうし、また、実質成長も3%以上必要であり、そのための投資促進や生産性の向上、労働力の増加などを進めることが必要となろう。それをどんどん細かく落とし込むことによる「戦略」が生まれ、その戦略を実行するための「計画」ができあがるのである。
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