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- 2009/08/07 掲載
国内企業の中小企業を一体誰が救うのか?:中堅・中小企業市場の解体新書(1)(2/2)
パソコンやインターネットは揃っていても、ビジネスに直結せず
実際にこのようにセグメント分けしたわけだが、実際の中堅・中小企業は現在、IT投資をどのように考えているのだろうか。少し情報は古いが、2007年末に調査し、2008年に発表した、経済産業省の調査(日本商工会議所調査、ノークリサーチ設計・分析)から、「中小企業のIT活用に関する実態調査」をご紹介しよう(図2)。図2 中小企業のIT活用に関する実態(導入率) |
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この調査は、従業員300人未満の企業1856社を対象にした調査で、その結果にはいくつかの興味深い点がある。まずIT導入率をみてみると、パソコンは94.5%で、その約9割はブロードバンド環境で利用されていることがわかる。オフィス系のソフトやメールなどの利用率も9割前後と高い。セキュリティソフトの導入率も8割を超えている。財務などの基幹業務でも半数はITで活用されている状態だ(ただし従業員20人未満になると3割以下にまで激減する)。
このように企業の規模に関わらず、パソコンの設置やインターネットの導入率についてはある程度行き渡り感が見えている。問題は、こうしたインフラがどのように活用されているかにある。経営課題とITの利活用という観点でみると、経営課題の解決にITが十分に生かされているとは言えない結果が出ている。
IT導入率の高さに比べ、経営に対する貢献度の低い実態の原因は何か?その主なポイントは以下の3点に集約される。
1.ITは経営戦略のために使われていない(主に基幹業務)
残念ながら、かつてのオフコンに経営戦略を実現するシステムを期待していた企業はほとんどいないということだ。つまりOA(オフィスオートメーション=間接部門の経費削減)が目的であったからだ。その流れは、現在の業務システムにも色濃く受け継がれており、企業側も基幹業務のシステムは「伝票発行」という前時代的な感覚で、未だに活用されている。ERPの多くは、単なる業務パッケージ連携の域を超えていないのが実情だ。
2.企業の経営のコアビジネスに対応していない
企業のコアビジネス(いわゆる飯のタネ)は、企業にとってもっとも重要な要素であり、そこになぜか「IT」が密接に絡んでいないことが多い。それはなぜか?企業側でITは「データの処理」が主目的であり、そのデータ処理は、エッセンシャルな企業のコアビジネスと直接連携することが少なく、「切り離されて」存在しているか別の目的で動いているからだ。ノークリサーチでいう「戦略系アプリケーション」といわれる、CRMやSFAなどの顧客管理系の売上にひも付く利用方法はほとんど顕在化していない。
3.ITの提案業者が「提案」できない
1の問題、2の問題の背景にある問題とも言えるが、中堅・中小企業向けIT製品は「販売店任せ」に陥っている。その場合、ITの提案内容を販売店に委ねることになる。しかし、当の販売店は、基本的には製品やパッケージ売りであり、コンサルティングなどの付加価値はほとんど有していない。そのため、安くて便利になった「IT」をツールとして提案は出来ても、「経営に響く提案は苦手」である。ユーザ企業も、ITリテラシが貧弱なことから、経営戦略的な活用方法が見出せないでいる。
話をまとめると、3~4年前までの好調な経済環境で、しかも低価格になったITを、多くの中堅・中小企業はすでに導入済みであり、道具としてのITは揃っている状態だ。だが、肝心のITを経営に生かすためにどうすべきか、まさに現在の劣悪な経済環境でITを経営に役立たせる方法がないかを模索している。実は多くの中小企業は、こうした課題への解決策を販売店に求めている。なぜならユーザ企業には人材もスキルも、そして「お金」もないからだ。一方で販売店にとっては「お金のない企業へは十分な提案ができない」ため、中堅・中小企業でも上位企業をターゲットにせざるを得ない。多くの販売店やベンダはそのために年商100億円以上(ノークリサーチの定義で言えば中堅Mクラス)の企業に集中し、競争が激化する傾向にあるのだ。
勢い50億円以下の企業(中小企業クラス及び小規模・零細企業も含む)は「放置」されており、安くて手離れのよい、付加価値の少ない商材を売りつけられるだけである。SaaSなどで提供される「経営に直接響かないソフト」の廉価版の押し付けになってしまう。中小企業であっても、「安ければ買い」ではなく、安いながらも「経営や企業にとって、効果が目に見える」ことがなければ意味はない。現在のSaaSのお祭り騒ぎがいかに実態から乖離しているかは容易に理解できる。
調査結果の詳細については日本商工会議所のホームページにある調査結果(PDF)を参照して頂きたい。
中堅・中小企業、特に中小企業規模でこれから進むべき道、心掛けることは何だろうか。答えは簡単ではないが、まずすべきことは「ITのエコ化」である。すでに十分に道具として活用できるITのインフラは導入されているはずなので、無駄な投資を新たにする前に、サーバやクライアントPC、アプリケーションは果たして当初の思惑通りに機能しているか、または使いこなしていない機能や部門、人はいないかを検証してみるべきだろう。いわば「IT資産の有効活用のためのエコ化診断」を行うのである。
一例を挙げると、グループウェアなら、特定の機能(掲示板とかスケジューラだけ)しか使っていないのではないかということだ。この場合、グループウェアをうまく使えば、営業情報の共有やナレッジ活用など今まで気付かなかった使い方で、生産性を高めることができたり、付加価値を産む利用方法が見つかる可能性が高い。資産の有効活用は、何も経費削減だけでなく、「遊休資産の効果的な活用」が、企業全体のエコ化を進め、大きな投資することなく、経営に響く活用が可能となる(これはITだけでなく、人材などでも同様だが)。
現実のIT投資でいえば「お金がない」「担当する人材がいない(リテラシが低い)」「誰も頼る人・企業がいない(提案されない)」などの、完全に放置された状態の小規模・零細企業だが、誰がこの400万社の原生林を「宝の山」に変えることができるのだろうか。企業はどうすれば「経営に役立つITにすることができるのか」この2つの命題に沿って、次回以降、製品・市場、ベンダ、ユーザ企業の事例分析など3つの側面から分析をしていこう。
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