• 2024/11/24 掲載

実は「空中分解寸前だった」国民民主党、「103万円の壁」の「次」は何か?(2/2)

連載:小倉健一の最新ビジネストレンド

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日本にある3つの主要な労働組合と各政党との関係

 高沢氏のいう『源流』とは、国民民主の前身である希望の党でも、民進党でも、民主党でもなく、民社党のことである。ここで民社党から国民民主に至る系譜を説明しておこう。

 日本の労働組合には、大きく3つの塊がある。共産党系、自治労や日教組など公務員の組合である総評、そして民間労組の集まりである同盟である。

 このうち、共産系や総評はかなりの左派・護憲勢力であるのに対して、同盟は中道右派に位置する。労働組合というとそのまま社会主義者の集まりのようなイメージを持つ人も多いかもしれないが、ほとんどの民間労組のオフィスには日の丸が掲げられており、過去にはPKO協力法案や安保法制に賛成している。この3つの労働組合のうち、共産系と同盟系の組合は、同じ会社の中で激しく対立してきた歴史がある。

 革命を掲げ、会社の状況などお構いなしに本部からの指示を受けて団体交渉に臨む共産系労働組合と、会社の発展なくして労働者の給料アップや待遇改善もありえないと考える同盟系労働組合では、話が合うはずもない。

 現在も続く国民民主の共産党アレルギーは、この系譜からも確認できるだろう。こうした組合の性格の違いを念頭に、「提案」型の政党であることを先の高沢区議は強調しているのである。当時を知る民社党系の旧都議会議員はこう述べる。

「ソ連からお金をもらっているのが社会党。米国からお金をもらっているのが自民党。私たち民社党こそが、日本人による日本人のための政党だと自負していた。小さくても国民生活のための一番の政策を自民に提示してきた」

 このように、同盟は共産系とは絶対に組めないものの、民間と公務員ですみ分けがなされていたことから、労働者のための大きな塊をつくったのが「連合」である。

 そして、この連合と鳩山由紀夫氏の大きな出資によりつくられたのが民主党だ。3年3カ月の民主党政権を経て、安倍晋三元首相に「悪夢の民主党政権」と繰り返しののしられ、党勢は悪化の一途をたどった。

「民主党を引き継いだ民進党には有権者の支持があまり集まらず、選挙にもなかなか勝てない状態が続いていた。その状況を打破すべく、岡田克也民進党代表は急速に共産党との距離を縮めていった。

 後に代表となる前原誠司氏はそのことを非常に危惧していた。前原氏は就任後、民進党を解体し、小池百合子東京都知事と組んで希望の党を結成し、紆余曲折を経て国民民主党が誕生した。立民と合流しようとしてできなかった理由はいくつかあるが、1つには共産党との距離感が影響したと思う」(先の国民民主関係者)

 民主党は日本維新の会の一部と合流する形で民進党を作った。党名を考える際、安保法制を安倍政権が進めていた時期であったため、「立憲民主党」という党名も検討されたことがあった。しかし、民間労組からは「憲(法)」という言葉を党名に使うのは護憲勢力や左派のイメージが強くなるとの反対があり、実現することはなかったという。

 先に述べた国民民主の系譜に触れたので理解しやすいと思うが、選挙での敗北を重ねる中で、同盟系の支持母体は国民民主に、総評系の支持母体は立民に分かれた。しかし、単純に分かれたのではなく、圧倒的に支持率で勝る立民に、本来政策的にも思想信条としても国民民主に所属するべき議員たちが次々と立民に入党していくようになった。

あらゆる方面から「オモチャにされてきた」

 孤立を深める国民民主に対して、「友党」と言いながら選挙区に平然と刺客を送り込んでくる立民。国民民主幹事長である榛葉賀津也氏の選挙区に、立民は徳川家広氏を擁立されたこともあった。

 結果は榛葉氏の辛勝に終わったが、国民民主は自公の法案には賛成することが多い一方で、立民の誘いや共闘には一切乗らないという確固たる姿勢ができあがった。

 また一緒にやろうと言いながら、支持母体もろともに飲み込みを図る自民党。企業団体の支援は受けないという一方で「民間労組は組める」という矛盾だらけの秋波を送ってくる維新。

 「茂木敏充さんには怖くて聞けないようなことも玉木さんなら気軽に聞けちゃう」などと放送中に玉木代表を軽く扱っていることを公言するメディア。あらゆる方面からオモチャにされる政党。これが今回の衆院選前夜の国民民主、暗黒時代の実相である。

 103万円の壁の見直しで、企業、労働者から大きな喝采を受けた国民民主。現状の支持率を維持できれば来夏の参院選では8議席以上の比例議席が獲得できる見込みだ。国民民主を支援する労働組合関係者はこう期待を込める。

「去っていた人々を恨むより、厳しい中で残ってくれた仲間を大事にしていきたい。国民民主は一般的な現役世代にとって有益な政策をこれからも打ち出していくべきだ。私たち民間労組は経営者と対決するというよりは、対等な立場で生産性三原則のもと、会社の発展も考慮し活動を続けてきた。時代が大きく変化してきている中にあって、いまや経団連を中心とした経営側は与党(自公)、労働組合は野党との考えではなく、国益と日本の成長と雇用拡大および就労環境の改善をともに考える段階に入ってきているのではないか。国民民主党には103万円の壁とガソリン減税に続き、家計支援施策のもう一つの柱である再エネ賦課金の徴収停止および原子力発電所の再稼働で、家計を温めていくべきだ」」

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