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- 2024/01/26 掲載
実は意外と“難易度高め”? 生成AI活用で“しくじり回避”に必須の「6ステップ」
すでに「2割」が生成AI利用に着手
OpenAIが2022年11月に公開した生成AIチャットボット「ChatGPT」のインパクトの大きさは、その後のユーザー数の推移からも明らかだ。わずか5日後には100万、2023年1月には1億を突破したと報じられたことは記憶に新しい。同時に、ビジネスにおける生成AIの有効性の理解も急速に広がった。ガートナーが経営幹部を対象に実施した調査によると、2023年4月時点ですでに68%が「生成AIはメリットがリスクを上回る」と回答し、2023年11月の最新の調査では同様の意見が78%と10ポイントも増えた。
ガートナー バイス プレジデント,アナリストのスベトラーナ・シキュラー氏によると、生成AIの企業での活用も、4月の調査段階で15%が試験運用、4%が本格利用に乗り出すなど、すでに本格化しているという。
生成AIは、学習したデータをもとに新たなデータを生み出す点で過去のAIと決定的に異なる。「その点について、『進化』や『革命』、『確率論』など、捉え方は現時点でさまざまです。ただし、確実に言えるのは、生成AIのクリエイティビティは業務の効率や品質の向上に確実に寄与するということです」とシキュラー氏は説明する。
多様な応用を見込めることも、生成AIブームの追い風となっている。自然言語処理によるテキスト生成や対話、コンピュータービジョンでのテキストからの画像生成や画像分類などをベースに、応用としてのソフトウェア開発でのコード解読や補完、薬の分子構造の学習による創薬での活用もすでに始まっている。
もっとも、「生成AIは今がハイプサイクルのピーク期。本格活用を検討中なら今後の幻滅期への対応にすぐにでも着手すべきです」とシキュラー氏は指摘する。
実際、生成AIには課題も少なくない。オープンな生成AIは、ユーザーから得られたデータも学習するため、安易な利用は機密データ漏えいの原因になる。また、学習データ不足の状況では、もっともらしいが誤った回答を示すこともある。
加えて、AI内でのデータ処理が不透明で、回答の根拠が得にくいことから、意思決定において活用しにくいという課題があるほか、生成AIの不正利用のリスクも指摘されている。
生成AI活用「6つ」のステップとは
こうした課題に加えて、生成AIの利用は多くの企業にとって初めてという問題も存在する。シキュラー氏は「当然、適切に扱うための相応の学習が必要となります」とアドバイスを送った上で、その一助として、ガートナーが作成した生成AI活用のガイドラインを紹介した。
同ガイドラインは、生成AIの継続的な調査結果に基づきガートナーが取りまとめたもので、中身は次の6つのステップからなる。
第1のステップは「価値の高いユースケースの特定」だ。AIは応用が利くだけに社内活用のアイデアがいくつも寄せられるはずだ。それらを「価値の大小」「技術的な可能性の高低」の2軸のマトリクス上に配置し、企業として最優先に取り組むべき施策を見極める。その実施にあたっては、ガートナーが用意するフレームワーク「ユースケース・プリズム」が大いに活用できるという。
そして第2のステップは、「オーナーシップの割り当てと評価指標の特定」である。ビジネス施策として取り組む以上、目標とオーナーシップ(責任者)の明確化は不可欠だ。加えて、目標達成に向けたAIの価値の評価指標の準備も当然、忘れてはならない(図1)。
「責任者はビジネス目標に関する最高責任者であり、開発者の生産性向上であればCIO、コスト削減であればCFOとなります。その上で、社内に組織したテクノロジーの精鋭チームと連携して施策を推し進めることになりますが、その中で『付加価値創出のためのタスクに費やした時間』『コスト減少率』などの具体的な指標を基に、活動を評価していきます」(シキュラー氏) 【次ページ】自社でのモデル学習は「要注意」のワケ
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