大阪ガスの事業拠点は約50カ所、従業員が6000人ほど。外で働く人も多く、外勤者用に携帯電話を約4000台利用している。固定電話にいたっては1万2000台もあり、すべての拠点にPBXという回線交換機を置いていたため、現状のシステムの運用には膨大なコストがかかっていた。そこでIP化を図り、経費削減を図る一方、電話の利便性を向上させようと取り組んでいる。

「固定電話のIP化だけでなく、いつでも、どこでもアクセスできるユビキタス性を取り入れようと考えました。固定電話をそのままIP電話へ置き替えると、携帯、内線などを含め1人で2つも3つも番号を持ってしまいます。そこで、それをすべて一本化しようと、無線LANとFOMAが利用できるNTTドコモのデュアル端末を選びました。」

　このシステムは2005年の春から展開していて、2005年10月には、本社ビルの約1000人がIP電話を利用するまでに至った。そして2005年度末には全社展開を完了し、6000台の無線IP電話を含んだ1万台のIP電話システムが構築された。システム構成としては、2カ所の拠点にSIPサーバ（IP電話で使う音声などを扱うサーバ）を置き、拠点間は光ファイバーなどで結んでいる。各拠点にはルーターを置き、無線のアクセスポイントを用意した。

「電話を受けるときは、以前から使っていた電話番号を変えたくないので、従来のアナログ回線から受けます。逆に、電話をかけるときには光回線のサービス（IP網）を利用する仕組みになります。そうすることで、電話番号の一元化ができ、どの事務所にいても同じ番号にかければ電話がつながることになります。」

　携帯電話と固定電話とが統合したメリットは他にもある。相手の携帯電話にかけても、相手が社内にいればシステムによって自動的に内線電話扱いになり、会社を出ると携帯扱いになるため、コスト的に格段に違うという。

　平山氏は、IP電話システム構築のさらなるメリットを説明してくれた。

「今回の電話システムでは、その電話番号の人が今どこにいるかもわかる仕組みになっています。電話をかけたい相手が電話中かどうかなど、パソコン上で見られるようになっていますから、ロケーションや相手の状況をわかったうえで電話することができます。また、今後はパソコンだけでなく、社内LANを使って無線IP/FOMA端末ですべての機能を利用できるようにしたいと考えています。電話としての機能だけでなく、業務アプリケーションも無線IP/FOMA端末で利用できるプロジェクトも進んでいます。」

　大阪ガスは、今後も最先端のIT活用を通じた業務改革により、経営基盤のさらなる強化を進めていく。


■データ
大阪ガス
代表者名　代表取締役社長　芝野博文
設立年月日　1897年4月10日　事業開始　1905年10月19日
資本金　1321億6666万円
売上高　7227億5500万円（単独・2005年3月期）
本社所在地　〒541-0046　大阪市中央区平野町4－1－2
従業員総数　5,570名（理事・嘱託含む、出向除く）（2005年3月末現在）
ホームページ　http://www.osakagas.co.jp/index.html

■事業内容：
・ガスの製造、供給および販売
・ガス機器の販売およびこれに関連する建設工事
・ガス内管工事の受注


今回の記事は、弊社刊行「日本の情報システムリーダー50人」（2006年4月発行）に掲載されております。 その他の企業の記事は、同書でご覧頂けます。