- 2007/03/23 掲載
【CIOインタビュー】 他業界も注目する大阪ガスのIT戦略
経営革新を支える日本のCIO
大阪ガス 理事 情報通信部長 平山 輝氏 |
平山 輝氏
(Hikaru Hirayama)
大阪ガス
理事 情報通信部長
1997年入社。
研究開発部応用研究所情報応用技術開発チームマネジャー、商品開発部 既築リニューアルチームマネジャー、営業技術部 リビング技術チームマネジャー、リビング開発部 商品開発チームマネジャー、情報通信部 部長を経て、2005年6月より現職。
大阪、京都を中心に近畿圏2府4県へガスを供給する大阪ガス。地域に根ざしたライフラインとして、顧客満足度をより高めるために日夜努力している。2005年に創業100年を迎え、10月には2006年から2008年までの中期計画「Design2008」を発表し、「都市ガス事業の収益力を強化」「グループ総合力の最大化」「マルチエネルギー事業者への発展」を目指した事業展開を図っている。安定した売上規模のなかで、日々業務改革を行い、経常利益を向上させている優良企業である。
大阪ガスでITプロジェクトを担うのが情報通信部であり、そのキーパーソンが情報通信部長の平山輝氏だ。大阪ガスは、さまざまなIT戦略を練るなかで、間接業務のシェアードサービス化やICカードによるキャッシュレス化、セキュリティ向上などを実現している。さらに今後は、「エネルギー情報サービス」と「ユビキタスオフィス」の実現で、さらに強い経営基盤の構築を目指している。
間接業務のシェアードサービスとは、複数の組織で行っている業務を、個々の組織から切り離して独立させ、グループ企業で共有して集中・統合したサービス提供を受けることをいう。それにより経営の効率化を図る。大阪ガスでは手始めに、人事/経理で行っていた業務を各自のパソコンから直接入力する「セルフエントリー」式へと変更した。
「住所変更など総務人事に関わるものや、保険の手続き、交通費の請求などをセルフエントリーできるウェブページを作りました。人事への申請、経理関係、人材育成、勤務管理といったものを個々の社員が自分でやることで、今までかかっていたコストを約40%削減できました。また、セルフエントリーシステムの導入にあわせて、事業所ごとで行っていた総務人事業務を本社部門に集約したことで、仕事の量としては約100人分減りました。」と平山氏はその効果を語る。
これらのプロジェクトを支えるのは、50近くある事業所をつなぐネットワークだ。事業所間では、光ファイバーや電送速度の速い通信経路を確保している。社員1人につき1台の端末を配備したことも、セルフエントリーシステムの導入を可能とした。
大阪ガスが取り組んだ「ICカードプロジェクト」は、クレジットカード会社のJCB、システム構築を担当する独立系ITベンダーのTIS、大阪ガスの情報子会社のオージス総研、ICカードを手がける大日本印刷、カードの管理を行う大阪ガスの子会社のオージックに加え、社内の関連部門も情報通信部、人事部、総務部、経理税務センターと大規模なものになった。
今回導入したICカードは、直接接触型のICチップと、電子マネーのエディやスイカ、イコカで使われている非接触型のフェリカを採用したハイブリット仕様。社員証を兼ねたこのカードには、身分証明、コンピュータセキュリティ、物理的な入退室管理、クレジット決済、食堂などがキャッシュレスで利用できる機能を盛り込んだ。
セキュリティの強化という点では、パソコンをパスワードによる管理に加え、カードリーダーへICカードを入れないと使えない仕様へと変えた。また、食堂や自販機をキャッシュレス化したり、交通費などをクレジット決済することで経費精算にも使用でき、人事・労務管理、事務手続き、経費処理の効率化、低コスト化を実現した。
「なぜ、クレジットカードによる決済にしたかですが、お金の決済を弊社の人間が関わるとなると、そのシステムを作らなくてはいけないですし、部署ごとに経理担当を置くとコストも手間もかかります。また、交通費の精算にしても、振り込む手続きが必要ですから、それなら決裁に関わる業務を全部クレジット会社に任せてしまおうと考えました。これで、より一層業務の効率化が図れました」と平山氏は語る。
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