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企業における
ジェネレーティブAI(生成AI) の活用模索が本格化している。小売業界では、アマゾンやウォルマートなど業界最大手が積極的な姿勢を示しており、他の業界に先駆け、生成AIが普及する可能性が見えている。小売業界で加速しつつある生成AI活用、その最新動向を追ってみたい。
アクティブユーザーが史上最短で1億人を突破したChatGPTに加え、Stable DiffusionやMidjourneyなど画像生成AIの人気具合を鑑みると、一般消費者の間ではかなり広範囲に生成AIが浸透したといえるだろう。
一方、生成AIに関しては、不正確な情報を示したり、データ漏えいリスクなどの問題が報告されており、企業の間では同テクノロジーの利用に慎重な姿勢を取るところが少なくない。
しかし、これらの課題に対する
ソリューション の開発が急ピッチで進んでおり、試験的な取り組みを実行する企業は増えつつある。業界別に見ると、リテール分野で顕著な動きが観察される。
世界最大のスーパーチェーン、ウォルマートもGPT-4活用へ
世界最大のスーパーチェーン、ウォルマートがGPT-4を活用した取り組みを始めているという事実は、小売業界のAI動向に影響を及ぼしている。
ウォルマートによる生成AI関連の取り組みを、Venture Beatの4月4日の
記事 が詳しく伝えている。
ウォルマート・グローバルテックの新興テック部門バイスプレジデント、デザレ・ゴスビー氏はVenture Beatの取材で、ウォルマートではさまざまなテクノロジー活用の取り組みを進めてきたが、現在その一環で、生成AIの導入を模索していることを明らかにした。また、生成AIは、モバイルシフトのときと同様に、大きな転換点になると位置づけているという。
ゴスビー氏は、OpenAIのGPT-4を活用し、これまでに実施してきた他のAI関連の取り組みの強化に着手していると述べている。たとえば、チャット形式でショッピングを可能にするアプリケーション「
Text to Shop 」の強化を進める方針だ。これは、モバイル上で機能するチャットアプリで、「I need milk」などのメッセージを入力すると、選択肢を表示したり、購入カートに入れてくれる。
Text to Shopは現時点で、シンプルなメッセージにしか対応できないが、GPT-4と統合することで、大きく進化することが見込まれる。ゴスビー氏の言葉を借りると、GPT-4により、チャットボットは「タスクベース」から「プロブレムベース」に進化するということだ。プロブレムベースになることで、チャットボットはユーザーの課題を認識し、その課題に対して、個別のソリューションを提示できるようになる。
ゴスビー氏は「(チャットボットが)あなたの息子が夏にキャンプに行くことになっており、アレルギーがあることを認識している場合、アレルギー薬をカートに追加する」などのことが可能になると説明している。
現在、GPT-4を中心に活用を模索しているが、GPT-4に限定しておらず、他の大規模言語モデルによる可能性も探る方針とのこと。
アマゾン、リテール分野における生成AI活用に注力
リテール分野で大きな影響を持ち、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)事業を傘下に持つアマゾンはもちろん生成AI活用に積極的な姿勢を示している。
アマゾンは、リテール分野における生成AIの可能性を模索していることを、4月21日に発表された株主向けの書簡で
明らかにした 。
同社のCEOで、AWS出身のアンディ・ジェシー氏は、AWS事業は現在「逆風」に直面しているが、広告やAI分野で大きな成長が見込まれ、特に生成AIや大規模言語モデル(LLM)がリテール分野を根本的に変える可能性が高く、この分野への大型投資が将来大きなリターンになることは間違いないとする旨の発言を行ったという。
またこの書簡の中でジェシーCEOは、同社が25年にわたりパーソナライズされたプロダクトレコメンド、フルフィルメントセンターにおける経路、Prime Airドローン、Alexa、AWSなどに機械学習を応用してきたことに触れつつ、大規模言語モデルに特化した取り組みも実施していると発言、実際に生成AI分野での取り組みに注力していることを強調した。
また、この技術を自社で独占するのではなく、AWSを通じて提供し、小売業界やブランド企業が幅広く利用できるようにしているとも述べている。
【次ページ】アマゾンが発表した生成AIプラットフォーム
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