- 2025/04/17 掲載
情報BOX: パウエルFRB議長の講演要旨
<今後の経済データ>
第1・四半期国内総生産(GDP)の速報値が数週間後に発表される。これまでのデータから、第1・四半期の成長率は昨年に比べ鈍化したことが示唆されている。自動車販売は好調だったが、全体的な消費者支出は控えめな伸びにとどまったようだ。さらに、第1・四半期には企業が関税を見越して輸入を前倒ししたことがGDP成長の重しになると予想される。
家計調査と企業調査では、主に貿易政策への懸念を反映して、景況感の急激な低下と先行き不確実性の高まりが報告されている。外部の通期見通しは下方修正されつつあるものの、依然としてプラス成長を示唆している。家計と企業がこれらの動向を消化しつつある中、われわれは今後のデータを注視している。
<雇用>
労働市場では、今年最初の3カ月間で非農業部門雇用者数は月平均15万人増加した。雇用の伸びは昨年に比べて鈍化しているが、解雇が低水準にあることと労働力人口の伸び鈍化により、失業率は低水準で安定している。
一方、求人倍率は1倍をわずかに上回り、パンデミック(世界的な大流行)前の水準に近づいた。賃金の伸びは引き続き緩やかだが、依然としてインフレ率を上回っている。総じて、労働市場は堅調で概ね均衡しており、インフレ圧力の大きな要因にはなっていないと考えられる。
<物価安定>
インフレ率は2022年半ばのパンデミック時の高水準から大幅に低下したが、高インフレ抑制の取り組みにしばしば伴うような失業率の上昇は見られなかった。インフレ鎮静化は段階的に前進しているが、最近の指標はFRBの目標である2%を上回っている。先週発表されたデータに基づく推計では、3月までの12カ月間で個人消費支出(PCE)価格指数は2.3%上昇、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアPCE価格は2.6%上昇したとみられる。
<トランプ政権の政策>
今後、新政権は貿易、移民、財政政策、規制という4つの分野において、大幅な政策変更を実施中だ。これらの政策は現在も発展途上であり、経済への影響は依然として極めて不透明だ。
これまでに発表された関税引き上げの水準は予想を大幅に上回った。経済への影響も同様に大きく、インフレ率の上昇や成長率の鈍化などが見込まれる。短期的なインフレ期待に関する調査指標と市場ベースの指標はともに大幅に上昇しており、調査参加者は関税を懸念している。
ただ長期的なインフレ期待に関する調査指標は、概ね安定しているように見える。物価連動国債(TIPS)と通常の国債の利回り差で、期待インフレを示すブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は引き続き2%近辺で推移している。
<金融政策>
政権の政策変更への理解が深まるにつれ、経済、ひいては金融政策への影響をより深く理解できるようになるだろう。関税は、少なくとも一時的なインフレ率の上昇を引き起こす可能性が非常に高い。インフレはより持続的になる可能性もある。こうした結果を回避できるかどうかは、影響の大きさ、それが価格に完全に転嫁されるまでにどれだけの時間がかかるか、そして最終的には長期的なインフレ期待をしっかりと安定させられるかどうかにかかっている。
FRBの義務は、長期的なインフレ期待をしっかりと安定させ、一時的な物価上昇が継続的なインフレ問題とならないようにすることだ。この義務を果たすにあたり、物価安定なしには全国民に恩恵をもたらす長期にわたる力強い労働市場環境は実現できないことを念頭に置き、最大雇用と物価安定という責務のバランスを取っていく。
二つの責務が相反するという困難な状況に陥る可能性もある。そのような事態に陥った場合、経済がそれぞれの目標からどれほど遠いか、そしてそれぞれの目標のギャップが解消されるまでの期間がどの程度異なる可能性があるかを検討する。
<結び>
当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、より明確な状況が明らかになるまで待つことができる状況にある。私たちは引き続き、入手可能なデータ、変化する見通し、そしてリスクのバランスを分析していく。失業率やインフレ率の上昇は、地域社会、家庭、そして企業にとって損害を与え、痛みを伴うものであることを理解している。FRBは、最大雇用と物価安定という目標を達成するために、引き続き全力を尽くしていく。
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