新規顧客は
すべてWebページ経由で

　検索システムと同時に進めていたのが、自社Webページの整備だった。最初のうち、顧客や知り合いの若手経営者らからわかりにくい箇所を厳しく指摘されたというが、そのおかげでWebページのコツが見えてきた。
「不況の時、こちらから飛び込みで営業をしたのですが、それでは足元を見られるだけです。お客様がやってきてくれるよう、Webページで自社を丁寧にアピールすることが重要だと気付きました。アピールといっても、大げさな表現、嘘は一切書きません。そんなことをしているWebページもたくさんありますが、それでは結局人を引きつけられないんです。」
　中田製作所のWebページでは、同社の技術が丁寧に説明されており、見るものが見ればそのすごさがわかる。現在、新規顧客のすべてはWebページ経由だという。
「新規のお客様も、定期的に注文をいただける方に限らせていただいています。そうしないと工程が崩れてほかのお客様に迷惑をかけてしまうんです。」

技術屋の情熱が
8μmの穴を開けた

　中田製作所では、「技術力＝スピード」だという。これは、品質よりもスピードということではない。品質が高いのは当たり前、その上でのスピードなのだ。前述の検索システムには、過去の担当者名と時間が入力されているため、担当者間の優劣が一目瞭然、それが技を磨くモティベーションともなっている。そして、同社では業界に先駆けて直径8μmの穴加工や0.1mmの溝加工といった技術を確立してきた。これを実現したものは何だったのか。

　「信じていただけないかもしれませんが、情熱だけなんです。0.1mmの溝加工の時、私も含めて3人がこれにかかり切りで取り組みました。何度も3人で話し合い、挑戦。失敗したら原因を分析。参加している技術者の負担を減らすため、会社全体のシフトも変えました。仕事が楽しくてやりがいがあれば、誰でも喜んでやります。ですから、トップが『仕事がイヤになる原因』を削除してやればいいんです。この場合は、会社の全員を動かしてシフトを変えるというのが方法でした。微細加工の成功も、会社の全員でやり遂げたことです。また、顧客の信頼を裏切らないこと、失敗したり間違いだと思ったら正直にいうこと、それを社員に徹底してもらっています。いえる環境を作るのは、経営者の役割です。」

　今後の会社のあり方についてうかがった。


業界に先駆けた直径8μmの穴加工

「今は、会社の規模を大きくするつもりはありませんし、人も増やしません。今いる人間で、売上を倍にできないかと思います。それで10％合理化できたら、5～8％はお客様に還元しよう。こういう風にできれば結果的にみんなが楽できます。逆に、人数を増やすだけで合理化しなければ、会社は簡単に弱くなります。会社のあるべき姿というのは難しいですが、私が考えるのはみんながどう幸せに生きるかということだけです。安定した職場で、いつも忙しく、そして何か新しいことにチャレンジする。それはいつもでなくてもいいんですよ。1ヶ月1回でも、1年に1回でもいいから、社員がチャレンジできる風土を作っていきたいですね。」
（取材・文：山路達也）