経済評論家 加谷 珪一
加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。
菅義偉首相の「最終的には生活保護がある」という発言が大きな波紋を呼んだ。生活保護が社会保障における最後の砦というのはその通りなのだが、この発言は定額給付金の再支給を否定する文脈で出てきたものあり、国民の怒りを買ってしまったようだ。現実問題として生活保護を受けるのはそう簡単ではないことを多くの国民は知っており、そうであるがゆえに、発言には大きな批判が集まったと考えられる。残念なことに日本の社会保障制度は、先進諸外国と比較するとかなり貧弱であり、社会のセーフティネットとして十分に機能していない。ポストコロナ社会へのシフトで格差拡大がさらに進むという予想もある中、日本の社会保障はどうあるべきなのか、そろそろ抜本的な再検討が必要だろう。
菅政権が地方銀行の再編を打ち出したことで、経営統合など合理化を図る動きが再び活発になっている。政権発足からわずか2カ月で、東和銀行とSBIホールディングスの資本提携、群馬銀行の地銀連合への参画、りそなホールディングスによる関西みらいフィナンシャルグループの完全子会社化など、立て続けに提携の発表が行われた。日本は今後、急ピッチで人口が減少することから、地域商圏の多くが消滅する可能性が高まっている。地銀の数は今の半分にならないと生き残れないとの指摘もあり、再編はほぼ必至と言って良い。このコラムでは、3回連続で地域ごとに銀行再編の行方について考えていく。第1回目は、地銀全体をとりまく全体の状況についてである。