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現代の企業がビジネスで成功を収める1つの条件として、一人ひとりのスキルや強みといった多様性が重視されるようになりました。そこで注目を集めているのが人的資本経営です。海外の先進的な企業をはじめ、野村再生工場と言われるほどの手腕を発揮した野村克也氏なども人的資本経営の基本を実践し、成功を収めています。一方、日本企業は従来の新卒一括採用・終身雇用・年功序列といった日本的経営からの転換が図られていません。人的資本経営はなぜ重要で、どう取り入れるべきなのでしょうか。野村克也氏やGAFAMの事例を紹介しながら解説します。
野村克也氏に学ぶ、成果を上げる「リーダーの条件」
スポーツ界で「名将」と称される人たちが、企業の管理職になったら……私は、きっと優れた成果を上げるだろうと思います。特に「
人的資本経営」が注目されている昨今、マネジメントは人材の管理から、「個人の特性や能力を育て、発揮させる」ことへと変わってきています。管理職の仕事はますますプロスポーツの監督のようになっていくはずです。
人的資本を生かす監督の例を挙げるならば、私がすぐに思い浮かぶのはプロ野球の野村克也さんです。実績は言うまでもなく、その考え方や言葉にも素晴らしいマネジメントのヒントがあふれています。たとえば、過去に放送されたNHKの番組の中で野村さんは、監督の大事な仕事を次のように語っていました。
「見つける、育てる、生かす、じゃないの。9つのポジションで色々な条件があるから、その条件に合うか合わないか見つけるのも監督の仕事。人間の良いところはどんな可能性があるのか、その可能性を引き出し、見つけられること。(選手が)持って生まれたものだから、それを発揮したらいい。そういうのを見抜いてやるのも監督の手腕の1つ」
実際に野村さんは、他球団で戦力外になった選手や、あまり活躍できていなかった選手であってもその秘めた価値を発見し、チームの中で発揮させました。その慧眼と手腕をもって「野村再生工場」とも言われていたことは皆さんもきっとご存じでしょう。
そんなマネジメントのアプローチは、現代企業の「人的資本経営」にも非常によくマッチすると思います。現代企業で働く人にとって、自分の「強み探し」はとても深刻な問題です。むしろダメなところばかり気になって、自信を持てない人が大勢います。
これは若手に限った話ではありません。大企業に勤める40代以上のベテランであっても、「会社を一歩出たら自分は何者なのか」「自分自身の価値とは何なのか」「このままでいいのか」とキャリアに悩むケースは決して珍しくありません。
働き方や価値観が多様化する中で、生き方を自由に選べるようになるにつれて、かえって「自分は何者なのか」迷ってしまうのです。そんな人たちを、野村さん流に言えば「(価値を)見つける、育てる、生かす」ことでチームの成果につなげる。それこそがまさに「人的資本経営」の基本ではないでしょうか。
「人的資本」とはどういうことか?
では、皆さんのチームのメンバーは、それぞれ何が強みであり、価値でしょうか。また仕事に限らず、どんなところが良いところなのか、何が好きで、どんな趣味で、何をしたら幸せで、どんな時に笑っているでしょうか。
もしパッと言語化できないとしたら、もっとうまく人的資本を生かせる可能性があるかもしれません。
人的資本とは、人の持つ知識やスキルなど、教育や訓練によって身に付けたり、伸ばすことができるもののことです。こういうと少し堅苦しく、資本という言葉には無機質な響きもあります。しかし私は、メンバーを人的資本として見ることは、要するに「その人はどんな人なのか」をしっかり見ることと同義だと思います。
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