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中小企業および小規模事業者がIT導入に関する費用の一部を補助するIT導入補助金に2022年から「セキュリティ対策推進枠」が新設されました。これにより、情報処理推進機構が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているセキュリティサービスを最大2年間、実質半額で利用することができます。サイバー攻撃のリスクが中小企業にも及びつつある中、こうした補助金を使うことで気軽にセキュリティ対策を強化することができます。本記事では、セキュリティ対策推進枠の概要や申請手順、審査項目などについて詳しく解説します。
「IT導入補助金」「セキュリティ対策推進枠」とは何か
IT導入補助金(令和元年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業)とは、中小企業や小規模事業者などが自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する際、導入・初期費用やパッケージソフトの本体費用などを支援する補助金を言います。
これは、中小企業による生産性向上に向けた取り組みを支援する「中小企業生産性革命推進事業」で用意している補助金(ものづくり補助金・持続化補助金・IT導入補助金・事業承継・引継ぎ補助金)の1つです。生産性の向上に役立つITツールの導入経費の一部を補助してくれます。
このIT導入補助金では以前から、課題解決に必要なITツールの導入経費の一部を補助する「通常枠」と、会計ソフトや受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトに特化しているのに加えてハードウェアの購入費用も補助対象である「デジタル化基盤導入枠」が用意されています。そこに、2022年度からは新たな補助枠として、「セキュリティ対策推進枠」が新設されました。
セキュリティ対策推進枠とは、中小企業や小規模事業者などがサイバー攻撃といったセキュリティリスクを回避するために導入するサービス料金の一部を支援する補助金枠を指します。
昨今はロシアによるウクライナ侵攻といった国際情勢の緊張などからサイバー攻撃のリスクが高まっています。警察庁の
広報資料によると、企業・団体などのランサムウェア被害の報告件数は、2020年下半期に21件、2021年上半期に61件、同年下半期に85件と右肩上がりで増加しています。
こうした中で、IT導入補助金のセキュリティ対策推進枠を活用してもらいながら、中小企業もセキュリティ対策を強化することで、サイバー攻撃によるサプライチェーンの寸断やサービス・物資供給の滞留を防ぎます。ここからは、IT導入補助金のセキュリティ対策推進枠について、補助額や対象事業者といった概要、交付・申請の流れ、交付にかかる審査などを詳しく解説します。
セキュリティ対策推進枠の「補助対象サービス」
セキュリティ対策推進枠で助成が受けられるサービスは、
IT導入支援事業者が提供しており、情報処理推進機構が公表する「
サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されていることが必要です。この上、事務局に事前登録されたサービス利用料が補助対象となり、最大2年分を支援することとなっています。
セキュリティ対策推進枠の「補助金額」
補助金額は以下の通りです。
補助率:1/2以内
補助下限額:5万円
補助上限額:100万円
先述の「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されており、かつ事務局に事前登録された最大2年分のサービス利用料に対して、半分以内かつ最低5万円、最大100万円が補助されます。
たとえば、端末数50台の事業者が、監視対象の端末あたり1,000円/月のサービス契約を行う場合、2年間のサービス利用料の総額120万円となり、このうち最大60万円が助成されることになります。
セキュリティ対策推進枠の「スケジュール」
交付申請期間は2022年8月9日から申請の受け付けを開始しています。締め切りは1次と2次がありますので、1次で間に合わなかった場合は焦らずに2次で申請すると良いでしょう。下記に示している期間より後のスケジュールについては中小機構より順次公開されていく予定です。
- 1次締め切り
申請締め切り:9月5日17:00(予定)
交付決定:10月6日(予定)
事業実施期間:交付決定~2023年3月31日17:00
事業実績報告期限:2023年3月31日17:00
- 2次締め切り
申請締め切り:10月3日17:00(予定)
交付決定:11月4日(予定)
事業実施期間:交付決定~2023年6月30日17:00
事業実績報告期限:2023年6月30日17:00
セキュリティ対策推進枠の「対象事業者」
IT導入補助金のセキュリティ対策推進枠に交付申請が可能な事業者は、主に中小企業・小規模事業者と定められています。
中小企業基本法で業種ごとに中小企業者は4通り、小規模事業者は2通りに定められていますが、セキュリティ対策推進枠ではさらに細かく業種が定められており企業規模も異なるので留意が必要となります。
セキュリティ対策推進枠での交付申請対象となる中小企業・小規模事業者は以下の通りです。
・中小企業等
- 製造業、建設業、運輸業
資本金の額または出資の総額が3億円以下の会社または常時使用する従業員の数が300人以下の会社および個人事業主
- 卸売業
資本金の額または出資の総額が1億円以下の会社または常時使用する従業員の数が100人以下の会社および個人事業主
- サービス業(ソフトウェア業または情報処理サービス業、旅館業を除く)
資本金の額または出資の総額が5千万円以下の会社または常時使用する従業員の数が100人以下の会社および個人事業主
- 小売業
資本金の額または出資の総額が5千万円以下の会社または常時使用する従業員の数が50人以下の会社および個人事業主
- ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業ならびに工場用ベルト製造業を除く)
資本金の額または出資の総額が3億円以下の会社または常時使用する従業員の数が900人以下の会社および個人事業主
- ソフトウェア業または情報処理サービス業
資本金の額または出資の総額が3億円以下の会社または常時使用する従業員の数が300人以下の会社および個人事業主
- 旅館業
資本金の額または出資の総額が5千万円以下の会社または常時使用する従業員の数が200人以下の会社および個人事業主
- その他の業種(上記以外)
資本金の額または出資の総額が3億円以下の会社または常時使用する従業員の数が300人以下の会社および個人事業主
- 医療法人、社会福祉法人
常時使用する従業員の数が300人以下の者
- 学校法人 常時使用する従業員の数が300人以下の者
- 商工会・都道府県商工会連合会および商工会議所
常時使用する従業員の数が100人以下の者
- 中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体
上記1~8の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者
- 特別の法律によって設立された組合またはその連合会
上記1~8の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者
- 財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益)
上記1~8の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者
- 特定非営利活動法人
上記1~8の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者
・小規模事業者
- 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)
常時使用する従業員の数が5人以下の会社および個人事業主
- 宿泊業・娯楽業、製造業その他
常時使用する従業員の数が20人以下の会社および個人事業主
【次ページ】セキュリティ対策推進枠の「申請要件」「交付までの流れ」「審査項目」などを解説
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