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  • 2022/06/22 掲載

ウーバーは「配車サービス」企業ではなくなる?旅行や宅配市場で存在感発揮のワケ

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テック大手各社は新規雇用の抑制などコスト削減の取り組みを加速中だ。しかし、市場シェアの拡大や新規市場開拓にも同時に取り組む必要がある。配車サービス大手ウーバーは5月、9つもの新プロダクトを発表し、旅行事業などへの新規市場開拓の姿勢を明確に打ち出した。これら新プロダクトは同社の配車サービスのイメージを覆すもの。ウーバーはどのような領域で攻勢をかけようとしているのか。
執筆:細谷 元
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9つもの新プロダクトを一気に発表した、ウーバーCEOのダラ・コスロシャヒ氏
(出典:発表資料より)

テック株低迷もウーバーは9つの新プロダクトを発表

 テック株低迷の影響を受け、多くのテック企業では新規雇用抑制などコスト削減の動きが加速している。

 配車大手ウーバーも例外ではない。2022年5月9日のCNBCの報道によると、同社はこのほど、金融市場の大きな変動を理由に、新規雇用抑制などのコスト削減対策を実施する計画を社内向けEメールで通達。フリーキャッシュフローにおける利益率の改善を目指すという。

 一方、この報道から1週間後の5月16日、ウーバーは複数の新規プロダクトを公式に発表し、コスト削減を進めつつ、事業拡大に突き進む姿勢を明らかにしている。

 新プロダクトのコンセプトは「go anywhere」と「get anything」。

 「go anywhere」では、旅行における各段階での予約を行う「Uber Travel」、結婚式やイベント会場の予約サービス「Uber Charter」、イベントゲスト向けの配車サービス「Vouchers for Events」、プレミアムEV配車サービス「Uber Comfort Electric」、ウーバードライバーのEVシフトを支援する「EV Hub and Charging Map」の5つの新プロダクトが登場。

 一方「get anything」では、グーグルアシスタント経由でUber Eatsを声で注文できる「Voice Ordering」、スタジアムでのスポーツ観戦中にUbear Eatsを注文できる「Uber Eats at Stadiums」、ロボットによるデリバリーサービス「Autonomous Delivery(現時点ではロサンゼルス限定)」、ウーバー独自のメンバーシッププログラム「Uber One」の4つの新プロダクトが発表された。


ウーバーが狙う旅行市場は急速回復

 発表順を考慮すると、新プロダクトの中でウーバーが特に重点を置くのは「Uber Travel」であると推察できる。

 Uber Travelは、ユーザーがGmailアカウントをアプリに登録するだけで、ホテルや空港への移動・予約、またフライトやレストラン予約などの旅程・予約を実行・管理してくれるサービス。事前予約のため、10%のキャッシュバックが得られるという。

 発表時点でUber Travelを利用できるのは米国のみだが、数週間後にはカナダ、今夏には英国でローンチされる予定だ。今後、電車、バス、レンタカー予約なども可能になるとのこと。

 これまでの旅行準備では、ホテル、航空会社、配車など別々のWebサイトで予約・管理する必要があったが、Uber Travelの登場で、旅行はよりシームレスな体験になることが期待できる。

 このタイミングでのUber Travelの発表は時宜を得たものといえる。米国のインバウンド・アウトバウンド旅行市場がパンデミック前の水準に戻りつつあるからだ。

 パンデミックの影響が出始めた2020年3月、米国の旅客数は前年同月比で90%以上下落、同年4月にはホテル稼働率が25%まで下がるという事態に陥った。しかし、米運輸省によると、2021年の旅客数は6億7040万人と、前年を83%(3億0360万人)上回る水準に回復。

 アメリカ合衆国国際貿易局(ITA)の発表でも2022年4月は前年比167%増、パンデミック前の2019年4月の73%に達したという。

 デロイトの2022旅行市場予測では、2022年上半期には「ビデオ会議疲れ」などを背景に、ビジネス旅行市場も急速に回復に向かう可能性が指摘されている。

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急速にトラベル市場が戻りつつある(写真はイメージ)
(Photo/Getty Images)

 旅行市場の復興は、市場プレーヤーらが予想する以上に早く進んでいる可能性がある。ホテルや航空会社の人材確保が追いついていないからだ。

 米国では2021年10月時点で、ホテル業界で30万人の人材不足が報告されているほか、航空会社でも人材不足の深刻化が明らかになっている。ボーイングの業界予測レポートでは、業界の人材不足は顕在化しており、今後20年でパイロット61万人、メカニック62万人、キャビンクルー88万人以上が必要になるとの予測が展開されている。

【次ページ】高まるデリバリー事業の重要性
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