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  • 2022/06/01 掲載

「病院に依存しない社会」に向けた、高齢ドライバー対策の課題と解決策とは

SICシステムヘルスケア分科会

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高齢者の増加による医療ひっ迫が現実化する中、「病院に依存しない社会」を目指す動きが広がっている。システムイノベーションセンター(SIC)のシステムヘルスケア分科会は「人生100年時代に何が必要か」をテーマに据えつつ、高齢者のQOL向上に向けて、高齢ドライバーにフォーカスを当てた社会実装への提言を行った。高齢ドライバーによる事故の多発が社会問題化している中、現行の免許制度はどうあるべきなのか。各種課題はデジタル技術でどう支援できるのだろうか。
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図1:提言骨子案(後ほど詳しく解説していきます)
(出典:SIC提供)

システムの力で社会が抱える課題を解決する

 SICが柱とする3つの活動「企業におけるシステム化支援」「優れた社会システムの実装に向けた推進支援」「人材育成」のうち、2つ目の優れた社会システムの実装に向けた推進支援として、分科会活動がある。現在の社会、産業界が抱える課題を取り上げ、企業の壁を超えアカデミアも連携し提言書という形で然るべき場所に提言するものだ。

 その分科会の報告会が2月末に行われたが、各分科会の報告レポートから今の社会が抱えている課題とシステムが解決し得る可能性について探っていこう。


現行の高齢ドライバー対策は人生100年時代にマッチしているのか

 システムヘルスケア分科会が取り組んだのは「人生100年時代に何が必要か」というテーマだ。長寿社会において、いかに高齢者のQOLを充実させることができるのか。ヘルスケアIoTコンソーシアムとの共同研究という形で、SIC側からはマツダ、SOMPOシステムズ、SCSK、富士通、インターセプトコミュニケーション、ニューチャーネットワークス(事務局も担当)という座組みになる。主査は山本義春氏(東京大学)、副主査に中村亨氏(大阪大学)、研究支援として東大が入っている。

 山本氏によると、立ち上げの年(2019年)はメンバー間での問題意識のすり合わせ、および課題の洗い出しを行った。ここで当初は、高齢者が病院へ行くことを防ぐ、病院の外の空間を充実させるべく病院に依存しない社会という方向性を提案したが、HIT理事の吉内医師(東大病院心療内科)にヒアリングしたところ、病院が高齢者の居場所となるのはしばらくはやむを得ない、むしろ日常生活のQOLを重視してはどうかとサジェッションされ、最終的に分科会として高齢ドライバーの免許更新制度への提言を行う方向で活動することになったという。

 そうしてスタートしたのが2021年4月。当初はドライビングシミュレーターによる運転能力の評価を免許制度にどう活かしていけるか実証実験も踏まえて進める予定だったが、コロナ禍で現場での実証実験が難しいことからアンケートやヒアリングを中心とした調査に転換した。

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図2:テーマ絞り込みまでの経緯
(出典:SIC提供)

 前提となるところを見ておくと、現行の高齢ドライバー対策として令和2年改正道路交通法にて75歳以上に認知機能の検査が課せられ、また過去3年間に一定の交通違反歴がある75歳に関しては実車試験が義務化されている。

 分科会では、この制度の設計に関わった國學院大學高橋信行教授にヒアリングを行ったところ、高齢ドライバーにとって実車試験は重い負担であることが課題としてあるという。

 慣れていない場所や車両での検査で合格点に達することは容易ではないだろう。また、判断を下す側、認知症の判断を行う医師や運転継続の可否を判断する教習指導員にとって、自らの判断が免許更新の可否に直結するわけで、難しい判断を迫られるということになる。

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図3:現行の高齢ドライバー免許制度
(出典:SIC提供)

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図4:國學院大學高橋信行教授のヒアリング
(出典:SIC提供)

 認知機能テストに関連して、個人の健康差にかかわらず一定年齢が受ける形では自ずと返納するべきという圧力が高くなり、本来、返納する必要のない人まで返納してしまうおそれがある。返納することによって認知症発症のリスクが高まるケースもあるため、返納の行き過ぎは良い結果にはならない。

【次ページ】運転中止が高齢者の心身の健康に与える影響
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