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きれいな水にアクセスできる世界人口は3分の1のみ。人口増や気候変動により、水資源の希少性は高まっている。こうした状況下、空気から水を生成するスタートアップがいくつか登場し、ビル・ゲイツ氏のベンチャーキャピタルや世界最大の運用会社のブラックロックなどから投資を受けるなど注目が集まっている。どのような仕組みで空気から水を生み出すのか。水資源や水テクノロジーをめぐる世界の最新動向を探ってみたい。
ゲイツ氏が投資するアリゾナ発の水テック企業
空気から飲料水を生成する夢のようなテクノロジーを開発する企業は、世界にいくつか存在している。
ビル・ゲイツ氏のブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ(BEV)やブラックロックなどが資金を投じる米
Source Globalは注目株の1つだ。
Source Globalは、アリゾナ州立大学の物質工学准教授であるコーディー・フリーセン氏が2014年に立ち上げたスタートアップ。
太陽光発電パネルのような形状の飲料水生成システムを実用化し、すでに世界各地の水道インフラがない地域を中心に幅広く展開している。
CBインサイトのデータによると、Source Globalは2020年6月にシリーズCの第2ラウンドで、ブラックロック、BEV、米電力大手デューク・エナジーなどから5000万ドル(約62億8000万円)を調達。2022年1月には、環境テックファンドLightsmith Groupからの投資を受けている。
CNBCによると、Source Globalの累計調達額は1億5000万ドル(約188億円)に達している。
Source Globalが開発したのは、空気中の水蒸気を1万倍に凝縮し飲料水に変換するシステムだ。凝縮する際に太陽光の熱を活用、安全かつミネラルを含んだ飲料水を生成することができる。
パネル1枚のサイズは、縦1.2メートル、横2.4メートル、高さ1.1メートル。重量は154キログラムで生産できる飲料水の量は、1日あたり2~5リットル。天候や湿度によって、生産量は変化する。
フリーセン氏によると、アリゾナ在住の同氏と家族全員分(計4人)の飲料水は、パネル2枚で賄えているという。
各パネルは、グリッド電力への接続が必要なくスタンドアロンで稼働するため、電力インフラが乏しい地域でも利用することが可能だ。パネルはクラウドを通じて、Source Globalの中央管理システムにつながっており、天候や湿度によって水生成プロセスの最適化が行われている。
Source Globalの水生成パネルは世界52カ国で導入され、計450プロジェクトで活用されている。
イスラエル発の水テックスタートアップ
イスラエルの
Watergenは、Source Globalとは異なる方法で空気から水を生成するテクノロジーを開発している。
Watergenのシステムでは、まず空気を数回フィルターに通し、ホコリなどの不純物を除去。その後空気を冷却して水分を抽出している。スタンドアロンではなく、電気利用が必要となる。
装置のサイズは大・中・小の3種類あり、それぞれ水生産能力も大きく異なってくる。
大型装置は、縦2.85メートル、横2.23メートル、高さ2.64メートル。重量は2.6トン。電力消費量は、通常時で60キロワット、ピーク時で90キロワットとなる。1日あたりで生産できる水の量は、6000リットルに及ぶ。
一方、中型装置は、縦1.4メートル、横1.4メートル、高さ1.58メートル。重量は780キログラム。電力消費量は、通常時で5.6キロワット、ピーク時で10キロワット。1日あたりの生産量は900リットルだ。
持ち運び可能な小型装置もある。サイズは、縦55センチメートル、横40センチメートル、高さ40センチメートルで重量は15キログラム。電力消費量は平均350ワットで、1日あたりの水生産量は20リットルだ。
もともと軍用に開発された技術だが、現在はインド、ベトナム、コロンビアなど世界各地の水不足地域で導入されるなど民間での利用が増えている。
【次ページ】アフリカ・中東での水資源をめぐる紛争リスク
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