- 会員限定
- 2022/03/31 掲載
リクルートワークスに聞く「リスキリング」、DXが不発の理由は“スキル不足”か
-
|タグをもっとみる
中小企業のデジタル化を阻む理由は「リスキリング」にあり
DXを筆頭にビジネスモデルや事業戦略が変わるなら人材戦略も必然的に変わるため、DX時代の人材戦略には「リスキリングが必要不可欠」と言えそうだ。
エンタープライズ企業に比較し、中小企業のリスキリングとデジタル化がなかなか進まない。経営者のデジタル化に対する意識や従業員の活用力、導入コスト、デジタルツールの選択など解決すべき課題が残っており、資金や人材が乏しいこともある。
「大企業に比べると、中小企業は人手も予算も少ないのは確かです。しかし、たとえば月額1,000円程度で利用できる安価なツールや無償で使えるツールもあります。つまり、資金がないからデジタル化に取り組めないのではなく、こうした便利で安価なツールがあることを知らないのです」(大嶋氏)
しかも、デジタルやITへの投資は、大きなものから小さく柔軟に現場のニーズに応じて活用できるものへと変質している。問題は、中小企業の経営者がこうした情報をうまくキャッチアップできず、変革の機会やデジタルがもたらす脅威を正しく理解できていないことにあるのだ。
ただし、中小企業が安価なデジタルツールを導入したからといって問題が解決するわけではない。ツールを導入すると保守費や、使いこなすためのコスト、リスキリングのための教育費などが積み重なっていく現実もある。月額使用料1,000円でも、従業員20人が使えば2万円になるなど新しいツールに多額のコストを使うことは難しい。
「デジタル化に先行した中小企業に聞いてみると、多機能のアプリケーションを入れても使いこなすスキルがないので、まずは部分的に導入して自分たちにメリットがあることを確認し、スキルの再開発を含めて広げていくケースが多いようです。最初から一気に変えようとするとコストがかかるだけではなく、人がついてきません。スキルを開発しつつ従業員が使っていくプロセスが重要です」(大嶋氏)
経営者向けと従業員向けのリスキリング
リクルートワークス研究所は、中小企業のリスキリングとして「経営者向け」と「従業員向け」があると説明する。経営者向けは、デジタルの活用が効率化など経営に深く関与することを理解し、ビジネスがどのように変わっていくのかを思い描けるようにするものだ。従業員向けのリスキリングは3種類ある。1つは「使いこなしのリスキリング」だ。デジタル化は仕事の内容を大きく変えるので、それに適用するツールを使いこせるようにする。デジタルのメリットを感じられるようツールを導入することでもある。
2つ目は「変化創出のリスキリング」だ。簡単にいえば「こうしたい」といった現場の声を吸い上げて、課題と解決を提案できるようになることだ。IT企業とコミュニケーションし、デジタル推進プロジェクトを担う、いわば旗振り役に求められるスキルである。
3つ目は「仕事転換のリスキリング」だ。デジタルを使った新規事業の立ち上げではビジネスモデルが変わり、担う役割が変わる。このため、古いスキルを捨てて新しいスキルを身に着ける必要がある。その学習教材を用意するとともに、アサインした新規事業の担当者らを脱落させないようにする。
「この3つを混同してはいけません。まず従業員に『デジタルは役立つ』ことを実感し、スキル開発に前向きになってもらいます。たとえば、入退室管理や社内に設置した自動販売機の利用をICカード管理に、従業員に『便利だ』と感じてもらうのです。こうした取り組みを積み重ねないと、デジタル化に現場が疲弊し、管理職が反発します。これまでのやり方を否定されるためです。変わることへのアレルギーをなくすために、就業時間を変えたり制服を変えたりといった進め方もあります」(大嶋氏)
デジタル人材は自社で育て、IT企業に正確に要求を伝えられるようにするなど、IT企業に丸投げしないようにする。ビジネスを変えていくための課題と解決の知識・知見を蓄積し、活用できるようにするためだ。
【次ページ】経営者向けと従業員向けのリスキリング
関連コンテンツ
PR
PR
PR