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- 2021/04/06 掲載
【コロナ禍転職のリアル】「給与が上昇した」のは?イーキャリアのSBHC木崎社長が解説
転職支援業界は軒並み3割の売上を失った
──コロナ禍の転職市場では、どんな変化がありましたか?木崎 秀夫氏(以下、木崎氏):有効求人倍率は新型コロナ流行前のピークで1.63でしたが、直近2020年12月で1.03まで下がっています。しかしリーマンショック時では0.4なので、数字上はそのときほどではありません。リーマンショックは経済危機だったので、経済が全業種・業態で軒並み厳しくなりました。コロナ禍は感染症由来で、人の移動が伴う産業は厳しくても、逆に潤う業界もあるという点が大きく違いますね。
とはいえ、コロナショックの急ブレーキは市況的にも影響がありました。完全失業率は0.4ポイントほど増え、業績悪化などの都合退職は20万人も増加し、1年間で倍になっています。負の影響が大きく、転職市場にも影響がでました。
また市場を読み解く上で、私ども転職支援業界の売上推移が1つの指標になるのではと思います。それで言えば、恐らく前年比で60%~70%ほど、軒並み平均3割は売上を失っている感じですね。
──コロナ禍で潤う業界と厳しい業界を深掘りすると、優勝劣敗が激しいですか?
木崎氏:飲食や旅行など人の移動が関連する業界は厳しいですね。アミューズメント系も相当厳しい。逆にそういう業界に絞ると、リーマンショック以上にダメージを受けました。旅行業界はGoToの施策で上向いた時期もありましたが……コロナ前はホテルもインバウンド需要で人手が足りなかった。それが途端に求人が止まりましたらからね。
この10年で大きく変わっていた転職マインド
──一旦、新型コロナが流行する直前までの転職市場を整理させてください。右肩上がりでマーケットが広がっていた印象があります。木崎氏:我々の業界全体では毎年平均15~20%ぐらい成長を続けてきました。各社の売上が好調で、インバウンド需要も非常に大きかった。正社員採用に限ると、優秀な人材が正社員雇用を選択しなくなるという現象も起きました。
特に優秀なエンジニアなどは自分でビジネスを始めたり、業務委託やフリーランスになる人が非常に増えています。そうなると企業は余計に高い条件でないと正社員採用できません。そこで派遣やアルバイトの方を、未経験で採用して育成していくことも一生懸命やっていましたね。
──日本は諸外国と比べ、人材の流動性が少ないイメージでしたが、少しずつ状況が変わっていたところだったのですね。
木崎氏:技術的な進化もあるでしょうが、この10年間で大きく変化しています。たぶんエンジニアは一番の転職パイオニアですね。みなさんのマインドも変わり、1社で勤め上げる意識がなくなりました。優秀な人ほど、時間・業務単位で働いたほうが、経済的にプラスだと気付いたのです。
また経済面だけでなく、時間的制約から解放され、自由に仕事をしたい、田舎に住みたいというように、日本経済のパイが増えない中、豊かさの定義も広くなりました。経済成長を知らないバブル崩壊後の世代は、ある種自然とこうした価値観を持っています。
──なるほど。こうした転職市場にとっての追い風が、コロナ禍で大きく減速したのですね。こういったコロナ前後の変化について、転職支援業界はどう受け止めていますか?
木崎氏:先ほど申し上げた通り、我々の業界は3割ぐらい売上が落ちています。ただGoToキャンペーンで求人需要がいっとき回復したことからも分かるように、リーマンショックと違い、コロナ禍が落ち着けば経済が回復するという出口も見えているので、大きなリストラまで踏み込んでいません。最近は各社、CMなどのコストを削減し耐えています。弊社もさすがに来期の成長はあきらめて、前期比同等という見立てです。
ただ、人の移動が中心となる業界の人は大変ですね。たとえばホテル業界は、従業員がいったん辞めて、またGoToキャンペーンで雇って、いろいろと振り回されています。日雇いやアルバイトなどで対応するなど、雇用方法を工夫するしかありません。
【次ページ】コロナ禍で給与が上昇したのは「特定業界」ではなく…?
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