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- 2021/02/08 掲載
バイデン政権で変わる米国のデジタル戦略、CESで米国家経済会議の新議長が語った今後
米国史上、最年少のNEC議長
ブライアン・ディーズ氏は1978年生まれ、米国の歴史上最も若いNEC議長となる。元々ブラックロック社のサステイナブル・インベストメント部門で活躍、2008年にはヒラリー・クリントン氏の選挙陣営に参加した。ヒラリー氏がオバマ氏に破れたことで、大統領本選ではオバマ氏の経済アドバイザーを務めた。その後政権入りし、経済政策についての特別アドバイザーに就任。NECのメンバーにも抜擢された。特にリーマンショック後に起きたゼネラル・モータース(GM)とクライスラー(当時)の経営破綻と再建に辣腕(らつわん)を振るい、自動車業界に大きな影響力を及ぼした。
政権二期目には大統領のシニアアドバイザーとなり、2015年のパリ協定提携に尽力した。トランプ政権時代はブラックロックの投資家として、主に環境問題に取り組んだ経験を買われ、今回バイデン次期大統領からNEC議長を打診された。
NECは1993年に当時の大統領命令によって設立された機関で、国内外の経済政策へのアドバイスを省庁を超えて行う。特にバイデン政権下では、大統領の公約として2兆ドルの環境対策費が挙げられているため、クリーンエネルギー政策に大きな役目を果たすことが期待されている。
2020年最大のイノベーションとは
まずシャピロ氏は、テクノロジーとイノベーションについての新政権の考え方について質問。それに対しディーズ氏は、「例を挙げるならば、コロナウイルスへのワクチン開発がまさに2020年最大のイノベーションと言える」と答えた。ワクチン開発には官民セクターの協力があり、バイオ、化学、医薬品などあらゆる最先端の知識とテクノロジーが投入された。新政権がまず行わなければならないのは、このワクチンを迅速に全国民に接種するという作業だ。全国民一斉のワクチン接種というのはこれまでに例がなく、その実施にはさまざまな問題が存在する。
ディーズ氏はこの点について、「テクノロジー企業にとっては大きな機会となる」と指摘。ワクチン運搬という物流面、冷凍保存の効率的な方法、接種対象者の速やかなリスト化と連絡、フォローアップなど、さまざまな面で政府と企業がパートナーシップを組み進めていくことになるためだ。
さらにワクチン接種が進み、社会がノーマル化していく中でもテクノロジー企業が果たすべき役割は大きい。たとえば全米のほぼすべての小学校がオンライン化しているが、学校再開へのプロセスの中でブロードバンドはこれまでになく重要な要素となる。生徒への告知、徐々に始まる再開プロセスの中で、オンライン授業が継続して行われる可能性がある。
IT環境の不備が招いた「教育の不公平」の助長
今回のパンデミックは、教育現場でのIT環境の不足を浮き彫りにした。たとえば中国がいち早くオンライン授業に切り替え、現場でほとんど混乱もなく生徒の学習の遅れが見られなかったことと比較しても、米国の遅れが目立った。ブロードバンドはすべての家庭に普及していないし、個人で使えるPCやタブレットを所有する生徒は大多数ではあるが全員ではない。教育の現場から聞かれた声として、米国には英語を話せない児童が一定数存在するが、オンライン授業でスムーズに内容をスペイン語なり他の言語に翻訳して伝えるソフトが徹底していなかった。教育の場でも不公平が助長する結果となった。
【次ページ】GAFA解体はあるか? 巨大IT企業のあり方
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