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  • 2020/12/11 掲載

全米トップの進学校が「哲学」を必修にするワケ、校長が明かすスタンフォード式授業

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スタンフォード大学の一部として15年前に設立された中高一貫校、「スタンフォード大学・オンラインハイスクール」。オンライン高校にも関わらず、ニューズウィークの「STEM教育に力を入れる高校ランキング2020」で全米3位、全米高校ランキング「Niche」の進学校では全米1位に輝いた同校では、卒業必修科目を「哲学」に設定している。同校の日本人校長である星 友啓氏が、哲学を必修にしている理由と、その具体的な教え方について語った。
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哲学を「なぜ」、そして「どのようにして」学ばせるのか
(Photo/Getty Images)

前編はこちら(※この記事は後編です)

※本記事は『スタンフォードが中高生に教えていること』を再構成したものです。


哲学でゲームチェンジャーを育てる

 スタンフォード大学・オンラインハイスクールのカリキュラムの心臓部分として位置付けられるのが、哲学をベースにした必修カリキュラムです。スタンフォード大学・オンラインハイスクールを卒業する生徒は、高校の各学年で、通年の哲学必修コースを履修します。

 中学や高校の中等教育レベルで哲学が必修になっているということが非常にユニークなため、全米でも注目を集めてきました。

 「International Baccalaureate(IB)」などに代表されるように、哲学が高校や中学のカリキュラムの中核として組み込まれているプログラムもないわけではありません。日本と同様、アメリカでも、学生が哲学を本格的に学び始めるのは大学に入ってからなのです。

 実際、私が最初にスタンフォード大学・オンラインハイスクールのプロジェクトに惹かれたのも、高校生向けの必修カリキュラムを哲学ベースで作るという企画があったからでした。

 しかし、そうした物珍しさだけではなくて、中等教育であるが故に、哲学をしっかりとやっておく必要があると考えてきました。

 中等教育で、生徒たちはいろいろな科目でさまざまな分野の知識に触れていきます。

 どのような知識でも必ず前提となる世界観や物事の枠組みがあり、そうした背景なくしては該当する理論や見識が成り立ちません。

 生徒たちは、それぞれの科目で分野ごとの専門知識に触れていくことによって、前提とされる世界観や物事の枠組みを、自分の世界観や考え方の一部として固定化させていきます。

 つまり、学習を進めて、専門知識を身につければつけるほど、前提とされる価値観や枠組みに縛られていくことになるのです。

 一方で、技術革新やグローバル化により、社会の仕組みや共通認識が、目まぐるしく変化する中、現在の自分の世界観から飛び出して、他の価値観を理解する力が必要とされています。

 哲学の営みの中核は、物事の根本や前提を問い直して、考察することにあります。

 哲学の営みに親しむことで、現在のものの見方や考える枠組みから自分を解き放ち、急速に変化する社会の中で、揺るぎない自分の価値観を模索していく力を身につけることができるのです。

 より深いレベルでの学習が始まる中等教育においてこそ、より柔軟な「哲学する力」を養い始めることが必要とされているのです。

 決められた現在の枠組みの中でうまくやっていけること。いわば、すでにそこにあるゲームをうまくプレーする熟練のゲームプレーヤーになる力も大切です。

 しかし、予測不能な現在、急速に変化する社会に必要な「生き抜く力」の鍵は、新たなゲームに適応する力と、新たなゲーム自体を作り出すゲームチェンジの力なのです。

 スタンフォード大学・オンラインハイスクールの哲学必修は、哲学的に物事の前提や価値観の根底に立ち返って、現在の枠組みを超えた考え方ができる心の習慣を養うためのプログラムなのです。

【次ページ】スタンフォード大学・オンラインハイスクールの必修哲学コースのカリキュラム
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