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- 2020/10/07 掲載
八子 知礼氏が語る「ウィズコロナ時代の製造業」、スマートファクトリー戦略を再考するには
デジタルトランスフォーメーションの最新トレンド
現在、毎日のように「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉を耳するが、八子氏は「この言葉が本格的に注目されるようになったのは、2019年に入ってからでは」と語る。グローバルでは、5年ほど前からトレンドは始まっていたが、市場としては2019年を機に急成長が始まり、2020年から2023年までの3年間で2倍に成長すると見込まれている。そしてこの数年間、DXの一環として先行して取り組まれてきたのがIoTである。2020年には約260億台の機器がインターネットに接続され、この数字は、2025年には400億台を超えると予想されている。
八子氏は、「興味深いのは、IoT機器から生成されるデータの内訳です」と指摘する。2025年にはIoT機器から生成されるデータ量は79兆4000億Gバイトと予想されており、その約半分は台数としては非常に少ない監視カメラの動画データであるという。静止画より動画のデータ量が多いのは当然だが、そのデータが半分を占めると予想されていることは注目に値するだろう。
そして、蓄積したデータの分析に欠かせないのが人工知能(AI)である。八子氏は「AIの市場が2018年を起点に、2025年までの7年間で12.3倍に成長する」という調査結果を紹介した。製造業の領域では、品質検査や工程管理などで活用されることになる見込みが高く既に多くの事例が出始めている。
では、こうしたトレンドの中で、企業は何を目指せばよいのだろうか。八子氏の答えは「デジタルツイン(Digital Twin)」だ。これは、アナログ世界をデジタル上に丸ごと再現する取り組みを指す。
なぜデジタルツインが必要なのか。それはより確かなビジネスを展開するためだ。デジタル世界ではアナログと違い、時間は止めて過去にさかのぼったり、蓄積したデータを分析して未来を予測したりすることもできる。複数のシナリオをシミュレーションして、異なる未来を予想することも可能だ。
変化が激しく、先が読めない不確実な時代であるほど、企業にとって未来を予測する可能性を持つ「デジタルツイン」は生き残るために不可欠な取り組みともいえる。では、デジタルツインは実際にどのように進展し、どのような姿を描くのだろうか。そしてコロナ禍で新たに加わったトピックとは何だろうか。
製造業における「新型コロナウイルスの衝撃」
今という時代の不確実性を象徴する出来事が、今回のコロナ禍だ。企業業績へのインパクトも大きく、特に小売、物流、製造、不動産などの物理的制約の多い業種ほど、大きい影響を受けている。製造業の場合、さまざまな企業が操業停止を強いられた。「たとえば、トヨタ自動車は北米にあるすべての完成車と部品の工場で、3月23日から50日間も操業停止し、ヤマハやスバルも国内外の拠点が停止に追い込まれました」(八子氏)
こうした停止は、感染防止が目的であるのはもちろんだが、部品が来ない、もしくは工場で感染者が発生した、感染を恐れて従業員が出勤そのものを嫌がる……などの理由で止めざるをことが報告されているという。製造業においてはサプライチェーンが破綻し、なかなかリカバリーできないという課題が突きつけられたのだ。
こうした状況を見て、日本政府は生産拠点の「国内回帰」を促す補助金を2,200億円計上した。空洞化した製造業の日本回帰につながるという期待はあるものの国内に潤沢な人材や、安価な労働力があるわけではないのも厳然とした課題だ。
「そこで、ロボット化やAIを使った自動化、IoTを使った可視化といった『スマートファクトリー』の取り組みは不可欠です」(八子氏)
なお、製造業においては、コロナ以前から中国集中生産からの脱却や部品調達先の分散、電力エネルギー管理の徹底や再生可能エネルギー電力への切り替え、さらにロボット化や自動化、AI化などのスマートファクトリー化は提唱されてきた。今回のコロナ禍によって、そこに新たに「リモート化」が加わった格好だ。具体的には、遠隔監視と遠隔制御の2つが、今後の新たな検討事項になる可能性が高いという。
【次ページ】「未来のスマートファクトリー」へのロードマップとは
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