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新型コロナウイルスの感染拡大が中堅中小企業に業務プロセス、さらにはビジネスモデルそのものの見直しを迫ってきている。“コロナ後”の新しい世界に備えた事業構造の改革に1日も早く取り組むべきだろう。その1つが在宅勤務などによる働き方改革である。既存組織や既得権益者などと戦うこともあるだろう。デルテクノロジーズの日本法人がこのほど発表した「中堅企業のIT投資動向調査2020」から、中堅・中小企業のそんな取り組みが垣間見えてくる。
加速するテレワーク推進に向けたノートPC導入
デル日本法人が従業員100人から1000人未満の中堅中小企業におけるIT活用の進捗などを調査した「中堅企業のIT投資動向調査2020」によると、働き方改革に着手する企業は85.2%に達する。
目的は業務効率化や生産性向上などで、「時間外労働の上限設定」や「ペーパーレス化の推進」、「ノー残業デーの徹底」、「テレワーク/在宅勤務の導入」などがその実現策という。その中で、「テレワーク/在宅勤務の導入」は前回調査より8ポイント増えて、4分の1の企業が取り組み始めている。
テレワーク/在宅勤務を推し進めるデスクトップPCからノートPCへのリプレースも着実に進んでおり、前回調査より2ポイント増の16%になった(図1)。
デル日本法人で中堅企業を担当する上席執行役員広域営業統括本部長 瀧谷 貴行氏は「ノートPCの導入は、テレワークへのファーストステップ」と、その重要性を指摘する。同社調査によると、ノートPCとデスクトップPCの出荷比率は2019年5月期の41対59から2020年2月期に55対45へと、ノートPCの比率が高まっている(図2)。
しかも、「3月中旬以降からノートPCの出荷比率が一気に増え、4月末の週は8割近くになった」と、瀧谷氏は移行ペースの加速に驚く。同調査は新型コロナ感染拡大前の2019年12月から2020年1月にかけて実施した回答なので、テレワーク/在宅勤務を導入した企業がそれ以上に増えていることだろう。
デル日本法人は従業員のテレワーク/在宅勤務で、改めて分かったメリットがあるという。広域営業統括本部中部営業部兼西日本営業部長を務める木村佳博氏によると、同社広域営業統括本部のインサイドセールス担当者すべてが3月4日にテレワーク/在宅勤務に切り替えた後、顧客対応時間が1日あたり平均で10分増えたとのこと。
通勤時間がなくなったことあるだろうが、担当者からは「完全在宅勤務が始まって1カ月、正直出社する意味が分からなくなってきている」との声もあった。「グループチャットやWeb会議、電話などがあっても、社内メンバーとの交流が減ったと感じている」との声がある一方、「目の前にいなくともチャットで声をかけられるため、業務上の支障はない」という意見もあった。
アウトサイドセールスの担当者からは「3月中旬くらいからお客さまがWeb会議に慣れてきており、 弊社から顔出しをすることで、お互いに顔を出し商談を行えるケースが増えてきた」、「訪問と同等レベルで、Web会議でもお客さまと密に会話ができ、大幅な商談件数の減少の歯止めをかけられている」といった前向きな意見もあったという。
テレワークを阻害する帳票や文書、組織文化
テレワーク/在宅勤務が進むことで、課題も表面化している。ガートナー ジャパンによると、「紙の帳票や文書に関すること」である。紙文書を閲覧するために出社したり、紙文書に承認印を得るために出社したりするといった事態が起きている。
同社アナリストでバイスプレジデントを務める鈴木雅喜氏は「テレワークを進める上で『紙問題』にまだ悩んでいる日本企業は、速やかに電子化を進めていくべきだ」と助言する。
とはいっても、紙問題は単に電子化すれば、解決できるものではない。鈴木氏は「情報を使いこなす仕組みと重要情報のセキュリティ確保を両輪として取り組む必要がある」と説くとともに、テレワークを進めるうえで直面する3つの解決すべき“紙問題”を示す。
1つ目は、オフィスに行かないと仕事に必要な資料を閲覧できないようになっていること。2つ目は、ビジネスプロセスに紙を使う「押印」「検印」の文化が残っていること。3つ目は、社内に紙にまつわる組織文化と思い込みが存在すること。
ガートナーは「資料の閲覧や押印などはIT化で解決できる。実績も数多くある」と断った上で、やっかいなのが組織文化だという。
時間管理や評価制度などいろんなことが含まれているだろうが、「新型コロナ感染症への対応が当面必要となる可能性を踏まえ、すべての日本企業は『時代は既に変わった』と考えて、電子化と情報活用に向けた活動を加速させるべき」と提言する。
実は、同社によると、社内で紙をほとんど使っていない企業は3割を超えているという。デジタル化は着実に進んでいる証にも思える。
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