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  • 2020/01/27 掲載

東工大 飯島淳一教授が解説、「2025年の崖」を乗り越えるフレームワーク活用術(2/2)

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DRAフィールド調査で見えた「2025年の崖」への備え

 飯島氏の研究室では、2018年10月中旬から2019年1月中旬にかけて、DRAについてのフィールド調査を実施したという。同調査はデジタル化のスコープ、デジタル化のスケール、7つの組織行動マネジメント領域などについて聞いたもの。なお、調査企業は44社で、うち大企業が3分の2を占めた。業種は製造業、金融、ITサービス業などで、ITユーザー企業が4分の3という構成になっている。

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DRAにおける質問例

 このフィールド調査の分析結果について飯島氏は、以下3つの観点から解説した。

  1. デジタル・ビジネス・アーチタイプ:業務全体におけるデジタル化の深さと広がり

  2. デジタル・レディネス・インデックス (DRI):PMSOの4つの観点から評価したデジタル変革への備え

  3. 7つの組織行動マネジメント領域・デジタル化に必要な7つの組織行動マネジメント領域の現状と目標とのギャップおよび重要度


「まず1つ目の『デジタル化』について、企業はその“広がり”よりも“深さ”を優先して取り組んでいると思われる。また部門ごとにさまざまなデジタル技術を試験的に導入し、その後各々への投資を増やしているのではないか」(飯島氏)

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デジタル・ビジネス・アーチタイプ

 次に2つ目のデジタル変革への備えについては、今回調査を行った企業の約79.5%が、4つあるうちの最初の“受容ステージ”、約20.4%がその次の“立上ステージ”にあり、国内企業はデジタル化にやっと取り組み始めたばかりだと言える。ちなみに3つめの活動ステージと最上位の牽引ステージにいる企業は共にゼロという結果だ。

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44社のDRI(デジタル・レディネス・インデックス)の分布

 またPMSOのPlan・Make・Sell・Operate各々のDRIスコアを見た時、Sellが全体的に初期段階にあることから、日本企業はデジタルマーケティングの活用などにはまだ積極的に取り組めていないのではないかと考えられる。一方でMakeやOperateは全体的にSellよりも上位レベルにあり、製品やサービスの設計・開発や社内オペレーション・プラットフォームにおけるデジタル化は、ある程度進んでいるとみられる。

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PMSOごとのDRIスコア

 そして3つ目の7つの組織行動マネジメント領域について、今の日本企業は、①計画策定と実行のマネジメントの領域が、デジタル技術を用いた競争優位性を確立するために優先的に取り組むべきだと認識している傾向にある、と考えらえる。

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7つの組織行動マネジメント領域

 こうした結果を受け、飯島氏は「現在の日本企業のデジタル・レディネスは、全体的にまだ発展途上にあるということが見えてきた」と語る。また、部門単位でデジタル技術の取り込みは行われているものの、部門間連携にまで広がっていないことも見えてくるという。そしてマネジメントの観点からは、「計画策定と実行」「情報の有効活用」が喫緊の課題だ。

「これらの実態を踏まえた上で考えると、『Make』は日本の強みでもあり、ある程度できている。今後は『Sell』ができるように『Operate』を整備する、という方針で『Plan』を立てて進めていくことが2025年の崖への備えとなるだろう」(飯島氏)

DXにはマネジメント能力の改善活動が必要

 先述したとおり、IT-CMFにはPOMsという組織能力を改善していくためのガイドラインがある。ただし、デジタル・レディネスを継続的に改善していくためには、組織能力とあわせてコンピテンシーと呼ばれる個人の能力も重要となる。

 この個人の能力を測るものとして、IPA(情報処理推進機構)が提唱する「iコンピテンシディクショナリ(iCD)」というフレームワークがある。

 IPAではフレームワークについて「企業においてITを利活用するビジネスに求められる業務(タスク)と、それを支えるIT人材の能力や素養(スキル)を『タスクディクショナリ』と『スキルディクショナリ』として体系化したもの」と説明している。自社の目的に応じた人材育成に活用できるものだ。このiDCをIT-CMFにおけるCBBにマッピングしていくことで、企業のケイパビリティと個人のコンピテンシーを結び付けることができる。

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iCDマッピングに基づく個人の能力の改善

 最後に飯島氏は、これまでの話のまとめとして次のように語り、講演を締めくくった。

「DXの現状は、DEMOの構成モデルによって明示することができる。しかし80%の日本企業は、まだDXへ備えを始めたばかりだ。アジアにおけるDXへの備えは、米国に後れを取っているという調査結果もある。特に製造業などはコンピュータ関連業およびサービス業に比べて備えが遅れているようだ。まずは計画策定と実行のマネジメントの領域で重要となる戦略的プランニングやエンタープライズアーキテクチャ管理の成熟度を向上させること。そしてPOMsやiCDマッピングを用いて継続的な改善につなげていくことが重要だ」(飯島氏)


(本記事は、2019年11月13日開催「第14回 BPMフォーラム 2019」での講演内容をもとに再構成したものです。)

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