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  • 2019/07/10 掲載

京都市「高さ制限」を一部緩和へ、景観を損なう懸念も?

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歴史的な景観を守るために厳格な高さ制限を設定している京都市は、下京区中堂寺南町のJR丹波口駅前で現在の最高限度20メートルを31メートルに緩和する計画原案を市民に示した。駅前を通る五条通(国道9号)の拡幅に合わせた都市計画見直しが理由だが、背景に見えるのは深刻さを増すオフィスや住宅の不足だ。市民の間では歴史的な景観こそが市の宝として緩和に否定的な声が少なくないだけに、高崎経済大地域政策学部の大澤昭彦准教授(都市計画)は「丹波口の緩和はあくまで道路整備に合わせた都市計画見直しだとしても、緩和が続いて京都の景観を損なわないように留意する必要がある」と指摘する。
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京都市が都市計画を見直しの原案を示した下京区の五条通。高さ制限が20メートルから31メートルに緩和される
(写真:筆者撮影)

五条通の最高限度を20メートルから31メートルに

 高さ制限の緩和が打ち出されたのは、JR山陰線の丹波口駅から西大路通までの五条通。最高限度が20メートルから31メートル、都市計画上の用途地域が準工業地域から商業地域、容積率が200~300%から600%に変わる。

 市の計画原案では、高さ制限を緩和できる建築物は敷地面積1,000平方メートル以上で、緑化などに貢献できることが条件。使用目的は事務所か研究施設に限定され、店舗や飲食店を併設することができる。それ以外の建築物は高さ20メートルが最高限度で変わらない。

 丹波口駅は平安京の朱雀大路跡の一部を南北に走る山陰線が、市内を東西に横切る五条通と交差する位置にある。五条通が片側4車線に拡幅されたことから、市は都市活力をけん引する広域拠点エリアの1つに駅周辺を位置づけ、オフィスの集積を目指している。

 市は6月末、下京区西木屋町通の市景観・まちづくりセンターなど3カ所で説明会を開き、計画原案の概要を説明するとともに、市民の声に耳を傾けてきた。パブリックコメントは10日まで受け付けている。


 市は地域の景観に悪影響を及ぼさない建築物に対し、高さ制限を特例として緩和する制度を持つが、この見直しも検討している。2018年末までに制度を活用した新築の建築物が7件しかなく、大半が病院や大学などの公共施設。許可に時間がかかり、上限を超える高さの基準も明確でないため、民間事業者が敬遠しているからだ。

 市は特例制度を地域ごとの特性に応じた街づくりに活用しやすくしようと、今回の計画原案に寄せられたパブリックコメントも参考にしてガイドライン案を作成、あらためて市民に提示する。

 市景観政策課は「丹波口での規制緩和は駅前の拡幅された道路にふさわしい都市計画とするため。今後の規制見直しについては景観と住環境、都市機能のバランスを取りながら、慎重に検討したい」と述べた。

2007年の新景観政策で高さ規制を強化

 市は戦前の1930年、鴨川や東山、北山などを風致地区に指定して以来、本格的に景観保全に取り組んできた。

 しかし、1964年に下京区で高さ131メートルの京都タワーが竣工したのを機に、市民の間で景観論争がわき上がったこともあり、1973年に市内の大半に高度地区を設定、独自の高さ制限をスタートさせた。

 2007年には新景観政策を打ち出し、市眺望景観創生条例など6条例を施行した。最高限度に関しては、それまでの10メートル、15メートル、20メートル、31メートル、45メートルの5段階から45メートルを廃止して新たに12メートル、25メートルを追加、6段階に切り替えた。

 京町家や三山の山並みが見える京都ならではの景観が損なわれないようにするためで、これにより、市街地全体のうち約3割の区域で高さの最高限度が引き下げられた。景観保護を求めてきた市民団体などからは「歴史的な景観再生に向けた第一歩」と評価されている。

京都市の景観政策と景観関連法の動向
1897年古社寺保存法を制定
1930年市が鴨川、東山、北山などを風致地区に指定、面的な景観保全が動きだす
1956年屋外広告物条例を施行
1966年開発を認めない歴史的風土特別保存地区を指定できる古都保存法を制定
1972年市街地景観条例を施行
1973年市が市街地の大半に高度地区を設定、独自の建築物高さ制限をスタート
2005年景観法を施行
2007年新景観政策に関係する6条例を施行
(出典:京都市「京都の景観」)

 その後、2015年の都市計画見直しで下京区のJR京都駅東側が準工業地域、近隣商業地域などから商業地域に変更され、高さ規制が20メートルから31メートルに緩和されたが、ここに来て市内部で景観に影響が少ない地域で規制緩和を求める動きが出てきた。

【次ページ】規制緩和の背景にある問題とは?
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