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ビジネス現場でのグローバル化が進む中、世界における日本人の特徴は何だろうか。そして、それはプラスに傾くのか、マイナスに傾くのか。at Will Work「働き方を考えるカンファレンス2019」のBREAKOUT SESSIONで「『日本人の働き方』をひも解く」をテーマにパネルディスカッションが開かれた。パネリストは、育キャリカレッジ/MANABICIA パートナー兼チーフメンターの安藤知子氏、ウイングアーク1st マーケティング統括部 統括部長 兼 経営戦略担当の久我温紀氏、デロイト トーマツ コンサルティング Digital HR Leaderの田中公康氏の3人。AERA 編集長の片桐圭子氏がモデレーターを務めた。
長時間労働で知られる日本、昔からこんなに働いていた?
AERA 片桐圭子氏(以下、片桐氏):「長時間労働」は日本人の働き方を象徴する言葉になっていますが、私の子供のころを振り返ってみると実はそうでもなかったような気がします。私の父は教員でしたが、毎日一緒に夕食を食べていた記憶があります。皆さんはいかがですか?
育キャリカレッジ/MANABICIA 安藤知子氏(以下、安藤氏):私の場合、土曜日が休みではなく、父親はよく働いていた印象があります。ただ、毎日夜中まで帰って来ないということはなかったですね。むしろ私が社会人になってから、「24時間戦えますか」などが問われるようになったと思います。
デロイト トーマツ コンサルティング 田中公康氏(以下、田中氏):そのころから企業の競争環境が激しくなり、恒常的に仕事がある状態で、スピードが求められるようになりました。また、テクノロジーの進化で電子メールやスマートフォンのような便利なものが登場して、いつでも連絡できるようになったことも要因の一つだと思います。
ウイングアーク1st 久我温紀氏(以下、久我氏):僕はあまり状況は変わっていないと思います。「モーレツ社員」という言葉があったころと違うのは、「高揚感」だと思います。当時はどんなに忙しくても「自分たちの生活が良くなっていく」「日本が発展することに貢献している」と思えていたのが、今はその勝ちパターンがくずれてしまいました。それなのに、いまだに人力だけでそれ以上の成果を達成しようと考えている。その結果疲弊しているのではないでしょうか。
片桐氏:日本の組織は、業績が悪くなると引き締めにかかる傾向がありますね。ルールをさらに厳格化してしばっていく。外資系企業での就業経験が豊富な安藤さんは、どうお考えでしょうか。
安藤氏:うーん、どう働くかを厳格にルール化するのは難しいですよね。田中さんがおっしゃったように、スマートフォンのような便利なものが登場して、私たちを忙しくしているのは事実だと思います。でも、恩恵もあるので文句は言えません。大事なことは「自分を律すること」ではないかと思います。いつでもつながっていて仕事を強制終了する理由がなくなったから、自分自身で仕事を終えるタイミングを決めなければなりません。
また、よく日本との比較に出されますが、海外の人たちも決して働いていないわけではありません。むしろものすごく働いている。昼食を2時間かけて食べているわけでも、昼からワインを飲んでいるわけでもありません。働き方に違う点があるとしたら、彼らは「全部自分で決めていること」だと思います。夏休みは3週間家族と一緒にバカンスを取っているかもしれないですが、緊急のメールが来て大事な要件だと判断すればちゃんと返事をしています。
ゴールだけ決めて、そこまでの手段は自分で決めればいい
久我氏:僕は「働くことと生活は一体だ」と思っています。原始時代にさかのぼるとすごくわかりやすくて、おなかがすいたら、獲物を探しに行きますね。面倒くさいからやらないということはありません。その場合、モチベーションも必要なくて、とにかく生きるために獲物をしとめに行くことになります。獲物はしとめられればOKで、手段や作法にはこだわりません。
実は私が当社の営業組織再生に取り組んだ当初、3年間営業予算未達で、2年連続前年割れという状態でした。対策を講じるために営業時間の分析をしてみると「分析作業や集計作業に多くの時間が使われていた」ことが判明しました。そこで、データ活用ソフトウェアを効率的に使うようにすると業績は回復。残業時間が21%減ったにもかかわらずアウトプットは増えて、今は2桁成長を続けられるようになったのです。
田中氏:定量的に把握することは重要ですね。気合と根性で乗り切るというのはありがちなパターンですが、最初は盛り上がるものの続かないのが現実です。
久我氏:現在当社は「データとテクノロジーで世の中を変えていく」というミッションを掲げ、それをやりとげるために事業計画があり動いています。そのための手段を考えるのはハードですが、特に“こうでなければいけない”ことはないので自由に考えることができます。たとえば顧客に100件電話をするのがゴールなのではなくて、顧客とホットラインを築くのがゴールなのです。
田中氏:そうですね。「成果主義を導入すると、特定の従業員がサボってしまうのではないか」といった議論がよく出ます。しかし、ゴールがあって、そのゴールにコミットさえできれば、どういう手段を取ろうが構わないと思います。それこそ、サボったっていいかもしれません。
そこを手段まで関与しようとして、手段がゴールになってしまうから問題になるのです。そもそも多くの企業で「何をもって働くとするのか」が十分議論できていないように思います。
日本人の3つの特徴
安藤氏:外資系企業でさまざまな国の人と仕事をしていると、その間ずっと「日本人って何なんだろうな」と考えます。
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