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  • 2019/02/04 掲載

これから漁業の“逆転劇”が始まるワケ、もう「衰退産業」とは言わせない

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水産業は、世界的にみれば養殖を中心に成長しているが、かつて世界一の漁業国だった日本は、残念ながら水産業は衰退産業の様相を呈している。そんな中、2018年12月に改正漁業法が公布された。漁獲量などの規制強化と、漁業許可制度や漁業権などの規制緩和が同居する内容で、成長産業化を目指す政府の「水産改革」がいよいよ本格化する。日本の水産業にも、水産物輸出額の伸び、就業人口の若返りの兆し、漁業とITが結びついた「漁業テック」のようなイノベーションの波動など、未来への希望の光も見えている。
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境漁港でのサバの水揚げ
(©photojapan - Fotolia)


2019年は「水産業改革元年」になるか?

 2018年12月14日、「漁業法等の一部を改正する等の法律」が公布された。

 この改正漁業法では、「TAC(漁獲可能量)制度」のもとでの漁獲量管理対象魚種の拡大、TAC制度を漁業者、船舶ごとに割り当て、割当量を超える漁獲を禁止する「漁獲割当て制度(IQ)」の導入や、密漁への罰則強化のような規制の強化が図られている。

 その一方で、漁業許可制度の見直し、漁業権制度の見直しによる養殖漁業、沿岸漁業の規制緩和、漁協改革なども盛り込まれた。

 安倍内閣の「農林水産業・地域の活力創造本部」では「農林水産政策改革の検討結果等及び農林水産業・地域の活力創造プラン改訂案」を審議しているが、そこでは水産業を地方創生の大きな柱の一つと位置づける。

 2019年、漁業法の改正により「水産改革」もいよいよ本格化する。農業や林業がそうだったように、企業の新規参入、ITなどを活用したイノベーションも期待され、「水産業改革元年」と言ってもいいような大きな転換点を迎えようとしている。

日本の漁業は、長期低落の衰退産業

 だが、日本の水産業の現実は厳しい。

 水産業を大きく分けると、海や川や湖に生息している天然の魚介類をとる「捕獲漁業」と、魚介類を人工的に飼育して出荷する「養殖(栽培漁業)」がある(「捕獲漁業」「養殖」どちらも海草類を含む)。

 FAO(国連食糧農業機関)の世界統計によると、近年の捕獲漁業の生産量は80年代からほぼ横ばいだが、養殖の生産量は右肩上がりで伸びており、2010年から2016年までの間に35.7%成長した。1988年比では6.8倍になっている。現在、捕獲漁業と養殖は生産量でほぼ肩を並べていて、逆転は時間の問題だといわれている。養殖が拡大したことで世界の水産業生産量(合計)も、2010年から2016年までに16.4%の成長をみせた。このように水産業は世界的にみれば「成長産業」に属している。

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世界の水産業生産量の推移

 しかし、日本はそうではなく、数字の上でははっきりと、水産業は長期低落の「衰退産業」の様相を呈している。農林水産省の統計によると、2013年に477.4万トンだった水産業生産量は、2017年には430.4万トンで、4年間に9.8%減少した。ピークだった1984年の1282万トンと比べると約3分の1で、国別では世界第1位から第7位に後退した。

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日本の水産業生産量の推移

 水産業の生産量が減っている主な理由は、日本は世界的に伸びている養殖(海面・内水面)の生産量が104.7万トン(2017年)で全体の24.3%しかなく、海面での捕獲漁業が主体だからだといわれる。

 捕獲漁業の課題は多く、操業が国連海洋法条約で定められた排他的経済水域(EEZ)に制約され、クロマグロなど水産資源の国際的な漁獲規制の動きを受けて国内でもTAC(漁獲可能量)制度が設けられ、原油価格の高騰が燃料費高騰に直結して採算が悪化し、さらに人口の高齢化による人手不足に悩まされている。

「和食」は文化遺産、輸出には希望が見える

 とはいえ、日本産の水産物の輸出金額は伸びている。財務省の「貿易統計」をもとに農林水産省が作成した統計によると、2012年の1698億円から2017年の2750億円へ、5年間で61.9%も増えた。

 その背景にあるのは為替の円安だけではない。2013年12月、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたが、日本を訪れて、あるいは世界各国の日本料理店やスシバーなどで、魚種が豊富で安全で高品質な日本産の魚介類を味わった人は、きっとまた食べたくなるはずだ。

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日本の水産物輸出額の推移

 農林水産省は2019年に農林水産物・食品の輸出額を1兆円の大台に乗せる目標を掲げて輸出振興を推進している。水産物は鮮度が重要なので輸出拡大には障害も少なくないが、低迷する魚価の上昇にもつながるため、長期低落傾向の日本の水産業にとって輸出の伸びは、大きな希望と言える。

【次ページ】漁業+ITの「漁業テック」の挑戦者たち
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