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  • 2019/03/26 掲載

なぜコンテナ活用が難しいのか? 6つの「誤解と真実」を解説 

ガートナーが指南

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マイクロサービスなどアプリケーション側のテクノロジー進展により、ITインフラに求められる要件が大きく変わりつつある。近年になり存在感を増しているのがコンテナ技術だ。コンテナとは具体的にどのような技術なのか。また、どれほど利用が進み、活用を通じてどんなメリットを期待できるのか。ガートナーのシニア ディレクターでアナリストを務める桂島航氏が、CIOやITリーダーが理解しておくべきコンテナの現状と価値、管理方法など、幅広い疑問に答える。
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コンテナ利用が加速しているのはなぜか
(©gui yong nian - Fotolia)

コンテナとは何か

 「コンテナ」とは、複数台のハードウェア上でアプリケーションの柔軟な移動を実現する仮想化技術の1つである。今、このコンテナに対する関心が、企業の間で急速に盛り上がっている。

コンテナは何を解決するか

 コンテナが盛り上がる原動力となっているのが環境を立ち上げ、利用できるようになるまでの“迅速さ”だ。

 そのために要する期間を見ると、物理サーバは、1~数カ月、仮想マシンでも数分~数日だった。対して、コンテナは数ミリ~数秒とまさに桁違いである。

コンテナの技術的な特長:スピードの向上
テクノロジー デプロイ時間 典型的な稼働時間
物理サーバ 1~3か月 3~5年
仮想マシン 数分~数日 数週~数カ月
コンテナ 数ミリ秒~数秒 数分~数日
サーバレス 数ミリ秒 数ミリ秒
(出典:ガートナー)

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ガートナー
シニア ディレクター
兼アナリスト
桂島航氏
 桂島氏は、「最新技術のサーバレスでも数ミリ秒。それと比べても少しばかり遅い程度です。クラウドシフトが進む中、頻繁なアップデートに伴うダウンタイムが仮想マシンの利用の足枷となりつつあります。しかしコンテナであればこの問題の抜本的な解消を見込めるのです」と解説する。

 IBMがRedHatを買収したことは記憶に新しい。また、VMwareも2018年に、オープンソースのオーケストレーションシステムであるKubernetesベンチャーの「Heptio」を買収。これらの狙いもコンテナ技術の獲得にあるという。

 一方で、企業のITインフラでは「クラウド・ファースト」と、それに伴う「保有するデータセンターの減少」も進む。

 「これらを総合的に勘案すると、コンテナへの関心の高まりは一過性のブームでないはずです。つまり、技術革新に伴う戦略的な対応の一環と言えるのです」と桂島氏は説明する。

コンテナ利用をけん引する仮想化技術

 コンテナは、仮想的なアプリケーションの実行環境に加え、そのためのリソースを準備した「コンテナ」をサーバ上に提供する仮想化技術だ。

 その特徴は、一般的なサーバ仮想化ではホストOS上にハイパバイザーを用意し、ハイパバイザーがHDDやメモリ、CPUなどのリソースを制御することでゲストOSを稼働させる。

 これに対して、コンテナではゲストOSを抜きにアプリケーションを実行できることである。それだけオーバーヘッドが少なく、それがひいては立ち上げの迅速さにつながっているのである。

 コンテナはインフラ/運用とアプリ開発の担当者に次のようなメリットももたらすという。

 まず前者にとっては、仮想マシンより“軽い”ことで処理速度が速く、稼働に要するサーバが減ることで、インフラ整備コストの削減できることである。

 起動の高速さから可搬性にも優れており、マルチクラウド環境での運用にも適している。

 また、アプリ開発者にとっては、小規模なコンポーネントで組み合わせるマイクロサービスや、コンポーネントの継続的な開発/改修によるアプリ開発手法のDevOpsに向いているのが最大の魅力だ。結果、開発生産性の向上を見込むことができる。

「コンテナはその迅速さから特にモード2の開発に向いています。その点からも、クラウドへの移行時やDevOpsの導入時に、アプリケーション・チームを巻き込みつつコンテナの採用戦略を策定することが利用に向けたポイントになります」(桂島氏)

コンテナに関する誤解

 一方で、コンテナに関しては「エンタープライズでの採用はほとんどない」「コンテナは本番系にはまだ早い」といった見方も現時点で根強い。だが、こうした意見を桂島氏は真っ向から否定する。

●コンテナに関する誤解●
・エンタープライズでのコンテナ採用はほとんどない
・コンテナは本番系にはまだ早い
・コンテナはマイクロサービスにのみ使われる
・コンテナは仮想マシンを置き換える
・コンテナはセキュアではない
・コンテナはサーバレスにすぐに置き換えられる

コンテナ採用の現状

 事実、グローバルでのコンテナの本番系における採用に関するガートナーの調査によれば、「実装済み」の企業は約4割に達している。

 「2018年度末までに」を含めると約8割。利用意向は特にアプリケーション・チームで強く、2018年度末までに採用割合は9割に達するもようだ。

「グローバルでの調査のため、日本は総じて遅れていることは確かでしょう。全システムの一部でしか利用されていないケースも考えられます。しかし、本番系での着実な採用の広がりは調査結果からも明らかです。中でもFinTechが進む金融業界の動きは急です」(桂島氏)

コンテナに関する真実

●コンテナに関する真実●
・グローバルではエンタープライズで採用が始まっている
・コンテナは本番系でも使われている
・コンテナは既存のアプリケーションにも使われる
・コンテナは仮想マシンと併用されている
・コンテナでもセキュリティを確保できる
・サーバレスとコンテナは併用されていく
 一方で、「コンテナはマイクロサービスに使われる」との意見は半ば正しい。これまでの主な目的はクラウドネイティブなアプリ開発や、マイクロサービスによるスケーラビリティの実現が主であったからだ。

 だが、ここにきてコンテナの活用法が広がっている

 具体的には、ライフサイクルの高速化を狙いとしてレガシーシステム開発や、可搬性を生かしたハイブリッド・クラウド化、SOA(サービス指向アーキテクチャ)に基づくサービスへの分解などだ。

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コンテナのユースケース

「IBMが自社の全ミドルウェアのコンテナ対応を表明するなど、ベンダー側もここにきて対応を加速させており、このことも普及に向けた追い風となっています」(桂島氏)

【次ページ】難しい「コンテナ管理」にどのように対処するか
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