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- 2018/10/18 掲載
スクエニが生解説、「AIがもたらしたパラダイムシフト」とは?
CEDEC 2018 レポート(前編)
「AI導入」は多く見て1割
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が2018年6月に発表した「AI社会実装推進調査報告書」によると、「AIをすでに導入している」「実証実験を行っている」と合わせても、全体の1割であることが明らかになっている。それは、「AI導入がうまくいった」という事例が、ニュースになっていることからも分かるだろう。また、AIの導入状況については、企業規模により明確な差が出ていることが分かっている。
うまくいかない理由はもちろんケースバイケースだが、リテラシーが広まっていない、人材(スキル)が足りない、ことは共通課題として挙げられる。
実際、SiriやGoogleアシスタント、スマートスピーカーは身近な存在になりつつある。ただ、それらはこちらのリクエストにこたえてくれる存在で、それ以上ではない。社会実装といったとき、たとえば仕事を代わりにしてくれる、助けてくれるような、人と協働するAIが自然にまわりある光景なのではないだろうか。
一方、メディアが取り上げるAIのイメージは、いまだに「脅威」を伝えるものが多い。では、本当のところ、AIを業務に取り入れることで何が可能なのか、そのための障壁は何なのか。聞きたいのは“本当のところ”だ。
8月に行われた、ゲーム開発関連の技術をテーマにしたカンファレンス「CEDEC」で各社のAIエンジニアが登壇したセッション「パネルディスカッション:ゲーム開発における、機械学習の応用」では、ゲーム業界でAI導入に取り組む当事者達による機械学習の導入、そして活用の実際が語られた。
ゲーム業界という限定した領域の話ではあるが、具体的なユースケースから学んだことをお伝えする。
機械学習によって起きたパラダイムシフト
まず、モデレーターを務めたスクウェア・エニックス テクノロジー推進部 ジェネラル・マネージャーのレミ・ドリアンクール氏より、テーマである機械学習についてのレクチャーがあった。近年のディープラーニング(深層学習)という手法がブレイクスルーとなり、いま非常に注目されているが、「機械学習」自体は決して新しい概念ではない。そもそも「ディープラーニング=機械学習」ではなく、機械学習の1つの方法としてディープラーニングがあるという位置づけだ。では、機械学習の何が"すごい"のか?
ドリアンクール氏は、機械学習とエンジニアリングをアプローチの違いから解説する。従来、エンジニアリングでは「Xという入力に対して何らかのY出力をしたい場合にF関数をどう作るか」というアプローチを取る。Y出力を得るために、F関数として認識や制御の生成、予測といったさまざまな問題をとらえ、実装する。一方、機械学習では、Fという関数は自動的に計算が改善されるというアプローチだ。
つまり、これまでエンジニアが手で解いていた問題は、データとコンピュータの計算に置き換えられることになる。経験から取得した知識を活かし、強度を調整するという、自然の中にある人間(動物)の一般的な学習を機械自身が行う。だから、「機械学習」なのだ。
【次ページ】ゲームの中のAIとゲームの外のAI
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