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暴言を吐いたり、仲間をいたぶる、「職場のアホ」が世界中の職場にはびこっている。こうしたアホと対峙する方法を研究している「アホ先生」こと、スタンフォード大学のロバート・サットン教授曰く、もしアホに反撃するなら慎重に武器を用意し、作戦を立てることが必要だという。
「力」「証拠」「仲間」を用意せよ
はじめに念を押しておきたい。反撃するときは慎重にしてほしい。くれぐれもカッとなって衝動的な行動に走らないことだ。
人をゴミ扱いするようなヤツと戦うには、それなりの準備が必要になる。そんなアホと戦うために、まずはあなたに武器がどれくらいあるかを知っておこう。
武器になるものは3つ。「力」「証拠」「仲間」だ。順番に説明しよう。
用意するもの(1):「力」
反撃したいヤツに比べて、あなたにはどれくらい力があるだろうか。
もしあなたの力のほうが弱いなら、選択肢は少なくなるし、反撃したときのリスクは高い。その場合は、カッとなってとっさにやり返すのは何としても避けたほうがいいだろう。
一例として、「ひどい上司を罵倒したせいでクビになるかもしれない」と相談してきた男性のケースを見てみよう。
その男性は上司に仕事ぶりをバカにされ、頭にきて思わず「このバカやろう!」と怒鳴ってしまった。おまけに、たまたまそばにいた上司の上司にまで「こんなアホをのさばらせているのは、あんたの監督不行き届きだ!」とぶちまけた。
そのメールを読んで、私は「すぐに謝ったほうがいい」と返事をした。なんといっても、力のある人間を2人も侮辱してしまったのだ。だが、男性はいやだと答えた。
「もともと向こうがひどいことを言ったせいなんです。私は悪くない」
その気持ちはわからなくもない。
しかし上司がどれだけ意地悪だろうと、この場合はかんしゃくをこらえ、ひとまず事態を沈静化させてから、慎重に反撃法を探すべきだった。結局、その男性はかたくなな態度をとり続けたせいで、ますます上司たちの怒りを買い、社内処分を受ける羽目になった。
とはいえ、力があるからといって過信するのも禁物だ。
以前、大企業で新しく人事部長になった女性が「横暴な管理職連中をクビにするつもりだ」と話してくれたことがあった。それを聞いて私は「部長になって数カ月なら、あまり性急に動かないほうがいい」と忠告したが、彼女は「CEOが味方についているから大丈夫」と自信満々で答えた。
しかし、事態は彼女の思いどおりにならなかった。
クビにされそうになった陰険な管理職たちはCEOにうまく取り入り、自分たちより人事部長のほうがよっぽどひどいと説き伏せてしまったのだ(アホどもはこういう術策にたけている)。
こうして数週間後、クビにされたのは彼女のほうだった。
用意するもの(2):「証拠」
確実な証拠がたくさんあればあるほど、「言った、言わない」の争いを避けることができ、有利にことを進められる。
上層部や人事部に相手のひどい行状を訴えるにしても、しっかりとした証拠があれば主張を認められやすくなるだろう。もし社内で冷たくあしらわれても、労働組合や法的手段、またはメディアへ訴えるときに強力な武器になってくれるはずだ。
だから、あなたがアホと戦う気持ちを固めているなら、メールやソーシャルメディアでのやり取りを保管することをお勧めしたい。
それから何があったかをまめにメモしておくこと。写真やビデオで証拠を残せればなおいいだろう。被害に遭っているほかの同僚にも証拠を残すように言っておこう。
たとえば、FOXニュースの元キャスター、グレッチェン・カールソンは会話を録音していたおかげで、セクシャルハラスメントの事実を認めさせることができた。
2016年7月、カールソンは同社のCEOロジャー・エイルズから性的関係を迫られ、それを拒否したせいで不当に解雇されたとして提訴した。だが当初、CEOのエイルズはそれをきっぱりと否定した。FOXの経営陣も「エイルズ氏を全面的に信頼する」とコメントを出した。
しかしそれからまもなく、事態は逆転した。
CEOのエイルズは辞任に追い込まれ、2カ月後の9月、FOX側は元キャスターのカールソンに和解金2000万ドルを支払うことに同意したのだ。
それは1年半の間、カールソンがエイルズとの会話をひそかに携帯で録音していたおかげだった。会話の中で、実際にエイルズは性的関係を迫っていたのだ。それが決定的な証拠になった。
用意するもの(3):「仲間」
ときにはあなた1人で戦わなければならないこともあるだろう。だが、ほかにも加勢してくれる人がいれば、勝つ確率はぐんと上がる。仲間がいればより強くなれるし、苦しいときでも励ましあいながら戦える。それに、あなたの話が単なる「被害妄想」ではないという証拠にもなるだろう。
スタンフォードの教授が教える 職場のアホと戦わない技術。画像をクリックするとアマゾンに移動します
ノースダコタ州立大学のパメラ・リュートゲン=サンドビックの研究によると、虐げられている社員が結束して戦った場合、上層部は加害者の58%を罰し、被害を訴えた人は誰も解雇されなかった。一方、1人で戦うと状況はかなり不利になった。加害者はたったの27%しか罰を受けず、反対に被害者は20%が解雇されたのだ。
仲間といえば、過去に同じ人間に苦しめられた人も貴重な支援者になってくれるだろう。たとえば、ある大学の博士研究員は所属する研究室の教授がひどく意地の悪いことに悩み、前に研究室にいた人を探して相談してみた。すると、その人はすぐに事情を察して博士研究員を精神的に支え、ほかの研究室に移る手助けをしてくれたという。
さて、これで武器の準備はできた。
次は具体的な戦い方だ。弊著『
職場のアホと戦わない技術』ではいくつか列挙しているが、ここでは「ヤマアラシ作戦」を紹介しておこう。
【次ページ】アホを撃退するヤマアラシ作戦とは?
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