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エンタープライズ情報管理(EIM)ソリューションをグローバルで提供し、NASDAQにも上場しているオープンテキスト。同社取締役副会長、最高経営責任者 兼 最高技術責任者を務めるマーク・バレンシア氏は、3つの技術に注目している。Internet of Everything(あらゆるモノのインターネット、IoE)、仮想通貨、AIだ。経営者はその技術をどう活用すればいいのか。バレンシア氏に話を聞いた。
執筆:中村 仁美、聞き手・構成:編集部 佐藤 友理
執筆:中村 仁美、聞き手・構成:編集部 佐藤 友理
絶対はずせない3つの技術
──今注目なさっている技術をお教えください。
バレンシア氏: IoE、仮想通貨、AIです。
まずはIoEのことから話しましょう。今から5~10年後を想像してみてください。今、世界中でインターネットに接続している人の数は50億人、接続デバイス数は1兆個といわれています。この数は今後さらに増大していきます。
このような状況が進むことで、社会に大きな変化が訪れています。変化の第一がパーソナル化の流れです。それに伴い、個人の権利を守るという流れも進んでいます。
今は行動履歴データがどんどん収集される時代です。中国ではセサミ・クレジットと呼ばれる個人の信用度を数字で算出するサービスが登場しています。
もう1つの変化はイノベーションが生まれ、シェアリングエコノミーがどんどん拡大していくことです。そのほかにも教育機会も増し、ゆくゆくは長寿社会がさらに拡大していくと考えています。
仮想通貨の価値は「コスト削減」にある
次に仮想通貨について。仮想通貨はこの社会に大きな影響を及ぼすといわれています。世界経済フォーラムで話題になったことをお話ししましょう。
今、私たちは普通の銀行取引やクレジットカードを使うときに手数料を取られます。手数料はフリクションコストと呼ばれますが、その規模は1兆ドルに達するといわれています。そして仮想通貨が使われるようになると、この1兆ドルにも及ぶフリクションコストがなくなり、その分のお金は市場に解き放たれるのです。なぜなら、取引の真偽はP2Pで担保されるようになり、そこに銀行やカード会社は必要ないからです。
中国では11月11日を独身の日としており、その日にアリババでは220億ドルのビジネスが展開されるそうです。もし、これが銀行経由で取引されると、3%の手数料が取られるため、それだけで6億6000万ドルのコストがかかってしまいます。仮想通貨であれば6億6000ドルのコストが0になる。これは社会にとって非常に大きな変化だといえるでしょう。
──仮想通貨の重要性は手数料がなくなるこということでしょうか。
バレンシア氏: 通貨そのものがデジタル化されるメリットは、フリクションコストを支払う必要がなくなり、そのための資金がほかの用途に使えるようになるということです。
多くの経営幹部が今着目しているのは、必要のなくなる1兆ドルのフリクションコストをどこに活用するのかということなんです。
AIが日本経済を救う
──続いてAIを選択された理由を教えてください。2018年はAIを誰でも使えるようにするという「AIの民主化元年」ともいわれています。
バレンシア氏: そうです。AIはさまざまな企業で活用され始めています。まさに新しいコンピュータ時代が到来したのです。
コンピュータの歴史を振り返ると、メインフレーム時代からクライアントサーバーシステム時代、インターネットの時代、デジタル時代へと続き、今はコグニティブ時代に入っています。
コグニティブ時代のコンピュータは、与えられた情報を処理したり、自動化や効率化したりするだけではなく、人のようなインテリジェンスが求められます。
そのカギを握るのがビッグデータと機械学習です。収集した大量のデータを用いて機械学習させ、コンピュータ自身が理解・学習し、より賢くなっていく。
そこから得た分析やインサイトを各企業の事業部または個人で活用するのです。工場であれば機械の予防保全として何をすべきなのか、農業であればどういった作物を植えるのが有益なのか、AIを通じて判断できるようになるなど、さまざまな活用事例が考えられます。
あらゆるものにAIが搭載され、賢くなることで、オフィスワーカーの仕事は減っていくでしょう。AIを活用した方が理にかなっている業務があるなら、経営者はいますぐ行動を起こすべきです。
たとえば営業にAIを応用するなら、より精度の高い売上予測を立てることができるようになるかもしれません。また有形資産の運用にAIを活用すれば、より効果的な運用ができるようになるかもしれません。とにかく早くAIを活用できそうな業務を洗い出して、行動に移すことが大事です。
AI活用は一企業だけの問題ではありません。少子高齢化が進む日本の競争優位を確保する手段の1つが、データと分析能力を持ってAIを活用することだと捉えています。日本人は分析思考でもあるし、データの管理やコントロールする技術にもたけていますからね。
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