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長く運用するエンタープライズシステムは、ガラパゴス化しがちだ。急激に進化するクラウド技術や社会環境の変化が、ガラパゴス化にさらに拍車をかける。今こそ、エンタープライズシステムを総点検し、山積する課題を解消し、デジタライゼーションを強化しなければならない。アイ・ティ・アール(ITR) プリンシパル・アナリスト 浅利浩一氏は、そのポイントとして「ムダ」「ムラ」「ムリ」の解消すること、また、現在のシステムがなくなったと仮定して考えるアプローチを勧める。
エンタープライズシステムの「ガラパゴス化」
エンタープライズシステムは、ひとたび構築すると長く運用する。10~20年単位の稼働はザラだ。そのため、いろいろな課題を抱えがちだと浅利氏は語る。典型的な現象はシステムの「ガラパゴス化」だ。
「気がついたら現代のIT潮流から取り残されていた。使用している中核技術がこの先の成長を見込めないというケースが、エンタープライズシステムでは往々にして生じています」(浅利氏)
あるいは、日本市場に特化した国産パッケージを使用している場合も、同様のリスクにさらされることになる。
そして、システムのガラパゴス化は、海外進出やグローバル化の妨げになる。
今日、日本は多くの業界で市場飽和に直面し、海外に活路を求める企業が増えている。その際、グローバル標準ではないシステムを使っていると「ロールアウト」しづらくなるのだ。そのため最近では、海外で標準システムを構築し、それを日本に「ロールイン」する企業も出現しているという。
クラウド活用にも課題がある。導入は進んでいるものの、場当たり的でサイロ化してしまっているため、規模の経済を生かせていない。また、いまだに手作業やExcelを使った労働集約的な業務が随所に残っており、それが効率化を阻んでいるという。
さらにエンタープライズシステムは、社会環境の変化への対応も求められている。労働人口は減少の一途をたどっており、ベテランから新世代への技術継承も円滑に進んでいない。産業デジタル化の要請も高まるばかりだ。
ポイントは「ムダ」「ムラ」「ムリ」をなくすこと
こうした中、浅利氏がすすめるのが、現在のエンタープライズシステムの総点検と改善だ。そのために同氏の示した指針が、「ムダの排除」「ムラの解消」「ムリの解決」という3つである。
ムダの排除の端的な例が、システムの廃止だ。導入時には必要でも、時間の経過とともに付加価値の下がったシステムは思いきって廃止してはどうかと浅利氏は提案する。
また、浅利氏はデータ入力優先型システムも問題だと指摘する。日本独特の慎重な合意形成文化のため、データの正確性が重視されすぎて情報共有までに時間がかかってしまうという指摘だ。
「7割近くはデータ入力・承認プロセスにコストがかかっています。この負荷と時間を削減し、人間が協働すべき業務や意思決定にもっと時間を配分すべきです」(浅利氏)
もう1つのムダが、Excelの利用だ。業務プロセスの随所にExcelによる手作業処理が入り込んでいるため、業務処理が分断され、二重入力などのムダも生じている。浅利氏は次のように述べて、現状のExcel多用文化への再考を促した。
「Excelは優れていますが、基本的にはポイントでのデータ活用ツールです。データを起承転結で履歴を残し、流れを追っていくことには向いていません」(浅利氏)
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