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「国内IT投資動向調査2018」によると、2017年度、IT予算を増額させた企業の割合はリーマンショックの影響を受けた2009年度以来最高の34%に達した。また、2018年度に新規投資が期待されるテクノロジーでは、前回に引き続き「IoT/M2M」「AI/機械学習」が多くの業種で注目されていることが分かった。また、RPA市場規模推移および予測も発表された。
企業IT 4つのトレンド
ITR 取締役 シニア・アナリストの舘野真人氏によると、2017年のITトレンドは大きく4つ。
1つ目は「IT予算の回復」、2つ目は「IT支出におけるリスク対策費用の高止まり」、3つ目は「IT部門における新技術の推進」、そして4つ目が「AI、IoTなどの技術に対する『試してみる』姿勢が定着しつつある」だ。
ITRでは、2001年度からIT予算増減傾向を調査している。これを見ると、2008年のリーマンショックでIT予算に対する割合が一気に減少ことがわかる。しかし今年度、リーマンショック前の水準まで回復している。
IT予算額に対するリスク対策の費用割合に目を移すと、「情報セキュリティ対策費用」「災害対策費用」「IT内部統制向け費用」が2013年度から増加を続けており、増加したIT費用をリスク対策に向けるという企業の動きも見える。その一方、リスク対策は直接売り上げをもたらすものではないので、成長の足枷になっているのでは、と見る向きもある。
こうした中で、既存のIT部門への期待は膨らむ。デジタルトランスフォーメーションのパートナー・ITの推進役として、どれだけIT部門が存在感を発揮できるかが問われているのだ。
問われるIT部門・ITベンダーの存在感
ITRはIT部門の関係者に「IT支出に対するIT部門の決定権」の大きさを感覚値ベースで調査している。これはあまり変化がなく、その平均値は2015年には43%、2016年には45%、2017年は44%となっている。
一方、企業が抱える課題テーマにおいて推進役を担うべき組織を考えたとき、IT部門に対する期待にはばらつきが見られる。
「クラウドサービスの導入・利用拡大、サイバー・セキュリティ被害への対応では、IT部門に対し50%を上回る期待が見て取れますが、AIやIoTの導入、RPAによる業務の自動化やデジタル・ビジネスの創出、働き方改革などいった先進的なテーマに関しては、『IT部門が中心的な役割を担うべき』とする回答の割合は50%を下回り、こうした課題テーマは既存のビジネス部門が担うべきだという考えも多い状況です」(舘野氏)
社内のIT部門と同様、パートナーとしてのITベンダーへの期待にも変化がみられる。
「課題テーマ別に重視するパートナーを企業にヒヤリングしたところ、これまで付き合ってきたベンダーも重視されていますが、AI、IoT、RPAの活用となると、技術に特化した専門ベンダーと組みたいという声も出てきています」(舘野氏)
こうした「専門ベンダー」の中心はベンチャー企業だが、大手ベンダーの子会社や、ジョイントベンチャーも含まれる。
企業とAIの付き合い方にも変化が見られる。ソフトウェアのオープンソース化が進み、多くの技術がコモディティ化し、企業が自力でAIに着手できるようになってきたものの、自社データを集めて、AIを学習させるDIYな導入が減っているのだ。企業は目的がはっきりした上である程度パッケージ化された技術を企業が導入する傾向にある。
「現在、多くの企業の上層部がITで新しい取り組みを始めるよう、各部署にプレレッシャーをかけています。そして、この『新しい取り組み』の多くは『効率化』を指しています、企業のAI導入もIoT導入も、目的は『成長』よりも『効率化』に向いています」(舘野氏)
【次ページ】企業の投資トレンドは? RPA市場は4年で82億円規模に成長
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