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  • 2017/08/07 掲載

JPNEAZY 金田雅人氏に聞く、2000万人超の「レストラン予約難民」を助ける方法

民泊の活用がカギに

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訪日外国人旅行(インバウンド)の観光客数が2000万人を突破し、政府は2020年にインバウンド旅行者数4000万人の目標を掲げている。インバウンド旅行者にとって「レストラン予約」は大きな課題だ。伝統的な日本食レストランは日本語による電話予約が主流で、旅行者が直接予約するのは大きな障壁があるからだ。そこで、民泊を利用するインバウンド旅行者向けにレストラン予約のコンシェルジュサービス「JPNEAZY(ジャパニージー)」を提供するのがFesbaseだ。同サービス開発の経緯や狙いについて、同社 代表取締役 金田 雅人氏に話を聞いた。
(聞き手/構成:編集部 中島正頼、執筆:阿部欽一)

photo
Fesbase 代表取締役
金田 雅人氏

動画での紹介に限界を感じ、「行動」をサポートへ

──まずは、金田さんのこれまでの経歴と、今回「JPNEAZY」を立ち上げようと思った経緯について聞かせて下さい。

金田氏:前職である楽天では、楽天市場の事業戦略部のマネージャーや、楽天欧州本社の発足に関わり、その後、新経済連盟 プランニング ディレクターとして「新経済サミット」に携わってきました。

 新経済サミットは、新経済連盟の活動の柱である「イノベーション」「アントレプレナーシップ」「グローバリゼーション」を象徴するイベントです。「日本を観光立国にする」というのもテーマの一つであり、自分自身、ヨーロッパでの赴任経験もあったことから、一生をかけてもいいテーマと考えていました。

 そこで、最初は動画メディアを立ち上げて、外国人向けにいろいろなレストランや観光地を紹介する短編動画を制作しました。でも、動画には限界があることを感じたのです。

──どんな限界だったのでしょうか?

金田氏:動画を見た外国人から、「どこにあるのか」「どうやっていけばいいのか」といった問い合わせをもらうことが多かったのですが、動画では、実際に彼らが動くときのサポートができません。結局のところ、「行動」に対するサポートが必要だと考えたのです。

日本食をより楽しんでもらうため、AIと人力を融合

──そこで2017年4月23日にサービスインしたのが「JPNEAZY」ということですね。

金田氏:インバウンド旅行者向けの「AI予約アシスタントサービス」と銘打っています。外国人旅行者が日本旅行で最も楽しみにしているのは「日本食」だというデータがあります。

画像
日本旅行で最も楽しみにしているのは“日本食”

 しかし、言葉の壁などから「予約を自分で取れない」課題や悩みがありました。ホテルにはコンシェルジュがいますが、民泊にはコンシェルジュがいません。

 そこで、個人旅行、民泊向けにレストラン予約のコンシェルジュサービスを提供するのがこのサービスです。仕組みはシンプルで、2つの機能があります。1つ目は「行きたいお店が決まっている人に予約代行する」サービスです。そして、2つ目は、チャットによってその人にあったレストランをレコメンドする機能です。

 このレコメンド機能に、AIを搭載したチャットボットを導入することを目下準備中です。

──AI開発はどういう状況にありますか?

金田氏:今、人が対応しているチャットのやり取りを、機械学習のための「教師データ」として整備しているところです。

 たとえば、旅行者が「渋谷でお寿司を予約したい」と英語で尋ね、それに対し「この店はどうか?」と提案するやり取りの中で、「場所」「食のカテゴリー」「キーワード」を自然言語処理でピックアップし、最適な回答をマッチングする、その回答プロセスを「問答集」のようなDBにするために、日々のサービスを通じて実際のやり取りのデータを集めているところです。

──教師データとしては、どの程度のデータ量が溜まれば十分でしょうか?

金田氏:どういう質問が入ってくるかによります。今、月間応対数は約1000~2000件くらいです。そこで分かってきたことは、質問の約8割は定型的な回答が可能な「単純な質問」で、これらはAIで代行が可能だということです。

 そして、残りの2割が、定型外の、例外的な質問になります。こうした質問への応対は、ある程度データの蓄積がないとAIでの対応が難しい領域です。私たちは、こうした例外的な領域には人力での対応にスイッチする余地を残しておこうと考えています。

──アナログの部分が非常に重要なのですね。レストランでも、近年はオンライン予約が当たり前になっているようにも思いますが。

金田氏:統計をとってみると、旅行客が予約を取ってまで行きたいお店というのは、いわゆるハイエンドなお店で、こういうところはオンライン予約には対応していないところが多いのですね。

 だからといってオンライン予約対応のお店だけに絞って紹介すると、利用者が本当に行きたい店が紹介できない場合があります。ですから、最初は泥臭くても、予約は電話で取ることを重要視しています。もちろん、ゆくゆくはオンライン予約のプラットフォーム会社と提携するなどして、オンライン比率を高めることは考えています。

民泊代行会社に付加価値を付けるBtoBtoCモデル

──JPNEAZYのビジネスモデルについて教えてください。マネタイズはユーザーからですか?

金田氏:民泊の運営を代行する代行会社と協業という形で、ユーザーにとっては、代行会社の付加サービスの一つとして提供されます。民泊代行会社の業務を一部代行するBtoBtoCモデルで、ユーザーは完全無料で利用でき、代行会社からコンシェルジュ利用料として売上の数%をいただくモデルです。

──なるほど、民泊の代行会社がユーザー獲得のために「レストランをコンシェルジュしますよ」と付加価値を謡い、その業務を実際に行われているのがJPNEAZYなのですね。

金田氏:民泊代行会社にとっては、管理する民泊の稼働率アップと利用者のレビューのポイント向上につながる施策として、JPNEAZYの価値を認めていただいています。旅行者に「レストラン予約ができる」と訴求することで、同じ料金体系の競合施設の中から、自分たちの施設が選ばれる確率が高まるからです。

 旅行者から要望が多いのは、カウンターだけの店とか、一見で飛び込みづらいようなお店で、確かに、その土地にあったレストランに出会えて、現地の人と交流できたら、旅行者にとっての体験はさらによいものになります。「個人旅行の中に、団体旅行のようなサービスを」をコンセプトに、サービスを拡充していきたいです。

──民泊を利用しない人にはあまりピンと来ないと思うのですが、民泊の代行会社というのは、そんなにたくさんあるのでしょうか?

金田氏:現在約200社ほどあるかと思います。民泊、つまり単に自宅を貸し出すといっても、鍵の受け渡しや掃除、予約者とのやりとりなど、それなりの手間はかかりますし、英語も必須となります。こうした手間を引き受けてくれる代行会社は、民泊のビジネスにおいてはメジャーな存在ですね。

──今、民泊市場はどの程度の規模なのでしょうか?

金田氏:インバウンド旅行者の約20%~30%が民泊利用者といわれますから、2016年に約2400万人のインバウンド旅行者があったということから推計して、約500万~600万人が民泊利用者ということになります。

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