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- 2016/12/16 掲載
なぜアップルは「自前」にこだわるのか? グーグルとまるで異なるビジネスモデル
2017年、アップルのネクスト戦略【前編】
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2017年完成予定の「Apple Campus2」は維持できるのか?
Apple Watchにスティーブ・ジョブズが関与していたかどうかは定かではないが、確実に関与した最後の作品は、アップルの未来型の新社屋「Apple Campus2」である。太陽エネルギーから自然との調和という壮大な事業構想から設計され、ジョブズ自身がクパチーノ市でプレゼンテーションを行った一大プロジェクトである。しかし、2016年内の完成予定はずれこみ2017年となってしまった……。さらにiPhoneからバトンタッチされるべく「金のなる木」の製品はまだ成長していない。※この4か月後にジョブズは亡くなることとなった
現在のiPhoneシリーズの売上成果のみで、この広大なCampus2を維持していけるとはとても思えない。海外大手新聞紙によると、アップルによる自動運転の自動車事業「Taitan」は、自動車本体をイノベーションする自動車メーカーではなく、サービス事業へと事業形態をシフトしたようだ。
新規参入の自動車業界でさえ「自前」にこだわるアップル
テスラも初期のロードスターのシャーシは、ロータス・エリーゼの借り物であった。また、EV車用のバッテリーも現在ではパナソニックの独占供給であり、パナソニックも50億ドルクラスのリチウムイオン専門工場をテスラと共同で作るという体制でなしえている。
このように自動車産業はサードパーティーでさえも、新たな投資を必要とする事業なのだ。テスラ初の普及モデル「Model 3(35,000ドル、約385万円)」では約40万台の有償予約。2020年までに100万台という流通が目標である。いくらアップルと言えども、初めての自動車プロジェクトでは尻込みするサプライヤーが多かったのではないだろうか? 台湾の鴻海でさえも自動車まではさすがに作る経験値を持っていなかった。
むしろ、アップルにとって、自動車産業は今、すぐに参入すべきタイミングではなかったのかもしれない。もっと自動運転のクルマが普及し、EV自動運転のサプライヤーが整備され、投資環境が成立してからでも良いのだ。しかし、今日のアップルの競合は、かつてのIBMやマイクロソフトではなくグーグルとなったので、参入時期の遅さは負け戦になる可能性さえある。もちろん、既存の自動車産業もここにきて自動運転やAI化、ロボット化とIT投資に積極的だ。
グーグルの時価総額は約55兆円、アップルと一位二位を争う企業に成長した。世界ナンバーワンの自動車メーカーとなったトヨタでさえ、時価総額は約21兆円とアップルの35%、グーグルの38%でしかない。アマゾンの約37兆円、Facebookの約36兆円にも及ばない。いずれ自動運転でのEVカー市場では、IT業界、特にアップルから巨額の自動車メーカー買収というのも、未来においてはありえることだ。むしろIT産業のプレイヤーは、いずれもプラットフォームで制覇したいので、アップル以外は自前で創ることにはこだわらない。アップルだけが自前でなんでもやりたがるからだ。
ではなぜ、アップルは自前にこだわるのか? それはビジネスモデルの違いだ。
【次ページ】 グーグルとアップルのビジネスモデルの違い
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