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全国1,300店舗以上のドラッグストア・薬局を展開するココカラファイン。同社は管理業務の効率化と付加価値業務時間の創造を実現するため、新たなプラットフォームに店舗システム業務を集約する「店舗改革」を実施した。販社統合により複雑化し、現場に大きな混乱をもたらしていたシステムを、いかにしてまとめ上げたのだろうか。尾池 泰之氏と黒木 克明氏が明かした。
統合会社の悩み。店舗システム刷新に至るまで
ココカラファインはドラッグストアをメイン事業として展開し、大小含めて6社程の会社を併せてできたヘルスケア企業である。グループ会社であるココカラファインヘルスケアはドラッグストア事業と調剤事業の企業で、街の健康情報拠点として、ドラッグストア・薬局を約1,300店舗強ほど全国展開する。ファインケアは介護事業を展開する。売上高はおよそ3733億円(連結2016年3月期)に上る。
現在、北海道から沖縄まで全国で1,311店舗ほどあり、うち薬剤取扱いは232店舗。都市型、商店街型、住宅地型、郊外型と、さまざまな店舗タイプがある。大阪や名古屋、東京と、大都市圏に多くの店舗を展開しているのが大きな特長となる。2016年6月に開催された「AWS Summit Tokyo 2016」に登壇した、ココカラファイン上席執行役員 経営戦略本部 企業品質部長 兼 IT開発チームマネジャー 尾池 泰之氏によると、これが大きな強みでもあり、若干ながら弱みでもあるというのだ。
セイジョー、セガミメディクス、ジップドラッグ、ライフォート、スズラン薬局、メディカルインデックスの6社あった販社を統合したため、店舗システムの統合は喫緊の課題となった。当初はそれぞれの営業会社が持っている店舗システム、やり方を担保しつつ統一しようとした結果、店舗にはPOS、発注システム、棚札システム、決算端末(クレジット、電子マネー)など、非常にたくさんのシステムが並行して走っている状態であったため、非常に難航したという。
レジや決算端末、パソコンなど、さまざまなデバイスで作業を行う必要があるため、作業導線がバラバラになってしまうのだ。本来、人的リソースを投入したいのは顧客対応であるため、それ以外の問題を解決する必要性が出てきた。
販社統合して2年間は付け焼刃でオペレーションを統一し、店舗のシステムを無理やり合わせていたため、現場には大きな混乱があったという。また会社運営上も非常に大きなフォーラムがあり、業績を2年間、大きく落としていた。会社もようやく落ち着いたことから、統合後のフェイズに移ることになり、いよいよ問題を解消することになった。
実際、さまざまな決算手段、多様化するサービス、販促など、店舗業務はどんどん複雑になってきており、システムは増える一方だ。本来の店舗の業務を効率化したいが、そのためにはシステムの集約が必要不可欠となる。システムも業務もシンプルにより便利にするために、新たな店舗プラットフォームの必要性が出てきた。
「現在、散らばっているものをひとつのデバイスに集約してしまうのが、今回の店舗プラットフォームの刷新というわけです」と、尾池氏はプロジェクトがスタートした当時を振り返った。
「今すぐ欲しい」「コストを最小限に」の要求に応えられる選択肢は1つだった
新たな店舗プラットフォームに対して経営のGOサインは出たが、混乱を解消するために今すぐにでも欲しいという結論だった。ベンダー選定からリリースまで約1年(実質的には1年より短い期間)。また店舗システムは実際に使われて初めて使用量(データ)がわかるし、使われてから扱うデータ量が大きく変わってくる。今後どれくらいのデータ量が増えるかは未知数であったという。それにもかかわらず、コストは最小限に抑えたいという思いがあった。その結果、選択肢はAWSしかないという結論に至ったという。
不安材料としては、店舗プラットフォームというシビアなシステムをAWSで実現できるのかということがあった。いわゆる基幹システムのAWS構築は未経験であったからだ。
次いで尾池氏はココカラファインとAWSとの関わりを説明した。2013年6社合弁による基幹システム・POS統合があり、プリペイドカード機能付会員カード発行、電子マネー導入などがあった。2014年に初めて経理システムのリプレイス、初めてAWSによるワークフローシステムのリプレイスを行い、その後もAWSによるオンラインショップなどのリプレイスが行われた。
現在、店舗プラットフォームの構築にあたっており、同時進行で人事・給与システムのリプレイスを行っている最中だという。そして先日、顧客向けコミュニケーションプラットフォーム構築をリリースしたばかりだ。もちろんいずれもAWSで構築している。
実は、最初のAWSは簡単なサーバーのリプレイスからだったという。社内システムのサーバー保守期間満了に伴い、リプレイスを検討する中で、パッケージ元指定の機器がオーバースペックであったことから、クラウドの検討を開始。パッケージ元にクラウド構築を含む見積もりを取得したところ、オンプレミスとあまり変わらない価格と柔軟性の低いサービスメニューであったという。その結果、自社で初めてAWSの見積もりを取得し、構築はパートナーベンダーを採用することで、アプリとクラウドのベンダー分担体制とすることを決断したそうだ。
インフラ初期費用感だが、オンプレミス構成を1としたとき、提供元クラウドは0.8、AWSは0.5と、AWSであれば初期投資は低く抑えられるとのこと。5年間利用するとトータルの差異は大きく出ないが、さまざまな経営判断がサーバーのライフサイクルで変わるのではなく、経営の意思決定があってシステムが動く形にしたいという思いがあり、不安もあったがAWSの採用に至ったのだという。
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