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- 2016/11/24 掲載
売上2500億超のアズビル、経費削減“1億円”を見込む「AWSでのSAP導入法」を明かす
SAPの利用ユーザーは約1万名、42,000SAPS
2016年6月に開催された「AWS Summit Tokyo 2016」に登壇した松原氏は、AWS上でSAPの本番環境、稼働を決定するまでの背景と、稼働後、約1年経過しての結果報告を行った。松原氏は業務システム部に所属しているが、同部はアズビルグループ全体のIT整備だけでなく、ITを用いた業務全体の最適化、およびセキュリティ確保を担っている。その中でも基幹システムの運用・管理、および業務システム部の人事管理・予算管理を行う「運用管理グループ」に所属しており、グループマネージャという肩書を持つ。
同社がそもそも基幹システムとしてSAPを導入した目的は、以下の3つであるという。
2. 事業変化への柔軟な対応力強化
3. IFRS対応
導入までの背景だが、同社の会計は2005年よりSAP R3のFI、COを利用していた。また社内では、
・ビルシステム=AS400=Windowsサーバ
・工場生産=NEC ACOS
といった3つの基幹システムを利用。部分最適化され安定性は高いものの、柔軟性に乏しい状況だった。加えて、これまでクラウドは利用したことがなかった。
SAPのシステム構成としては、利用ユーザーが約10,000名(同時1,000名)で42,000SAPSあり、それなりに大きなものとなっている。SAPのモジュールとしては、ERP(SD、MM、PP、PS、FI、CO)などが入っているかたちだ。
サイジング、コスト面、安心感の3つがきっかけでクラウドを検討
松原氏はクラウドを検討するきっかけとして、次の3つを例に挙げた。2. コスト面
3. 安心感
まずサイジングだが、SAPのサイジングが困難だったことに加え、導入資産の利用期間の縛り、H/Wリソース追加の制約があった。
次にコスト面だが、BCP(Business Continuity Plan)対応。特に今回はグローバルの基幹システムということもあり、異なる場所でのバックアップサイトが必須だった。たとえば、3.11(東日本大震災)や熊本地震のようなことがあったからと言って、日本以外、たとえばヨーロッパで売り上げがあげられないというわけにはいかない。
最後の安心感だが、クラウド利用の実際の運用事例が増えてきたことで、本番環境で動かしても大丈夫であるとの判断ができた。
一般にクラウドは、下記のようなシステムに最適とされている。
2. リソース利用量が季節的要因で大きく変わるシステム
3. 高いセキュリティを必要としない
4. インフラ導入の予算がない
したがって、クラウド適性の観点からはF1システムのような基幹システムは不可能ではないが、不向きであると判断される。インフラ担当者、とくに製造業の方は非常にまじめな方が多く、どうしても保守的になってしまい、クラウドは否定的であったという。
しかし、昨今のクラウドは、下記のような状況になってきた。
2. バーチャルプライベートに関しては、セキュリティは確保できる。
3. 物理セキュリティはクラウドの方が安全である。
4. クラウドファースト(クラウドにできない明確な理由がなければ、クラウドで稼働させる)という企業も増え始めている。
実際、SalesForceのような営業状況や、カンパニー(ワークス)のような人事情報もクラウドで稼働させることが増えてきている。クラウドでも、セキュリティは十分であるという世の中になってきた。
しかしながら、インフラ担当者には不安があるため、クラウドとオンプレミスの比較を行うことになったという。
【次ページ】 経費はクラウド(AWS)とオンプレミスでどう変わるのか?
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